プラスミド精製キット:
原理、カラム再生法、各社製品の比較など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要
  2. スピンカラムについて
    • スピンカラムの再生
  3. 各社製品の比較

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概要

プラスミド精製キットの多くは、アルカリ法 で抽出したプラスミドをカラムで精製するという方法をとっている。

とりあえず各社のキットの値段をまとめた。なお、キットを買わずに別売りのカラムと自作バッファーでプラスミド精製することも可能だが、コストはほぼ同じ (マンパワー分マイナス) という検討結果がある (1)。この 研究費が無い というページには面白い記事が多いので、一読をお勧めする。

スピンカラムについて

とりあえず原理の画像 (Public domain)。シリカでできており、DNA と Na+ を介して静電的相互作用をしているようだ。


シリカスピンカラム

スピンカラムの再生

スピンカラムが使い捨てなのは勿体無いと誰もが思うようで、再生の方法を調べた論文もけっこう出ている。

  • プラスミドおよび DNA 抽出キットのカラム再生に関する論文は出ているので、PCR purification kit のカラムについて調べた、と書かれている論文 (2)。以下の 2 つの文献を引用している。
  • プラスミド抽出キットのカラム。Qiagen QIAprep Spin Miniprep kit を中心に、Novagen Spinprep Plasmid kit と Sigma-Aldrich GenElute Plasmid Miniprep kit のカラム再生も検討 (3)。
  • 詳細はチェックしていないが、DNA 抽出キットのカラムだろう (4)。

プラスミド抽出キットのカラムの再生方法は、文献 3 をもとに 田辺氏の個人サイト でまとめられている。簡単にプロトコールをまとめておく。

  1. 1 M 塩酸にカラムを完全に浸し、16 時間以上 (最低 4 時間) インキュベート。
  2. 滅菌蒸留水でリンスしたあと、500 µL の滅菌蒸留水を使って 5 回カラムを洗浄。キットを使うときのように、カラムに加えて遠心、flow through を捨てる作業を繰り返す。
  3. Buffer QBT を 500 µL 加え、遠心して濾液を捨てる。

なお、Buffer QBT の組成は こちら を参照。NaCl 21.915 g, 1 M MOPS バッファー 25 mL, イソプロパノール 75 mL, Triton X-100 750 µL を混合し、滅菌蒸留水で 500 mL にメスアップ。オートクレーブはせずにフィルター滅菌。

各社製品の比較

値段は各社のホームページに載っていたものなので、実際の価格とは異なる場合がある。キット名のあとの ( ) の中はカタログ番号。

価格の $673/100 preps は、100 個入りのキットが売られているという意味。$1 未満は切り捨て。大きいキットの方が単価は安いが、よく使うと思われる 50 - 100 preps のもので比較している。 ( ) はその価格から計算したサンプルあたりの値段。2018 - 2019 年ごろの情報。


Qiagen
Plasmid mini kit (12125)

$673/100 preps
($6.7/sample)

カラム精製キットでは定評のある Qiagen だが、この値段はちょっと問題だろう。

NEB
Monarch plasmid miniprep kit (T1010S)

$82/50 preps
($1.6/sample)

BioRad
Quantum prep (7326100)

$200/100 preps
($2.0/sample)

Thermofisher
GeneJET plasmid miniprep kit (K0502)

$70/50 preps
($1.4/sample)

Thermofisher
PureLink Quick plasmid miniprep kit (K210010)

$78/50 preps
($1.56/sample)

細かく読んでないが、GeneJET より収量、純度が少し高いようだ。

Zymo Research
Zyppy plasmid miniprep kit (D4036)

$65/50 preps
($1.3/sample)

集菌しなくてもプラスミド抽出できるタイプ。

Zymo Research
ZymoPURE plasmid miniprep kit

$83/50 preps
($1.3/sample)

Zyppy が 25 µg までの plasmid を抽出できるのに対し、こちらは 100 µg まで。

Sigma-Aldrich
GenElute plasmid miniprep kit (PLN-70)

$111/70 preps
($1.58/sample)

10 preps の小さいキットもある。

カラムを使う前に、Column preparation solution を入れて遠心する必要があるので、一手間多い。

溶出は 100 µL だが、高濃度プラスミドが必要な場合は 50 µL。Elution buffer を温めるオプションがないか?


ひと昔前と比べて選択肢が多い印象。同じ会社からでも、微妙に違う複数のキットが出ている。全く網羅できてないが、現時点での最安値は Zymo Research。

私の場合、当面は plasmid をシークエンスして大腸菌に入れるだけなので、あまり収量、純度にこだわる必要がない。単に値段で決めて実験を始めてみる。


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References

  1. 研究費が無い. ミニプレップを自作Buffer+単品カラム購入で頑張ってみる. Link: Last access 2019/07/16.
  2. Zhou et al., 2019a. Rapid regeneration and reuse of silica columns from PCR purification and gel extraction kits. Sci Rep 8, 12870.
  3. Siddappa et al., 2007a. Regeneration of commercial nucleic acid extraction columns without the risk of carryover contamination. BioTechniques 42, 186–192.
  4. Tagliavia et al., 2009a. Complete decontamination and regeneration of DNA purification silica columns. Anal Biochem 385, 182–183/

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アップデート前、このページには以下のようなコメントを頂いていました。ありがとうございました。

2017/10/10 11:36 ザイモ使ってます。安いけど問題ないですよ。