ATGL: HSL よりもあとに報告された脂肪分解の律速酵素

protein_gene/a/atgl
11-12-2017 updated

  1. 概要: ATGL とは
  2. ATGL の調節
    • 転写調節
    • タンパク質レベルの活性調節

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概要: ATGL とは

ATGL (adipose triglyceride lipase) は、脂肪分解 lipolysis の第一段階を触媒する酵素で、脂肪分解の rate-limiting enzyme である (2)。トリアシルグリセロール を加水分解し、ジアシルグリセロール遊離脂肪酸 を生じる (1)。

HSL は広範な活性をもつが、ATGL の TAG に対する親和性は DAG に対する親和性の約 10 倍高い (4)。

ATGL の活性には、油滴 lipid droplet の表面に存在する CGI-58 が必要である。

Neutral lipid storage disease with myopathy (NSLDM) という遺伝病は ATGL 遺伝子の変異が原因である (1)。20 - 30代で発症し、脂肪の蓄積と筋肉の萎縮が進行する。最終的には、心臓の異常または不整脈のため死に至る。

> 34 - 41歳の3名の患者の臨床報告 (1)。

  • 289残基目にストップコドンを生じる変異 C865T や、スプライシング異常を引き起こす G757Tの変異。
  • 筋肉が脂肪に置き換わる症状が認められる。
  • レプチンおよびアディポネクチン量の低下などがみられる患者もいたが、症例が少ないため今後の研究が待たれる。

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ATGL の調節

ATGL は脂肪分解の rate-limiting enzyme であり、原則としてエネルギー状態に応じて以下のように制御される 。

> エネルギーが豊富な場合には抑制される。

転写調節

インスリンは原則として脂肪分解 lipolysis を阻害する。ATGL の転写抑制もその一環である。ATGL のプロモーターには 2 つの FoxO1 結合サイトがあり、FoxO1 を介した発現調節であると考えられている (3)。

つまり FoxO1 には ATGL の転写を活性化し、脂肪分解を促進する作用がある。これをインスリンが負に制御しているわけである。

タンパク質レベルの活性調節


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References

  1. Laforet et al. 2013a. Neurtal lipid storage disease with myopathy: a whole-body nuclear MRI and metabolic study. Mol Genet Metab 108, 125-131.
  2. Haemmerle et al. 2006a. Defective lipolysis and altered energy metabolism in mice lacking adipose triglyceride lipase. Science 312, 734-737.
  3. Chakrabarti and Kandror 2009a. FoxO1 controls insulin-dependent adipose triglyceride lipase (ATGL) expression and lipolysis in adipocytes. J Biol Chem 284, 13296-13300.
  4. Zimmermann et al. 2004a. Fat mobilization in adipose tissue is promoted by adipose triglyceride lipase. Science 306, 1383-1386.