生命の起源:
自然発生説、パスツールの実験、RNAワールド仮説など
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概要
進化 evolution の概念を受け入れると、「最初の生命はどんなものだったか」という疑問が生じる。このページでは、生命の起源に関係した重要な実験、概念をまとめる。大学初級レベル (1,2)。
まずは主な内容を簡単に表にしておく。リンクはページ下方の詳細へ飛びます。
生命の自然発生を否定した。 |
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Miller の実験 |
アミノ酸 などの複雑な化合物が、太古の地球環境を模したフラスコ中で生成することを示した。稲妻のエネルギーが重要だったと仮定。 |
Iron-sulfur 説 |
海底の熱水噴出孔が生命を生み出したとする説。 |
隕石説 |
隕石に含まれる有機化合物が地球上の生命の起源であるとする。実際に、アミノ酸などは隕石からみつかっている。 |
生命の発生そのものではなく、原始生命の遺伝物質に関する仮説。DNA ではなく RNA が遺伝物質であったとする。 |
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パスツールの実験
当初、人々は「生命は無生物から自然に発生する」という自然発生説 spontaneous generation を信じていた (1)。ウジは肉から、微生物は肉汁から、ウナギは泥から、ネズミ は汗臭いシャツと小麦から自然に発生するとされた。
自然発生説を否定した 1800 年代中盤の
実験の詳細は以下の通り (1,2)。
- この実験のポイントは、細い管で外気に通じているフラスコである。空気は通すが、細くて曲がりくねっているので、バクテリアは侵入できない。
- 肉汁を加熱して殺菌すると、フラスコをそのまま放置しても腐らない。
- しかし、細長い管を折って短くしたり、フラスコを傾けたりするとバクテリアが繁殖する。
- したがって、バクテリアは肉汁から自然発生するのではなく、外から侵入していると結論できる。
このように、我々の身の回りでは、生命は自然発生しないと考えられた。
RNA ワールド仮説
1920 年ごろ、Oparin と Haldane は複雑な有機化合物が自然に合成されること、反応性の高い 酸素 の存在がそれを阻害することを示した (1)。
有名なのは 1953 年の Miller の実験である。酸素を含まない空気中で単純な有機化合物を加熱し続けると、アミノ酸、ペプチド、核酸、ATP などが合成された (1)。これらの物質が泥の表面などに蓄積し、生命の起源となったのではないかと考えられている。
生命の定義 は成長・増殖・維持である。したがって、次のステップは蓄積した分子が自分と同じものを複製できるようになることである。原生生物は DNA を遺伝情報の維持に使っているが、太古の生物は RNA を使っていたと考えられている (1)。これを
この説の根拠は、RNA が触媒機能をもつことである (1)。DNA の場合、複製には タンパク質 が必要であるが、そのタンパク質の情報は DNA にコードされている。つまり卵と鶏の関係になってしまうのである。RNA は、少なくとも以下のような触媒機能をもちうることが示されている。
- 他の RNA 鎖を切断する
- 複数の RNA 鎖を結合する
- ペプチドにアミノ酸を付加する
RNA だけでペプチドの合成が可能であったとする 論文が 2022 年に発表されている (4, 図もこの論文から)。
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References
- Amazon link:
Audesirk et al. 2013a. Biology: Life on Earth with Physiology, eBook, Global Edition (English Edition): 新しいバージョンへのリンクです - Amazon link:
Starr et al. 2016a. Biology Today & Tomorrow. - By Kgerow16 - Own work, CC BY-SA 4.0, Link
Muller et al. 2022a. A prebiotically plausible scenario of an RNA–peptide world. Nature 605, 279–284.
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