GMO の環境への影響

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: GMO の環境への影響
    1. 農薬の使用
    2. 生息地の奪取
    3. Gene flow, superweeds
    4. 非対象種への影響
    5. 生物多様性

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概要: GMO の環境への影響

遺伝子組み換え生物 (GMO; genetically modified organism) とは、バイオテクノロジー技術によって野生型とは異なる遺伝子をもつようになった生物のことである。

このページでは、GMO の環境への影響についてまとめる。GMO に関する他の内容は GMO 穀物のページ を参照のこと。

文献 1 によると、農業システムは以下の 4 通りに分類される。

Conventional

農薬を使った大規模農業 (1)。工業化されていると言っても良い。収益を上げるために単作を推進する 。

Organic

ecological とも呼ばれる (1)。農薬や GMO を使わず、再生可能なリソースを使い、生物多様性を重視する。

Integrated

なるべく農薬の使用量を減らし、organic に近づく努力をする。

Transgenic

GMO を使う。


このうち transgenic は GMO を使っており、その環境への影響は以下の 5 項目に分類されている (1)。文献 1 の論調は、原則として「GMO は環境にも良い」である。もちろん対立する意見もあり、随時追加する予定。

1. 農薬の使用

GMO の多くは weed killer という農薬 (ラウンドアップ のことか?) への耐性遺伝子を組み込まれている。この農薬は極めて効果的なので、これを少量使うだけで、農薬の使用量を全体として大きく減らすことができる (1)。

また、GMO は害虫に対して毒性を発揮する遺伝子 (Bt という。GMO のページ に解説あり) を組み込まれている。したがって殺虫剤の量を減らすことができる。

結果として、GMO の使用によって農薬の使用量は 22.3 million kg 減っているという研究もある (1)。

GMO は農薬の量を減らすことによって環境にも良いというのが使用者側の主張であるが、後述する superweed やケロッグ製品への農薬の残留などの問題もあり、現状は単純ではない。


2. 生息地の奪取

人口の増加とともに耕地の面積は拡大の一途を辿っており、それに伴う生息環境の現象は野生生物にとって深刻な問題である。

GMO は乾燥耐性、塩分耐性などを付与されているので、悪い土地でも耕作することができ、野生生物との競合はむしろ少ないと主張している (1)。


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3. Gene flow と Superweeds

GMO は近縁の野生種とハイブリッドを作る。ハイブリッドは農薬や害虫への耐性などを獲得する可能性があり、農薬が効かない superweed になってしまう (1)。これは 1. でみるストラテジーの崩壊につながる。

とくに oilseed rape という植物でハイブリッド形成が懸念されている (1)。しかしハイブリッド形成は古典的な選抜育種でも起こるので、これは GMO に限った問題ではなく、農業ストラテジーとしての問題とも言える (1)。

近縁種の近くに GMO を植えない というシンプルな方針は有効である (1)。


4. 非対象種への影響

Bt toxin の対象種は狭いということになっているが、「非対象種」とされている昆虫にも有害であるという報告がある。


5. 生物多様性

Organic の方が conventional よりも多様性が高いというデータがある (1)。農薬の使用量が少ないためと思われる。

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References

  1. Prusak et al. 2014a. Is GMO "sustainable"? A review of the environmental risks of GM plants in comparison with conventional and organic crops. Modern Management Review 21, 187-200.

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