脳のケトン体代謝

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10-28-2017 updated


  1. 概要: 脳のケトン体代謝

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概要: 脳のケトン体代謝

ケトン体とは、糖質 に比べて 脂質 の代謝が過剰なときに、余剰の アセチル CoA から作られる分子である。アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸およびアセトンの 3 種類である。

ケトン体に関する基本的な事項は ケトン体の概要のページ に示し、ここでは脳 brain のケトン体代謝に関する知見をまとめる。脳は他の組織に比べて栄養源が限られており、グルコース およびケトン体を主な栄養源にしている。したがって、ケトン体の代謝は脳の代謝を理解する上で重要である。


  • ケトン体は、脳で UCP の発現を増大させる (2)。
  • GABA 合成を促進するなどして、全体的に GABA の作用を活性化させる (2)。
  • 哺乳類でも、離乳前はケトン体が脳の主要なエネルギー源である (3D)。

> 乳児期の ラット は、母乳の脂質含量が高いためにケトーシスの状態にある (1)。
  • 出生後 21 日目ぐらいまで。
  • ラット以外では、母乳の脂質含量が低いためにこの現象は起こらない。Guinea-pig では多少ある。
  • この時期の脳ではケトン体代謝が活発で、全エネルギーの 30% 程度を占める。
  • 脳の BHB 代謝は、輸送 transport が律速になっている。

以下のような点も、脳のケトン体代謝を理解するために重要である。

  • 発生初期では、ミエリン形成のために脂質の uptake や de novo 合成が盛んである。
  • Adult brain において、Glc はケトン体の代謝を促進するが、そのメカニズムは不明である。
  • 脳ではケトン体代謝酵素の量は常に十分で、いつでも Glc からエネルギー源を切り替えられる。
  • したがって、酵素量ではなく、基質量が adult brain のケトン体代謝の律速であると言える。


BHB は、kynurenic acid の合成を促進する作用がある (3)。 Kynurenic acid は、glutamatergic and alpha7-nicotinic receptors の内在性アンタゴニストであり、この受容体は NMDA 受容体との相互作用を通じて神経伝達物質としての グルタミン酸 の放出を抑制する。


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References

  1. Nehlig 2004a (Review). Brain uptake and metabolism of ketone bodies in animal models. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids, 70, 265-275.
  2. deRoos (1994). Plasma ketone, glucose, lactate, and alanine levels in the vascular supply to and from the brain oh the spiny dogfish shark (Squalus acanthias). J Exp Zool 268, 354-363.
  3. Lauritzen et al. 2015a (Review). Monocarboxylate transporters in temporal lobe epilepsy: roles of lactate and ketogenic diet. Brain Struct Funct 220, 1-12.