減数分裂 Meiosis: 染色体数が半分になる細胞分裂
- 概要: 減数分裂とは
- もっともシンプルな図
- 少し複雑な図と染色体分配
- 減数分裂の各段階
- 染色体の乗換え Crossing over
- 極体 Polar body について → 卵子形成 のページに記載。精子形成 のページも参考に。
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概要: 減数分裂とは
減数分裂 meiosis [mei
減数分裂は、有糸分裂 mitosis と比較することでより深く理解できるようになる。有糸分裂についての理解が曖昧な場合は、まずはリンク先を参照のこと。
減数分裂の重要なポイントは以下の通り。
- 2 回の連続した分裂により、1n の細胞が 4 個できる。
- 遺伝的多様性を生み出す細胞分裂である。メカニズムは 2 つ。
- 母親・父親由来の 染色体 がランダムに分配される。
- 分裂中に染色体の乗換えが起こる。
もっともシンプルな図
この図 (Public domain) では、簡略化のために 1 対の相同染色体のみを書いており、減数分裂の一番簡単な表現方法と言える。なお、有糸分裂 mitosis も合わせて記載しており、線の上側が有糸分裂、下側が減数分裂である。
- グレーの染色体は母親由来
- 白 + 斜線の染色体は父親由来
と考えて、下の図を見てみよう。
細胞はまず DNA を複製する。続けて細胞分裂が起こると (図の線の上側)、これは娘細胞の染色体数が変わらない有糸分裂である。
減数分裂では、その後染色体が組み換えを起こし、2 つの核に分配される。ちょっと注意しておきたいのは、
これは、1 回目の分裂が reduction division であるとして説明される。たとえば Oxford Dictionary of Biology (1) では "This is the actual reduction division because each of the two nuclei so formed contains only half of the original chromosomes." である。
引き続く分裂で、染色体が親細胞の半分である配偶子 gamate が形成される。
Genetics: A Conceptual Approach (Amazon link) では 1 回目の分裂を meiosis I (reduction division)、2 回目を meiosis II (equational division) と呼んでいる (4)。
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少し複雑な図と染色体分配
もう一つの図 (2) を使って、ランダムな染色体分配による多様性の導入について考えてみよう。
もとの細胞で、赤色が母親由来の染色体、灰色が父親由来の染色体とする。図にあるのは以下の 4 本で、父親 S と母親 S が相同染色体、父親 L と母親 L も相同染色体である。
- 短い灰色 - 父親 S
- 長い灰色 - 父親 L
- 短い赤色 - 母親 S
- 短い赤色 - 母親 L
一部赤と灰色が入れ替わっているが、これは乗換えによるものである (ページ下方参照)。ややこしくなるので、いずれ乗換えのない図に差し替えたい。
大元の細胞はもちろん diploid であり、染色体 S と L にそれぞれ母親および父親由来のものが存在する。DNA 複製のあとは、それぞれ 2 セットずつが存在し、ランダムな複製エラー以外は同じ情報を含むものが H の字のような形で繋がっている。
1 回目の細胞分裂によって、これらの染色体が 2 つの細胞に分配される。Daughter Nuclei の上の方には母親 L と父親 S が、下の方には父親 L と母親 S が分配されている。
ここでのポイントは
したがって、2 回目の細胞分裂後の染色体構成を考えると、以下のようにパターン分けができる。
もとの細胞 (2n) |
Daughter nuclei (n) |
Daughter nuclei II (n) |
この細胞は 2n なので、L と S を 2 個ずつ持っていなければならない。 長い染色体: 母親 L と父親 L 短い染色体: 母親 S と父親 S |
パターン 1
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母親 L と父親 S、ただし 2 セット。 |
パターン 2
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同左 | |
パターン 3
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同左 | |
パターン 2
|
同左 |
Daughter nuclei II の染色体構成は、Daughter nuclei のそれによって一意的に定まる。
わずか 2 個の染色体分配を考えただけで、このように 22 = 4 通りの遺伝的パターンをもつ細胞が作られた。ヒトの染色体は 23 対であるため、223 通りのパターンが考えられることになる。
減数分裂の各段階
減数分裂は、大きく meiosis I と meiosis II に分かれている (4)。下の図 (3) は小さいが、高解像度なので拡大すれば細部まで見えるはず。
Meiosis I | Prophase I |
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Metaphase I |
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Anaphase I |
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Telophase I |
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Interkinesis |
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Meiosis II | Prophase II |
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Metaphase II |
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Anaphase II |
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Telophase II |
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染色体の乗換え Crossing over
染色体の乗換え crossing over とは、減数分裂の途中、相同染色体 homologous chromosome 同士で起こる遺伝情報の部分的な交換のことをいう。重要なポイントは以下の通り。
- 減数分裂の最初 prophase I で起こる。
- 相同染色体 homologous chromosome 同士で遺伝情報を交換するイベント。つまり、母親由来の遺伝情報と、父親由来の遺伝情報がミックスされる。
- のちの phase で起こる染色体の整列・分離に
必須 である (4)。 - 乗換えの結果として、遺伝子の組み合わせが変化する。これを遺伝的組み替えという。乗換えと組み替えを混同しないように注意。
乗換えが起こると、実際の遺伝子交換が終わっても、染色体はしばらく X 字状に交差したままになる。この交差部分を
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References
Hine (2015). A Dictionary of Biology.
信頼できる定義 (情報源) を手元に持っておくことは重要である。自分の勉強にも役に立つが、外部に向けた書類を (レポート、論文、申請書など) 書く場合の効率が一段とアップする。そして、辞書は 日本語では 岩波 生物学辞典 第5版 をお勧めしているが、英語では Oxford の辞書がよい。大学の初級あたりをターゲットにしていて、あまり難しい単語は載っていないが、英語での定義をしっかりと押さえるにはとても便利。価格帯も非常に手頃。 |
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- By Rdbickel - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49599354
- By <a href="//commons.wikimedia.org/wiki/User:Ali_Zifan" class="mw-redirect" title="User:Ali Zifan"><span style="font-family: Hobo Std; font-size: 13.6px; text-shadow:Silver 0.1em 0.1em 0.08em;class=texhtml">Ali Zifan</span></a> - <span class="int-own-work" lang="en">Own work</span>; Used information from Campbell Biology (10th Edition) by: Jane B. Reece & Steven A. Wasserman., CC BY-SA 4.0, Link
- Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
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