RNA の品質評価:
電気泳動、分解度、RIN 番号など

UBC/experiments/rna/rna_electrophoresis

このページの最終更新日: 2024/10/22

  1. 概要: RNA の品質評価
  2. RNA の電気泳動
  3. RNA integrity と RIN 値

広告

概要: RNA の品質評価

「RNA の質」とは、コンタミや RNA の分解などを考慮した総合的な概念である。以下のような要因が RNA の質に影響し、実験の結果に悪影響を及ぼす可能性がある。

  • タンパク質 のコンタミ。PCR や酵素反応を阻害する可能性がある。
  • ゲノム DNA のコンタミ。RNA が正しく定量されない。
  • RNA の分解。RNA を正しく定量できないほか、逆転写などの反応も効率が下がる。

このような悪影響を防ぐため、次世代シークエンシング (NGS, next generation sequencing)、リアルタイム PCRマイクロアレイ などの定量実験を行う際には、分解の程度をきちんと評価しておく必要がある。

NGS については、分家サイト Ultrabem3 に多くのページがある。以下のサイト内検索からどうぞ。



品質を保つために、RNA の抽出は清浄な環境下で氷上で行う。試薬には RNAse inhibitor を入れ、保存も -80°C などの色々と気を遣うポイントが存在する。RNA の安定性に関して、ThermoFisher の興味深い実験がある (RNA を常温で放置してみた)。25°C で放置すると、4 時間までは RIN 値やリアルタイム PCR の Ct 値にはほとんど影響がない。70°C では RNA の品質は 30 分ほどで顕著に低下し、4 時間後には RIN = 1.7 とかなり断片化が進む。ただし、短い遺伝子のリアルタイム PCR ではそれほど影響はない。

RNA の電気泳動

かつては変性アガロースゲルを用いた電気泳動で rRNA のバンドを確認するのが常套手段であり、28S rRNA と 18S rRNA の量比が RNA の品質評価に使われていた。しかし、ゲル写真の定量性の問題があり、実際にこの量比が RNA 全体の分解度をあまり反映しないことなどが報告され、現在では RIN 値 がよく使われている。

それでも、RNA の電気泳動は重要な技術で、現在でも厳密な定量を必要としない場面ではしばしば用いられる。ここでは、結果の見方とプロトコールをまとめる。


電気泳動結果の見方

真核生物の RNA を電気泳動すると、一般には以下のような泳動パターンが得られる。図は 文献 3 からのもので、ラット の農家ら抽出した RNA を 1.5 µg 泳動している。

見るポイントは以下の通り。

  • 28S および 18S rRNA のバンドがはっきり見えるか
  • 高分子のバンド (ゲノム DNA のコンタミ) がないかどうか
  • 低分子のバンド (RNA の分解産物など) がないかどうか

2 本見えるメジャーなバンドは、真核生物のリボソームを構成する 28S rRNA (約 3000 bp のところに見える) および 18S rRNA (約 1600 bp のところ) である。これらのバンドがはっきりと見えることが、RNA が分解されていないことの最低条件である。

多くの実験では mRNA に興味があると思われるが、mRNA は量が少ないので、電気泳動で明瞭なバンドとして見ることができない。そのため、28S および 18S rRNA が分解されていなければ、mRNA もまあ分解されずに残っているだろうという論理でこの結果を解釈する。

Representative image of electrophoresis of total RNA in agarose gel. Total RNA extracted from brain of controls (1, 2, 3) and rats subjected to paradoxical sleep deprivation without (4, 5, 6) or with sleep recovery (7, 8, 9) was fractioned in agarose gel 1%. Approximately 1.5 μg of RNA was loaded for each sample. Intact 28 S and 18 S rRNA were observed without higher molecular weight molecules.


RNA 電気泳動プロトコール

追加予定。


RNA integrity と RIN 値

現在は RNA integrity number (RIN) という指標が広く用いられている (2)。アジレントの 2100 バイオアナライザーがよく使われる。

RIN 値は、RNA をキャピラリー電気泳動に供し、各種 RNA の相対量から特定のアルゴリズムを用いて計算される値である。10 点満点の数値で示され、10 がもっとも高品質 (分解されていない) RNA とされる。

図 (ref. 1) は、典型的な RNA のキャピラリー電気泳動パターンを示したものである。




広告

References

  1. By Fcwalker - Own work, CC BY-SA 4.0, Link
  2. Imbeaud et al. 2005a. Towards standardization of RNA quality assessment using user-independent classifiers of microcapillary electrophoresis traces. Nucleic Acids Res. 30; e56.
  3. Lee et al. 2009a. Validation of commonly used reference genes for sleep-related gene expression studies. BMC Mol Biol 10, 45.

コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。