インスリン応答性のグルコーストランスポーター GLUT4: 構造、機能など

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このページの最終更新日: 2024/12/15

  1. 概要: GLUT 全般
  2. GLUT4 の活性化
  3. GLUT4 の転写制御

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概要: GLUT 全般

一般に、細胞外の方が細胞内よりもグルコース glucose 濃度が高いため、GLUT は濃度勾配に従って細胞内に特異的にグルコースを取り込む (4)。つまり受動的かつ選択的な facilitated passive transport である。

食べたグルコースを腸管から吸収するときには、濃度勾配に逆らった active transport が必要となるため、GLUT ではないトランスポーターが関与する (4)。

イラストレイテッド細胞分子生物学 では、以下の 3 種の細胞で濃度勾配に逆らったグルコースの輸送が必要になるとしている。

  1. Choroid plexus という脳 brain の細胞。
  2. Proximal convoluted tubules of the kidney
  3. 小腸の上皮細胞: ここでは SGLT (sodium-glucose transport proteins) がグルコースを取り込む。

GLUT family には少なくとも 14 のタンパク質が含まれ、うち 11 がグルコースの取り込みに関与する (1)。GLUT 1 から 5 が一般に発現しているアイソフォームである。表は文献 3,4 の内容に基づく。哺乳類のデータと思われる。内容が増えてきたら、それぞれのアイソフォームのページも作成する。

タイプ 発現組織 グルコースとの KM (Ref. 4) 特徴
GLUT1 全ての組織 1 mM

Basal のグルコース取り込みに用いられる。

血中グルコース濃度は 4 - 8 mM なので、常に一定量のグルコースを取り込んでいる。 HIF-1 による発現制御を受けている。

Xenopus 卵で発現させたラット GLUT1 の 2-deoxyglucose に対する Km = 6.9 mM とする報告がある (6)。

GLUT2 肝臓、β 細胞、腎臓 15-20 mM

KMが高い、つまりグルコースとの親和性が低い。血糖値が上昇したときに働くトランスポーター。参考: 解離定数とは

膵臓での血中グルコース量のモニター、余剰グルコースの肝臓への uptake などを行う。

肝臓および腎臓では、糖新生 のために細胞内の方がグルコース濃度が高くなることがある。このとき、GLUT 2 が細胞外へグルコースを放出する。

Xenopus 卵で発現させたヒト GLUT2 の 2-DG に対する Km = 17.1 mM (6)。とする報告がある

GLUT3 全ての組織 1 mM

Basal 状態の取り込み。GLUT 1 とどう使い分けているのか?

Xenopus 卵で発現させたヒト GLUT3 の 2-DG に対する Km = 1.8 mM (6)。

GLUT4 筋肉、脂肪細胞 5 mM

インスリン依存的なグルコースの取り込みを担当する。この表の他の GLUT, つまり 1, 2, 3 および 5 はインスリンに依存しないトランスポーターである (4)。

Xenopus 卵で発現させたヒト GLUT4 の 2-DG に対する Km = 4.6 mM (6)。

GLUT5 小腸、精巣 -

主にフルクトースを透過させる。


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GLUT4 の活性化

GLUT 4 は、通常は細胞内の vesicle に存在する。Vesicle はゴルジ体に結合している。インスリン によってこの細胞内プールから細胞膜へ移行してグルコースを取り込むが (4)、膜移行のあとにさらに活性化されるステップが必要であると考えられている。

GLUT4によるグルコースの取り込み

グルコースを取り込んだ後は、エンドサイトーシスによって細胞内に戻り、リサイクルされる(4)。

> 骨格筋では、収縮によっても活性化する(2I)。

GLUT4 の転写制御

GLUT4 の転写調節には、MEF2, SP1, C/EBP, PPARγ, HIF-1α, SREBP-1c, Klf15, NF1などが関わっている (2I)。

> PPAR gammaによる転写制御 (1)。
  • リガンドと結合した PPARγ1, 2 は GLUT4 の転写を活性化する。
  • PPARγ は MAPK に Ser112 でリン酸化され、その場合はリガンド非結合状態で GLUT4 転写を抑制する。

> 遊離脂肪酸による転写制御 (1)。
  • 遊離脂肪酸は原則としてインスリンシグナルを阻害し、GLUT4 を抑制する。これには IkB が関与する。
  • アラキドン酸はGLUT4の転写を抑制する。
  • 脂肪酸とGLUT4の間の転写因子にはPPAR, hepatic nuclear factor 4, SREBP, nuclear factor Y がある。

> 運動による転写制御 (2I)。
  • トレーニングで骨格筋 GLUT4 の mRNA 量が増える。

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References

  1. Armoni 2007a (Review). Transcriptional regulation of the GLUT4 gene: from PPAR-γ and FOXO1 to FFA and inflammation. TRENDS in Endocrinol Metab 18, 100-107.
  2. Getty-Kaushik et al. 2010a.Mice deficient in phosphofructokinase-M have greatly reduced fat stores. Obesity 18, 434-440.
  3. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.

Berg, Tymoczko, Stryer の編集による生化学の教科書。 巻末の index 以外で約 1000 ページ。

正統派の教科書という感じで、基礎的な知識がややトップダウン的に網羅されている。その反面、個々の現象や分子に対して生理的な意義があまり述べられておらず、構造に偏っていて化学的要素が強い。この点、イラストレイテッド ハーパー・生化学 30版 の方が生物学寄りな印象がある。

英語圏ならば学部教育向けにはややレベルが高い印象。しかし、基本を外さずに専門分野以外のことを 研究レベルで 英語で読みたいという日本人には非常に適しているだろう。輪読とかにも向いているかもしれない。翻訳版はストライヤー生化学として売られている。



  1. Amazon link: 水島 (訳) 2015a. リッピンコット イラストレイテッド細胞分子生物学.
  2. By CNX OpenStax - http://cnx.org/contents/GFy_h8cu@10.53:rZudN6XP@2/Introduction, CC BY 4.0, Link
  3. Burant and Bell, 1992a. Mammalian facilitative glucose transporters: evidence for similar substrate recognition sites in functionally monomeric proteins. Biochemistry 31, 10414–10420.

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