ヘモグロビン: ボーア効果について

protein_gene/h/hemoglobin_bohr_effect
2017/11/26 更新

  1. 概要: ボーア効果とは
  2. ボーア効果のメカニズム

広告

概要: ヘモグロビンとは

ボーア効果 Bohr effect とは、ヘモグロビンと酸素の親和性が、ヘモグロビンと二酸化炭素 carbon dioxide またはプロトン H+ の結合によってアロステリックに制御される現象をいう (1)。

Berg Biochemistry では "The regulation of oxygen binding by hydrogen ions and carbon dioxide is called the Bohr effect" と定義されている。Christian Bohr によって 1904 年に報告された。

まずは ヘモグロビン のページでシグモイド型の酸素解離曲線のもつ意義を理解すること。

Wikipedia (7/15/2016) では「血液内の二酸化炭素量の変化による赤血球内のpHの変化によりヘモグロビンの酸素解離曲線が移動すること」と書かれているが、二酸化炭素はヘモグロビンと直接結合して酸素との親和性を変化させるので (1)、この定義は不十分である。


生理的意義

どれも似たようなことであるが、

pH が低い -> 二酸化炭素が多い or 酸素が少ない or 嫌気的代謝が活発 or 乳酸量が多い

ということなので、一般に pH が低い組織は酸素を必要としている と言える。したがって、そのような組織でヘモグロビンと酸素の親和性が低下する (上の図の 赤い点線) ことで、酸素を手放しやすくなり、効率的に酸素を必要とする組織に運搬することができるようになっている。

酸素との親和性の低下は、pH が 7.4 以下 になると起こり始める (1)。


メカニズム

pH による制御

pH による高次構造の変化が原因であり、pH を感知しているのはヒスチジン histidine 残基である (1)。

ヒスチジンのイミダゾール基は pKa が中性に近いという特徴をもっているため、嫌気代謝などによる微妙な pH の変化 (0.2) とかでプロトンと結合することができる。その結果、ヘモグロビン分子内での水素結合 hydrogen bond の状態が変化し、酸素との親和性が低下する (1)。


二酸化炭素による制御 - 1

細胞内で好気代謝によって発生する二酸化炭素 carbon dioxide は、トランスポーターの作用などによって血液中に放出され、

H2O + CO2 → H+ + HCO3-

の反応でプロトン H+ および炭酸水素イオン (hydroben carbonate, bicarbonate) HCO3- を生み出す。この反応は、赤血球に豊富に存在する酵素 enzyme である carbonic anhydrase によって触媒される (1)。結果として発生するプロトンが pH を低下させ、ヘモグロビンと酸素の親和性を低下させる。


二酸化炭素による制御 - 2

二酸化炭素は、ヘモグロビンと直接結合して酸素の解離を促す作用がある (1)。


広告

コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。

References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。

参考図書