タンパク質発現系の概要
UBC/experiments/protein/recombinant_overview
このページの最終更新日: 2024/07/26関連ページ
- ベクター関連の用語集: タグの一覧など
- この実験を行うのに必要な手続き
- Plasmid のページに、ベクターの一覧あり。
広告
概要: タンパク質発現系とは
まずは、発現系を選択する必要がある。
大腸菌 |
大量培養が可能で、増殖も速いことがメリット。ただし、真核生物と系統的に遠いので、タンパク質に糖鎖修飾がつなかいなどの問題点も。 |
酵母 |
真核生物なので、真核生物のタンパク質は機能をもって発現させやすい。ただし、量や増殖速度の面では大腸菌に及ばない。 |
昆虫細胞 |
|
哺乳類細胞 |
|
in vitro |
大腸菌発現系のトラブルシューティング
大腸菌発現系でよく用いられる pET システムの文献 (1) より。pET システムの詳細は IPTG による発現誘導 のページにまとめた。大腸菌発現だけでなく、他の発現系に適用できる項目も含んでいる。
誘導前に異種タンパク質が発現してしまう
一般に、異種タンパク質を発現することは大腸菌によってストレスである。異種タンパク質自体が毒性をもっていることもあり、発現誘導前の異種タンパク質発現は、極力低く抑えるべきである。
これには、以下のような方法がある (1)。
![pETシステム](../../images_public/genetics/pET_system.png)
- 図 (Public domain) のように、pET プラスミドにも lacI 遺伝子と lac operator を追加する。多くの pET ベクターはこの構造になっている。
- pET プラスミドと和合性がある (大腸菌内で共存できる) pLysS または pLysE というプラスミドに、T7 RNA ポリメラーゼを阻害するリゾリームの遺伝子を入れ、これで大腸菌を形質転換する。おそらく、IPTG 誘導がかかったときの T7 RNA ポリメラーゼの発現は大量なので、タンパク質収量にはあまり影響せず、誘導前に少量転写されてしまう T7 RNA ポリメラーゼを阻害することのメリットが大きいと考えられる。
- lac プロモーターは、培地中の グルコース 不足で活性化する。これを防ぐために L8-UV5 という変異の入った lac プロモーターが使われているが、培地に終濃度 0.5 - 1% のグルコースを添加することで、さらにプロモーター活性を下げることができる。
タンパク質のフォールディング
発現させたタンパク質は、一般に正しい構造にフォールディングされなければ機能しない。しかし、とくに大量に発現させた場合、フォールディングがうまく行われないことがある。適切に折りたたまれていないタンパクは不溶化することが多い。
タンパク質のフォールディングについて、検討できるポイントは以下の通り。
- 培養温度を下げる。一般に、低温の方が大腸菌へのストレスは下がる。
- ペリプラズム画分で発現させる。
- 分子シャペロン と共発現させる。
広告
References
東端 2013a (Review). 大腸菌を宿主とした異種タンパク質高発現のイロハ. 生物工学 91, 96-100.
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。