細胞周期の概要: 定義、各フェイズの特徴、判定法など

UBC/cell/cell_cycle/cell_cycle_overview
細胞周期に関する上位のページです

このページの最終更新日: 2024/12/15

このページ

  1. 概要: 細胞周期とは
  2. 細胞周期の各段階
    • G1 および G0
    • S 期
    • G2
    • M 期
  3. 細胞周期と細胞の種類
  4. 細胞分裂・周期に関係する実験
    • 細胞分裂の判定
    • 細胞周期の判定

広告

概要: 細胞周期とは

細胞周期 cell cycle とは、細胞がある分裂から次の分裂までの間にたどるステップのことである。英語では次のように定義されている。

  • The sequence of stages that a cell passes through between one cell division and the next (2).
  • They (somatic cells) duplicate their contents and then divide to produce two identical daughter cells. This sequence of duplication is known as the cell cycle (1).

細胞周期の進行は、大きく G1 期、S 期、G2 期および M 期に分けられる (図, Public domain)。いくつかのチェックポイントがあり、細胞の準備ができているかどうかを次の段階に進む前にチェックできる仕組みになっている。

細胞周期とチェックポイント

細胞周期の各段階

G1 期、S 期、G2 期および M 期の大まかな特徴は以下の通り。M 期は Mitosis として記載してある。

Interphase G1 or G0

G は gap という単語からきている。G1 は、S 期における DNA 複製のための準備期間である (1)。

G1 の長さは細胞の種類によって大きく異なる。細胞が DNA 複製の準備をしていないとき、この期間は G0 と呼ばれる。

Restriction point を通過すると、細胞周期は S 期へと進行する。ここから先は不可逆である。

S

S は synthesis of DNA の S であり、S 期は DNA を複製する時期である (1)。

活発に分裂している細胞では、S 期の長さは約 6 時間である (1)。

関連ページ: 染色体DNA ポリメラーゼ

G2

G2 は、核 nucleus が分裂するための準備期間である。およそ 4 時間続き、この間に DNA が確かに複製されたことが確認される。

Mitosis Prophase

この 5 項目の詳細は mitosis のリンク先を参照のこと。Mitosis は約 1 時間のプロセスで 核が分裂する ステップである。

Prophase では染色体が見えるようになる。

Prometaphase

染色体の凝縮、核膜消失、紡錘体形成。

Metaphase

染色体が中心に配列し、sister chromosome が両極へ分離する ための準備をする。

Anaphase

Sister chromosome が両極へ分離する。

Telophase

染色体が両極へ到着し、細胞分裂が起こる。核膜形成、染色体は見えなくなる。

Cytokinesis

M 期は細胞分裂の時期であり、mitosis と cytokinesis を合わせて M 期という。

核の分裂後、細胞が分裂する段階に入るが、ここでは微小管ではなくアクチンフィラメントが働く。


広告

細胞周期と細胞の種類

神経細胞 neuron が分裂するのは発生段階のみであり、その後細胞周期は G0 期から動かない。このような細胞を postmitotic な細胞という (3)。

一方、腸管上皮細胞や血液幹細胞 hematopoietic cells は、常に活発に分裂を続けている (3)。

肝細胞 hepatocytes は、これらの細胞ほど分裂が活発ではないが、必要に応じて細胞周期を動かす能力を維持している (3)。

このように、細胞周期は細胞の種類によって大きく異なり、その進行は細胞の環境によって制御されている。

細胞分裂・周期に関係する実験

細胞分裂の判定

細胞分裂の判定は、基本的に以下の 2 つの原理による。

  1. DNA 合成の測定
  2. 細胞質にあるプローブの希釈

DNA 合成量は、かつては放射性元素であるトリチウム 3H で標識したチミジン thymidine (T) の取り込み量から測定していた (3)。つまり、細胞のもつ radioactivity がそのまま DNA 合成量、ひいては細胞分裂量の指標になる。

放射性元素を使わない方法として、BrdU の取り込みが近年ではよく用いられている。

CFSE (carboxyfluorescein diacetate) も、細胞分裂の判定によく使われる試薬である。これは 細胞膜 を透過できるが、細胞内でエステラーゼによって限定分解され、細胞内に止まるとともに蛍光を発するようになる。細胞が 1 回分裂すると、蛍光は半分になる。これをフローサイトメトリーで検出する。


細胞周期の判定

細胞に含まれる DNA の量は、細胞周期に応じて変化する。G1 期の量を 1 とすると、G2 および M 期には 2 になり、M 期の終了 (細胞の分裂) とともに 1 に戻る。

References

  1. Amazon link: 水島 (訳) 2015a. イラストレイテッド細胞分子生物学 (リッピンコットシリーズ).
  2. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  3. Amazon link: 水島 (訳) 2015a. イラストレイテッド細胞分子生物学.

コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。

関連書籍

▼ クリックで閉じます

参考書 にレビューあり