生体膜の概要
- 概要: 生体膜とは
- 生体膜の構成成分 (脂質)
- リン脂質 Phospholipid
- Glycolipid
- Cholesterol
- 古細菌の細胞膜
- ラフト
関連ページ
- 基底膜とは → 細胞結合と ECM の概要 へ。
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概要: 生体膜とは
生体膜 biological membrane は細胞と外界を隔てる
- 膜はシート状の構造で、内側と外側を隔てている。厚さは 6 - 10 nm である。
- 膜は主に脂質 lipids とタンパク質 proteins から成り、その重量比は 1 : 4 から 4 : 1 である。糖質 carbohydrates は量的に少ないが、脂質およびタンパク質に結合する形で生体膜中に存在する。
- 膜を構成する脂質には、疎水性および親水性の部位がある。詳細はページ下方の「生体膜の構成成分」を参照。
- ポンプ、チャネル、受容体などのタンパク質が生体膜の機能を担っている。脂質膜に埋め込まれていることが、これらのタンパク質の機能発現に重要である。
- 膜でみられる結合は、非共有結合 noncovalent bond である。
- 膜は非対称である。
- 膜は 2 次元の液体である。脂質やタンパク質は、特定の相互作用で固定されていない限り、膜の中を拡散する。
- ほとんどの細胞膜は分極している。多くの場合、細胞内が負電荷で電位差は -60 mV 程度である。
膜タンパク質
生体膜に埋め込まれ、膜を超えた物質の輸送を行うタンパク質を総称してトランスポーター transporter という。これは transport protein と同義である。詳細はリンク先を参照のこと。
多くの場合、タンパク質の膜貫通ドメインは疎水性アミノ酸を多く含む α helix でできているが、porin など β sheet である場合もある (1)。膜の厚さ 6-10 nm のうち疎水性の高い部分は 3 nm 程度で、これは
膜の流動性
細胞膜は rigid および fluid state をとり、温度 Tm で相が変わる。高温で fluid、低温で solid。不飽和脂肪酸は二重結合のため折れ曲がった形をしており、脂質同士の相互作用を弱め、fluid state をとりやすくする (1)。つまり Tm を下げる。哺乳類よりも低温で暮らしている魚類などが、高度不飽和脂肪酸 DHA などを多く含むのは、低温下でも膜の流動性を保つためである。
また、コレステロール 含量が高いほど膜の流動性が上がる (1)。コレステロールが物理的にリン脂質と異なる形状をもつため。さらに、コレステロールは特定のリン脂質と結合する性質があり、
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生体膜の構成成分
生体膜の基本構造は
- リン脂質
- 糖脂質
- コレステロール
リン脂質 Phospholipid
リン脂質 phospholipid は、全ての生体膜の中心的な構成要素である。量的にも、糖脂質およびグリセロールよりも多い (3)。
リン脂質は、脂肪酸 + backbone + リン酸 + アルコールから成る。以下の表はリン脂質の一覧である。
名称 | Backbone | アルコール | 特徴 |
---|---|---|---|
Phosphatidate | Glycerol | なし |
グリセロールの C1, C2 位に脂肪酸がエステル結合し、C3 位にリン酸がエステル結合したもっとも単純な形のリン脂質。 これ自身の生体膜における含量は低いが、他のリン脂質合成の重要な出発点である。 |
ホスファチジルセリン Phosphatidylserine |
Glycerol | Ser | 脂質二重膜の内側 inner leaflet に含まれる (3)。アポトーシスの過程で、酵素作用によって outer leaflet に移動し、これがファゴソームに認識されるシグナルとなる。 |
ホスファチジルコリン |
Glycerol | Choline | 脂質二重膜の外側 outer leaflet に含まれる (3)。 |
ホスファチジルエタノールアミン |
Glycerol | Ethanol-amine | 脂質二重膜の内側 inner leaflet に含まれる (3)。 |
ホスファチジルイノシトール |
Glycerol | Inositol | 脂質二重膜の内側 inner leaflet に含まれる (3)。 |
Diphosphatydyl-Glycerol (cardiolipin) | Glycerol | Glycerol | |
スフィンゴミエリン Sphingomyelin |
Sphingosine | Phosphoryl-choline |
スフィンゴシンには、グリセロールと異なり 1 分子の脂肪酸しか結合できない。アミド結合。 脂質二重膜の外側 outer leaflet に含まれる (3)。 |
糖脂質 Glycolipid
糖を含む脂質であり、動物が含む糖脂質は
脂質と糖は直接結合しているわけではなく、スフィンゴシンを介して結合している。Cerebroside, ganglioside など。糖鎖は常に細胞外の方向を向いている。
コレステロール Cholesterol
コレステロール は、分子内の OH 基に極性があり、かつ炭化水素鎖部分の極性は低いという
生体膜では、コレステロールは右の図 (4) の薄黄色の部分で示されるように、リン脂質と平行に、なかば埋もれるようにして膜の中に含まれている。コレステロールの大きさは約 1.5 nm ほどであり、これがややリン脂質よりも小さいためにこのような配置になる。もちろん、コレステロールの極性もこの配置に重要である。
古細菌の細胞膜
真核生物と原核生物の細胞膜はよく似ているが、古細菌 Archaea の膜は以下の点で大きく異なっている (1)。
- グリセロール と炭化水素鎖が ether 結合している。真核および原核生物のエステル結合に比べて加水分解されにくい。
- 脂肪酸の疎水性部分は飽和しており、多くの分岐がある。酸化されにくい。
- グリセロールの立体配置が異なっている。
ラフト: Lipid raft
細胞膜には、
図 (ref 6)
- ラフト以外の膜部分
- ラフト
- ラフトに局在する膜貫通タンパク質
- ラフト以外の部分にある膜貫通タンパク質
- 膜貫通タンパク質が糖鎖修飾されている
- GPI-anchored protein
- コレステロール
- 糖脂質
ラフトおよびカベオラには、以下のような共通する特徴および相違点がある。なお、カベオラの英語での発音は「ケイヴィオリー」のような感じで、日本語とはかなり違うので注意。
- ラフト、カベオラはともに コレステロール、糖脂質、スフィンゴミエリンを多く含む (5)。
- 両者ともは低濃度の Triton X-100 に不溶性で、ショ糖密度勾配遠心を行なうと低密度の画分に回収される (5)。
シグナル伝達および脂質輸送 に関わる細胞膜上の重要な領域である (5)。
カベオラ
すなわち、カベオリンはごく浅い窪みや平坦な部分にも認められ、深さによらずカベオリンが存在する部分をカベオラと呼ぶ (5)。カベオラは安定な構造であるのに対し、ラフトは生成と崩壊を繰り返すダイナミックな構造である。
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References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
- By derivative work: Dhatfield (talk)Cell_membrane_detailed_diagram_3.svg: *derivative work: Dhatfield (talk)Cell_membrane_detailed_diagram.svg: LadyofHats Mariana Ruiz - Cell_membrane_detailed_diagram_3.svg, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4228810
- Amazon link: 水島 (訳) 2015a. イラストレイテッド細胞分子生物学 (リッピンコットシリーズ).
- By real name: Artur Jan Fijałkowskipl.wiki: WarXcommons: WarXmail: [1]jabber: WarX@jabber.orgirc: [2]consultations: Masur - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link. 改変して一部を使用。
向後、藤本. 2001a. カベオリンと脂質. 蛋白質 核酸 酵素 46, 789-797.- By real name: Artur Jan Fijałkowskipl.wiki: WarXcommons: WarXmail: [1]jabber: WarX@jabber.orgirc: [2]consultations: Masur - Own work, Public Domain, Link
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