乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH): アイソフォーム、機能など
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このページの最終更新日: 2024/12/15- 概要: 乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH) とは
- 構造およびアイソフォーム
- 酵素活性の分布
- 逸脱酵素としての LDH: 組織・細胞ダメージの指標
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概要: 乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH) とは
乳酸デヒドロゲナーゼ lactate dehydrogenase (LDH, EC 1.1.1.27) は、ピルビン酸 pyruvate と 乳酸 lactate の転換を触媒する酵素である。
低酸素 hypoxia などの嫌気的条件下でこの反応が活性化する。解糖の結果生じたピルビン酸は、酸素が豊富な条件では TCA 回路へ入ってさらに酸化されるが、低酸素のときはこの反応によって乳酸になる。結果として NAD+ が再生され、解糖系および TCA 回路が動きやすくなる。
この反応は典型的な sequential ordered reaction であり、以下の順に結合が起こる(1)。
- LDH と NADH が結合
- その複合体とピルビン酸が結合
- ピルビン酸が乳酸へ、NADH が NAD+ へ変わる
- 乳酸が複合体から解離
- NAD+ が酵素から解離
これに対して、順番が適当でよい反応は sequential random reaction といい、クレアチンキナーゼがホスホクレアチンと ADP から ATP を合成する反応などが sequential random reaction にあたる(1)。
上記の sequential reactions では、全ての基質が結合してから、反応生成物 P が解離する。これに対して、全ての基質が結合する前に P の解離が起こる反応を double-displacement reaction (or ping-pong reaction) という。
この反応では、アミノ基の転移反応のように酵素自身が一時的に modify されるのが特徴である。
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構造およびアイソフォーム
哺乳類では H type および M type の 2 種の 35 kDa サブユニット 4 分子から成る(1)。
したがって、完成型の LDH には、H4, H3M1, H2M2, H1M3, M4 という 5 通りのパターンがあることになる。
これらのアイソザイムは、H と M の比率によって以下の特徴をもつ。
- H4 は、乳酸からピルビン酸への反応を触媒する。
- M4 は、反対にピルビン酸から乳酸への反応を触媒する。
- H4 は高濃度のピルビン酸によるアロステリック阻害を受ける。M4 は高濃度のピルビン酸によるアロステリック阻害を受けない。
- H タイプは心臓に多く、基質親和性が高い。M タイプは筋肉に多く、親和性は低い。
以上の特徴から、LDH の H タイプは好気型、M タイプは嫌気型であると考えることができる。実際に、発生段階では嫌気代謝から好気代謝へ切り替わるので、ラット心臓では発生初期では M タイプが多いが、次第に H タイプへ切り替わることが報告されている(1)。
酵素活性の分布
LDH と、D-乳酸 D-lactate の脱水素酵素である DDH の活性を比較したデータ(2R)。
- ミトコンドリアを抽出し、dichloroindophenol (DCIP) の還元量を比較している。
- DDH 活性は、酵素溶液にD-乳酸を加え、DCIP 還元物の低下量から算出している。
- 肝臓で約 60 µmol DCIP/min/mg protein と高く、脳 brain と心臓 heart では20程度と低い。
- このため、脳と心臓ではD-乳酸をうまく使えないが、肝臓では有効なエネルギー源にできる。
逸脱酵素としての LDH
LDH は細胞内タンパク質であるが、細胞が障害を受けると血液中に放出される。このため、血中 LDH 量が細胞障害の指標として用いられることがある。
たとえば、心臓に特異的な H4 isozyme が血液中に検出された場合、心臓発作などによって心筋がダメージを受けていることが示唆される(1)。
References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
Ling et al. 2012a. D-Lactate altered mitochondrial energy production in rat brain and heart but not liver. Nutr Metab 9, 6.
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