プロモーター

UBC/genetics/exp_promoter

このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: プロモーターとは
  2. 転写の調節

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概要: プロモーターとは

各遺伝子または遺伝子群 (オペロン operon) の一端にあり、転写 transcription を開始するために RNA ポリメラーゼが特異的に結合する DNA 上の領域を プロモーター promoterという (1)。

図 (ref 4) は 原核生物 のラクトースオペロンの模式図である。プロモーターは 3 番にあたり、そこには黄色で示した基本転写因子 (1 番) が結合している。


転写に必要な 基本転写因子群が結合するプロモーター領域 を、とくに コアプロモーター という。遺伝子の転写量は、環境条件に応じて活性化されたり抑制されたりするが、このような調節を担うのがエンハンサー enhancer である。エンハンサーもプロモーターの一部であり、これらの用語の使用にはやや混乱があるように思う。

プロモーターの位置は、mRNA として転写される最初の塩基に +1 という番号をつけ、そこから 5' 上流 (参考: 核酸 nucleic acid) 方向に 10 塩基だったら -10 といった形で、負の数字で表す。Promoter 領域の配列は mRNA として転写されない ことに注意しよう。


プロモーター解析

「プロモーター解析」と言った場合、「プロモーターが存在する 5' 上流域の解析」を意味し、実際には転写量を調節したりするエンハンサー enhancer が興味の中心となる。

ドラフトゲノム配列からプロモーターを抽出する方法: 掲示板 (英語)GitHub のページ


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プロモーター以外の転写調節

転写 transcription は、細胞の状態によってさまざまなレベルで調節されている (1)。

ヒストンの修飾

DNA 結合タンパク質 ヒストン は、正に荷電した tail 領域をもっており、これによって負の電荷をもつ DNA と結合している。アセチル化によって正電荷が弱まると、DNA との結合も弱くなる。そのような領域では、一般に転写が活性化される (5)。

CpG アイランド

DNA のメチル化 による転写調節である。グアニン G の隣にあるシトシン C のメチル化が一般的で、プロモーター領域で多くみられる。このような領域を CpG island という。物理的障害および DNA 脱アセチル化酵素のリクルートにより、一般に転写を抑制する。

Ehnancer

転写量を正に調節する DNA 領域であるが、遺伝子の近くにある promoter とは違い、離れた場所に存在する。DNA が高次構造をとることによって、空間的にプロモーターの近くに来る。

Insulator

Enhancer の転写増大機能をキャンセルするような DNA 領域。

Repressor

DNA 上の silencer に結合し、転写量を負に調節する。


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References

  1. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  2. Danino et al. 2015a (Review). The core promoter: At the heart of gene expression. Biochim Biophys Acta - Gene Regulatory Mechanisms 1849, 1116–1131.
  3. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  4. By T A RAJU - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
  5. Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。

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