TBS 緩衝液: 組成、作り方、特徴など

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このページの最終更新日: 2021/10/25

  1. Tris とは
    • Tris の特徴
  2. TBS 緩衝液とは
    • TBS 緩衝液の組成

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Tris とは

Tris の正式名称は Tris (hydroxymethyl) aminomethane である。一見複雑な名前に思えるが、

  • Tris は tri に由来し、置換基が 3 をあることを示す接頭辞である。bis-アクリルアミドなどと同じである。
  • つまり、ヒドロキシメチル -CH2OH という基が 3 個あることを意味する。
  • ヒドロキシメチル -CH2OH 基は、アミノメタン aminomethane に結合している。つまりアミノ基 -NH2 のついたメタン CH4 である。

であることから、図 のような構造 (Public domain) であることがわかる。

トリスの構造

他にも構造の図があったので、小さく載せておく。クリックで大きくなる。

トリスの構造

Tris は、以下のように 水分子 と反応して ヒドロキシイオン hydroxide ion OH- を生成する。この解離反応の pKb が約 8 なので、Tris 溶液は弱アルカリ域の緩衝液として働くわけである。

Tris の説明に関係するポイントは以下の通りである。難しい部分はリンク先を参照のこと。

  • Tris は水素イオンを受け取って hydroxide ion を放出するので、アレニウスの定義でもブレンステッド・ローリーの定義でも塩基である。→ 酸・塩基の定義
  • Tris の pKb は約 8 であり、この付近の pH で最大の緩衝能を発揮する。→ 解離定数

Tris の特徴

Tris には以下のような特徴があり、Tris ベースの緩衝液を使うときは、これらを考慮することが重要である。

アミンとしての毒性がある

アンモニア NH3 の水素原子を炭化水素基 R で置換したものを総称してアミン amine [eimiːn] という。1, 2, 3 個の水素が置換されたものを、それぞれ第 1, 2, 3 級アミンと呼ぶ。上記の命名とは違った解釈であるが、Tris は第 1 級アミンでもある。

一般に、1 級アミンはタンパク質と結合する性質がある。したがって、Tris 緩衝液は酵素反応などタンパク質が重要となる反応の緩衝液には向いていない。


安価である

アガロースゲル電気泳動 など、大量に buffer を使うような実験系では、Tris ベースの緩衝液が好まれる。


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TBS 緩衝液とは

TBS とは Tris-buffered saline の略であり、Tris によって緩衝能をもたせた生理食塩水 saline の意味である。

TBS の基本的なアイディアは以下の 2 点である。

  1. Tris によって、生体と同じ程度の pH (弱アルカリ性) を保つ。
  2. NaCl によって、生体と同じ程度の浸透圧を保つ。

ゆえに Tris と NaCl を加えることになるが、Tris 濃度はどの程度の緩衝能が必要とされるかによって違ってくる。つまり、pH の変動が予想される系では Tris 濃度が高くなければならないが、そうでない系では低くてよい。よって様々な組成が許容される。

また、上記のアミンとしての Tris の特性によって、使える実験系が限定されてくる。酵素反応などのデリケートな実験には使わない方がよく、ウエスタンブロット、免疫染色 などによく使われる。


TBS の組成

TBS の組成はラボによって異なるが、以下のようなものが使われている。ウエスタンブロット では、TBS に 0.1% Tween-20 を加えた TBST もよく使われる。


組成 コメント

1 x TBS

  • 20 mM Tris, pH 7.4, 150 mM NaCl.

組成はニッポンジーンのサイトから (2)。

1 x TBS

  • 50 mM Tris, pH 7.6, 150 mM NaCl.

タカラバイオ の組成。錠剤製品。


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References

  1. 田村 (2014). 改訂版 バイオ試薬調製ポケットマニュアル

一般的なバイオ実験に使われる試薬の作り方がまとまっているハンドブック。一冊手元にあると便利。サイズも実験の邪魔にならずお手頃。

2003 年にオリジナル版、2014 年に改訂版が出た。I 部は溶液・試薬データ編、II 部は基本操作編になっており、ピペット操作など実験の基本がイラスト付きで説明されている。研究室に入って 1-2 年目はとくに重宝するが、末永く使うことができるだろう。このページ に見開きサンプルあり 。

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