細胞周期を制御するタンパク質 サイクリン:
種類、下流のシグナルなど

UBC/protein_gene/c/cyclin

このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: サイクリンとは
  2. サイクリンの下流
    • G1 checkpoint: Rb protein
    • G1 checkpoint: p53
    • G2 checkpoint

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概要: サイクリンとは

サイクリン cyclin とは、細胞周期 cell cycle の制御に関わるタンパク質のファミリーである (2)。D, E, A および B にグループ分けされており、哺乳類では 20 種類以上がみつかっている。

サイクリンの量は、細胞周期に応じて以下の図 (1) のように変化する。合成およびプロテアソームによる分解が主なメカニズムである。

サイクリンの発現

ただし、サイクリン D は イラストレイテッド細胞分子生物学 (Amazon link) では S 期に入ったときに低下するように書かれていて、どちらが正しいのか要確認。

サイクリンの主な機能は cyclin-dependent kinase (CDK) の活性化である (2)。CDK 自体はサイクリンの量な量の変動を示さないが、十分な量のサイクリンが存在すると活性化する。CDK は Ser/Thr kinase である。


Cyclin D

D1, D2, D3 がある。G1/S boudary に存在する restriction point を超えて、細胞周期を進行させるサイクリンである (2)。このポイントを超えると、細胞周期は不可逆的に進む。

CDK4, CDK6 と結合する (2)。G1 期では、サイクリン D は CDK4 と結合している。細胞周期が G1 から S 期に移行する際、この複合体は Rb をリン酸化する。詳細はページ下方の「サイクリンの下流」にまとめた。

サイクリン D は proto-oncogene で、過剰発現がガンの原因となる (3)。

Cyclin E

S 期前期に DNA 合成を開始させる機能をもつサイクリンである (2)。CDK2 と結合する (2)。

Cyclin A

E と同様に S phase cyclin であるが、mitotic cyclin としても分類されている (2)。

サイクリン A2 は S 期において CDK2 と結合し、この複合体が多くの DNA 複製タンパク質を活性化する (4)。

標的は、たとえば cell division cycle 6 (CDC6) および MCM helicase protein complex に含まれる MCM4 である (4)。リン酸化によってこれらのタンパク質は核から細胞質へ移行し、分解される。つまり、DNA が過剰に複製されないようにするためのリン酸化である。

G2 期に入るとサイクリン A2 は CDK2 から分離し、CDK1 と複合体を作る (5)。この複合体は、サイクリン B1 と CDK1 から成る M-phase promoting factor (MPF) を活性化する。MPF が細胞周期を M 期へと進め、サイクリン A2 は分解される。

サイクリン A2 の過剰発現はガンの原因になるが、発現量が低いと細胞は G2 期から進行することができず、最終的には細胞死する。

Cyclin B

Mitotic cyclin で、CDK1 と結合する (2)。G2 期から M 期への移行を制御する。



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サイクリンの下流

G1 チェックポイント: Rb protein

Retinoblastome (Rb) protein は、重要な G1 チェックポイント の制御因子である (図, Public domain)。


細胞周期とチェックポイント

G1 および G0 期では、Rb タンパク質はわずかにリン酸化された状態で、転写因子 E2F およびその bindind partner DP1/2 に結合している (3)。E2F はチミジンキナーゼや DNA polymerase の転写を活性化し、細胞周期を S 期へ進行させるタンパク質である。

MAP kinase シグナル、cyclin D-CDK4/6 複合体などによって Rb protein がさらにリン酸化されると、これは E2F から外れ抑制が解かれる (3)。

細胞周期が S 期へ移行すると、サイクリン D はユビキチン-プロテアソーム系によって分解される。フリーのサイクリン D は PCNA に結合し DNA の複製を阻害するため、サイクリン D の分解は細胞周期の進行に必要である (3)。


G1 チェックポイント: p53

DNA の傷害は p53 をリン酸化し活性化する (3)。p53 は転写因子 CKI を活性化し、p21 が転写される。p21 は 細胞周期 を止め、DNA を修復するための時間を作る。

DNA の傷害が大きい場合には、p53 はアポトーシスを誘導する (3)。p53 の変異は がん の原因となる。ヒトのがんの 50% 以上で p53 に変異が入っている。


チェックポイントキナーゼ Chk

サイクリンとは独立に細胞周期を制御するキナーゼである。詳細は Chk のページ にまとめた。

Chk1 および Chk2 の 2 種類がある。Chk2 はどのステージでも存在するが、DNA のダメージが検出されるまでは不活性化されている。Chk1 は主に S および G1 期で発現する。

活性化された Chk1 および Chk2 は、Mdm2, p53, Brca2, E2Fa, TLK, Pml などの活性を制御する。


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References

  1. By Cyclinexpression_waehrend_Zellzyklus.png: Original uploader was WikiMiMa at de.wikipedia(Original text : de:Benutzer:WikiMiMa)derivative work: T4taylor (talk) - Cyclinexpression_waehrend_Zellzyklus.png, Public Domain, Link
  2. Amazon link: 水島 (訳) 2015a. イラストレイテッド細胞分子生物学 (リッピンコットシリーズ).
  3. Alao 2007a. The regulation of cyclin D1 degradation: Roles in cancer development and the potential for therapeutic invention. Mol Cancer 6, 24.
  4. Yam et al. 2002a. Cyclin A in cell cycle control and cancer. Cell Mol Life Sci, 59, 1317-1326.
  5. Dong et al. 2018a. Cyclin D/CDK4/6 activity controls G1 length in mammalian cells. PLoS ONE, 13, e0185637.
  6. Bartek and Lukas. 2003a. Chk1 and Chk2 kinases in checkpoint control and cancer. Cancer Cell, 3, 421-429.

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