親の年齢が子供に及ぼす影響: メカニズムのまとめ

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6-20-2017 updated

  1. 概要
  2. ミトコンドリアの変化
  3. テロメアの変化
  4. ゲノム DNA のエピジェネティック修飾
  5. 社会的要因

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概要

親の状態が子供に及ぼす影響 のページでは、親の状態 (栄養状態、病気、年齢など) が子供に及ぼす影響 (寿命、病気のリスクなど) を幅広くカバーしている。

このページでは 親の年齢 に着目し、親が老化するに従って子供 (生殖細胞) に生じる生物学的変化をまとめる。

内容は、大まかに

  • ミトコンドリアの変化
  • テロメアの変化
  • ゲノム DNA のエピジェネティック修飾

に分かれる。卵子および精子にそれぞれ研究例がある。

さらに、社会的な要因 というのも見逃されがちだが重要である。たとえば親の年齢が高いと一般に収入が多くなり、子供は過食状態となる。これが 肥満 のリスクを高め、結果として寿命を短くしているかもしれない。このページの最後では、このような社会的要因についても言及する。

ミトコンドリアの変化

卵子

女性が齢をとると、卵子の meitotic spindle に異常が起こりやすくなり、これが 染色体 分配の異常に繋がる (2)。

ミトコンドリアにも異常が起こる。クリステの構造が乱れ、mtDNA 量が マウス では 2.7 倍少なくなるというデータがある (2)。ウシ でも同様に、mtDNA 量が低下し、受精率が下がるというデータがある。

加齢によってミトコンドリアの ATP 産生力が下がる (3)。論文は Shigenaga et al. 1994。


> Maternal effect の原因は ミトコンドリア 機能の低下という仮説 (1)。
  • ミトコンドリアは母系遺伝であるが、セントロメアは精子のみから伝わる。
  • 通常、epigenetic modification は配偶子形成の際に消去されるが、いくつかは次世代に伝わる。

mtDNA の数は、糖尿病マウスモデルの卵子でなぜか増大する (2)。ただし、ミトコンドリア機能は低下しており、mtDNA は翻訳されていないと思われる。AMP/ATP ratio は糖尿病モデルの卵子で高く、エネルギー不足に陥っていると思われる。


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ゲノムDNA のエピジェネティック修飾

> Cord blood と胎盤で、老化遺伝子のメチル化を調べた論文 (4)。
  • あまり直接的な結果は得られていない。老化の影響を見ているわけではなく、両組織のメチル化の程度が一致するかを見ている。
  • SIRT1, TP53, PPARG, PPARGC1A, TFAM, a subtelomeric region (D4Z4), mitochondrial RNR1, D-loop.
  • 90 人、バイオプシーでサンプリング。19人については within-placenta variation も調べている。
  • D4Z4 とミトコンドリア遺伝子は、cord blood と placenta でメチル化のパターンが似ていた。他の遺伝子では一致しなかった。
  • PGC-1α は、cord blood でほとんどメチル化がなく、胎盤ではメチル化されているという結果。Maternal effect と関係しているかもしれない。
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References

  1. Wilding 2014a. Can we define maternal age as a genetic disease? FVV in OBGYN 6, 105-108.
  2. Grindler and Moley 2013a. Maternal obesity, infertility and mitochondrial dysfunction: potential mechanisms emerging from mouse model systems. Mol Hum Reprod, 19, 486-494.
  3. Wilding 2005a. The maternal age effect: a hypothesis based on oxidative phosphorylation. Zygote, 13, 317-323.
  4. Janssen et al. 2014a. Variation of DNA methylation in candidate age-related targets on the mitochondrial-telomere axis in cord blood and placenta. Placenta, 35, 665-672.