炭酸脱水素酵素: 生理機能、発現調節など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: 炭酸脱水素酵素 CA とは
  2. 分類と分布
  3. 生理機能
  4. 活性発現機構

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概要: 炭酸脱水素酵素 CA とは

炭酸脱水素酵素 CA は、以下の反応を触媒する酵素である。直接の反応生成物は炭酸 carbonic acid H2CO3であるが、これは pKa = 3.5 という比較的強い酸なので、生理的 pH 条件下ではほとんどが H+ と HCO3- (bicarbonate, 重炭酸イオン) に解離している。以下の式はこれを含めた表現である。

CO2 + H2O → H+ + HCO3-

なお、bi- は 2 を表す接頭辞、carbonate は炭酸塩なので、bicarbonate という名称は HCO3- の慣用名である。

> 最も速い酵素 の一つである。

  • 1 つの分子が 1 秒に 106 個の二酸化炭素を変換する (2)。これは酵素がない場合の 107 倍の速度である。
  • 文献によっては 104 - 106 個という表現もある。

分類と分布

α, β, γ, δ, σ, η の 6 個のクラスが知られている (3)。

α-class

全ての 哺乳類 細胞に存在するが、バクテリアからも発見される。

β-class

原核生物菌類植物 から報告されている。

γ-class

極限環境に住むバクテリア、古細菌からの報告が多い。

生理機能

CA は以下のような多岐にわたる生命現象に関わっている。

  • 酸・塩基のバランス、pH 調節
  • 二酸化炭素 carbon dioxide やその他のイオンの輸送
  • 呼吸
  • 骨吸収
  • 糖新生、脂質合成

ヒトでは少なくとも 7 つのアイソフォームがあり (1)、多くの組織に分布している。阻害剤は重要な創薬ターゲットになっている。

ヘモグロビンのボーア効果

ヘモグロビン hemoglobin と酸素 oxygen の親和性が、ヘモグロビンと二酸化炭素またはプロトン H+ の結合によってアロステリックに制御される現象を ボーア効果 という。

炭酸脱水素酵素は 赤血球中に多量に存在し、血液中で二酸化炭素からのプロトンの生成を促進することでボーア効果に寄与している。

活性制御機構

1932 年に CA に関する最初の報告があり、すぐに亜鉛 zinc が含まれることがわかった (1)。亜鉛を含むタンパク質としての最初の報告である。

酵素の活性中心に存在する亜鉛は、水から H+ を引き抜いて OH- を作り出す。これが二酸化炭素の C=O 二重結合を求核攻撃し、酵素反応が進む (2)。亜鉛による H+ 引き抜きの pKa は 7 前後である。

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References

  1. Otis & Farber 2012a. Imaging vertebrate digestive function and lipid metabolism in vivo. Drug Discov Today 10, e11.
  2. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  3. Tripp et al. 2001a. Carbonic anhydrase: new insights for an ancient enzyme. J Biol Chem 276, 48615-48618.

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