乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH): アイソフォーム、機能など

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このページの最終更新日: 2024/08/28

  1. 概要: 乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH) とは
  2. 構造およびアイソフォーム
  3. 酵素活性の分布
  4. 逸脱酵素としての LDH: 組織・細胞ダメージの指標

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概要: 乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH) とは

乳酸デヒドロゲナーゼ lactate dehydrogenase (LDH, EC 1.1.1.27) は、ピルビン酸 pyruvate と 乳酸 lactate の転換を触媒する酵素である。

補酵素 coenzyme として NADH を必要とする。

低酸素 hypoxia などの嫌気的条件下でこの反応が活性化する。解糖の結果生じたピルビン酸は、酸素が豊富な条件では TCA 回路へ入ってさらに酸化されるが、低酸素のときはこの反応によって乳酸になる。結果として NAD+ が再生され、解糖系および TCA 回路が動きやすくなる。

この反応は典型的な sequential ordered reaction であり、以下の順に結合が起こる(1)。

  1. LDH と NADH が結合
  2. その複合体とピルビン酸が結合
  3. ピルビン酸が乳酸へ、NADH が NAD+ へ変わる
  4. 乳酸が複合体から解離
  5. NAD+ が酵素から解離

これに対して、順番が適当でよい反応は sequential random reaction といい、クレアチンキナーゼがホスホクレアチンと ADP から ATP を合成する反応などが sequential random reaction にあたる(1)。

上記の sequential reactions では、全ての基質が結合してから、反応生成物 P が解離する。これに対して、全ての基質が結合する前に P の解離が起こる反応を double-displacement reaction (or ping-pong reaction) という。

この反応では、アミノ基の転移反応のように酵素自身が一時的に modify されるのが特徴である。


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構造およびアイソフォーム

哺乳類では H type および M type の 2 種の 35 kDa サブユニット 4 分子から成る(1)。

したがって、完成型の LDH には、H4, H3M1, H2M2, H1M3, M4 という 5 通りのパターンがあることになる。

これらのアイソザイムは、H と M の比率によって以下の特徴をもつ。

  • H4 は、乳酸からピルビン酸への反応を触媒する。
  • M4 は、反対にピルビン酸から乳酸への反応を触媒する。
  • H4 は高濃度のピルビン酸によるアロステリック阻害を受ける。M4 は高濃度のピルビン酸によるアロステリック阻害を受けない。
  • H タイプは心臓に多く、基質親和性が高い。M タイプは筋肉に多く、親和性は低い。

以上の特徴から、LDH の H タイプは好気型、M タイプは嫌気型であると考えることができる。実際に、発生段階では嫌気代謝から好気代謝へ切り替わるので、ラット心臓では発生初期では M タイプが多いが、次第に H タイプへ切り替わることが報告されている(1)。

酵素活性の分布

LDH と、D-乳酸 D-lactate の脱水素酵素である DDH の活性を比較したデータ(2R)。

  • ミトコンドリアを抽出し、dichloroindophenol (DCIP) の還元量を比較している。
  • DDH 活性は、酵素溶液にD-乳酸を加え、DCIP 還元物の低下量から算出している。
  • 肝臓で約 60 µmol DCIP/min/mg protein と高く、脳 brain と心臓 heart では20程度と低い。
  • このため、脳と心臓ではD-乳酸をうまく使えないが、肝臓では有効なエネルギー源にできる。

逸脱酵素としての LDH

LDH は細胞内タンパク質であるが、細胞が障害を受けると血液中に放出される。このため、血中 LDH 量が細胞障害の指標として用いられることがある。

たとえば、心臓に特異的な H4 isozyme が血液中に検出された場合、心臓発作などによって心筋がダメージを受けていることが示唆される(1)。

References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  2. Ling et al. 2012a. D-Lactate altered mitochondrial energy production in rat brain and heart but not liver. Nutr Metab 9, 6.

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このページの目次

1. 概要
2. アイソフォーム
3. 酵素活性
4. 逸脱酵素