リポタンパク質: 脂質輸送に関わる脂質・タンパク質複合体
UBC/protein_gene/l/lipoprotein
このページの最終更新日: 2024/12/15広告
概要: リポタンパク質とは
リポタンパク質 lipoprotein とは 脂質 (lipid) と タンパク質 (protein) の複合体 で、一般には 血液 を介して脂質の輸送を行う分子である。
動脈硬化のリスク因子として有名な悪玉コレステロールは、LDL というリポタンパク質に含まれるコレステロール cholesterol のことである。
下の図 (5) は、もっとも直径が大きいリポタンパク質であるキロミクロン chylomicron の構造の模式図である。脂質は疎水性であるため、血液との直接のコンタクトを避けるように、タンパク質およびリン脂質に囲われている。
リポタンパク質のタンパク質部分を、
広告
リポタンパク質の分類 (哺乳類)
哺乳類 のリポタンパク質は、密度の低い方から
- キロミクロン chylomicron, CM
- 超低比重リポタンパク質 very low density lipoprotein, VLDL
- 中間比重リポタンパク質 intermediate-density lipoprotein, IDL
- 低比重リポタンパク質 low densigy lipoprotein, LDL
- 高比重リポタンパク質 high density lipoprotein, HDL
に分けられている。それぞれの特徴は以下の表の通りである (1)。
組成は TG, トリアシルグリセロール; CE, コレステリルエステル; C, 遊離コレステロール; PL, リン脂質; P, タンパク質である。
TG や CE は比重が 1.0 より小さい (水よりも軽い)。そのため、これらを多く含んでいるリポタンパク質ほど、全体の比重も小さいことになる。
種類 | 密度 (g/ml) | 直径 (nm) | Apolipoprotein | 機能 | 組成 | ||||
TG | CE | C | PL | P | |||||
CM | < 0.95 | 75-1200 | B48, C, E | Dietary fat transport | 86 | 3 | 1 | 8 | 2 |
VLDL | 0.95-1.006 | 30-80 | B100, C, E | Endogenous fat transport | 52 | 14 | 7 | 18 | 8 |
IDL | 1.006-1.019 | 15-35 | B100, E | LDL precursor | 38 | 30 | 8 | 23 | 11 |
LDL | 1.019-1.063 | 18-25 | B100 | Cholesterol transport | 10 | 38 | 8 | 22 | 21 |
HDL | 1.063-1.21 | 7.5-20 | A | Reverse cholesterol transport | 5 | 14 | 3 | 19 | 33 |
リポタンパク質の性質には種間差がある。たとえば、魚類は脂質を優先的にエネルギー源として使うため、血液中の脂質およびリポタンパク質量が哺乳類よりも高い (2)。血清タンパク質におけるアポリポタンパク質の割合は、ヒトで10%、ニジマスで36%である (2)。また、遊離脂肪酸 NEFA よりもリポタンパク質に含まれる脂質が多いのも特徴である (2)。
リポタンパク質の分離法
超遠心
超遠心 ultracentrifuge は、伝統的なリポタンパク質の分離法である。上の表に示された比重に従って血清成分を分離していくために、比重液の重層 → 超遠心 → 次の比重液の重層 →; 超遠心・・・ を繰り返していく。
日立工機のサイト (4) にとてもわかりやすい説明があったので、図を 1 枚だけ引用させて頂く。詳細は Reference 4 のサイトを参照のこと。
- ここでは、まず VLDL (< 1.006 g/ml なので CM も含まれている ) を単離するため、1.006 g/ml に比重を合わせた比重液 A を血清に重層し、超遠心にかける。
- 写真では、見やすいように脂質部分を染色している。VLDL (+ CM) の画分が上にきて、中央に比重液、下に重い成分がきているのがわかる。この分離パターンが実際に実験をしていない人には想像しにくいと思ったので。写真を転載させて頂いた。
- VLDL 画分を別の容器にとったあとに、比重液の密度を 1.063 g/ml にし、さらに超遠心をする。
- このとき、1.063 g/ml よりも重い比重液 B を加え、比重液 A と混ざったあとに、最終的に密度が 1.063 g/ml になっていなければならないので注意すること。
HPLC
更新予定。
広告
References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
Babin & Vernier 1989a (Review). Plasma lipoprotein in fish. J Lipid Res 30, 467-489.岡崎 2010a (Review). LDL コレステロールとは? その測定法の問題点と解決策は? オレオサイエンス 10, 471-475.- 小型超遠心機による血清リポタンパク質の分離. himac application No. 81. Web.
- By Xvazquez - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。