魚介類の健康成分 タウリン: 構造、機能、代謝など
- 概要: Tau はアミノ酸か?
- タウリンの分布
- 生体内での分布
- 食品での分布
- タウリンの生合成
- タウリンの生理機能
- 浸透圧調節
- RNA 修飾
広告
概要: Tau はアミノ酸か?
タウリン Tau は図 1 のような構造をもつ物質である。下にあるアミノ酸 amino acid の構造と、まあ似ていると考えられなくもない。
タウリン |
アミノ酸の基本構造 |
アミノ酸とは、
しかし、同じく正確にはアミノ酸でないプロリンは「タンパク質 を構成する 20 種のアミノ酸」の一種としておいて、但し書きで「正式にはアミノ酸ではない」とされることが多いようである。
プロリンタウリンをアミノ酸に含める場合 (2) は、「アミノ基 -NH2 が潰れている Pro もアミノ酸なのだから、カルボキシル基 -COOH がスルホン基 -SO 3 に置き換わっていても、まあ広義のアミノ酸ということでいいいだろう」という考え方をしていると思われる。
この場合、スルホン基の結合している炭素が α 炭素とみなされ、タウリンは β アミノ酸の一種ということになる。
タウリンの重要な特徴は以下の通り。このページで細かく解説している。
- 生体内に大量に存在する。体重の 0.1 %、つまり 100 kg の人なら 100 g がタウリンである。
- 浸透圧調節に役立つほか、神経系の発生、タンパク質の合成など様々な生理作用がある。
タウリンの性状など
IUPAC 名はアミノエタンスルホン酸である (1)。大きい単斜晶系柱状結晶、融点 328 ℃。熱水に可溶、アルコールには不溶。アミノ酸のように、溶液中では両性イオンの形をとり、中性を示す。
ウシ Bos taurus の胆汁中から 1827 年に発見され、名称はギリシャ語の雄牛 Tauros に由来する (2)。
タウリンの分布
体内での分布
ヒトの体内には多量に存在し、
胆汁や血漿などにも多く存在する (5)。
> タウリンは トランスポーター により細胞内へ取り込まれる (2)。
- タウリントランスポーター TAUT は SLC6A ファミリーに属する SLC6A6 である。
- 12 回膜貫通型のタンパク質と推定されており、生体内のほとんどの組織で発現がみられる。
- Na+ および Cl- 依存的な輸送を行う。タウリン 1 分子に対して、Na+ 2 分子と Cl- 1 分子が共輸送される。
- TAUT はタウリンへの親和性が Km = 数 nM と高いが、β-アラニン、ヒポタウリン、GABA などの輸送にも関わる。
- 細胞からの排出は TAUT 非依存的に行われる。クロライドチャネル阻害剤がタウリンの排出を阻害するので、この分子が関わっていることが予想されるが、詳細は不明である。
食品中の分布
タウリンは主に食品として摂取されるが、メチオニン Met やシステイン Cys から合成される経路も存在する。下の表では、とくに記述しない限り単位は mg/100 g 湿重量である。
食品 | Tau 含量 |
コメント | 文献 |
---|---|---|---|
マダイ | 230 |
5 |
|
ブリ (血合筋) | 673 |
魚類では血合筋に多く含まれるとともに、心臓、脾臓にも多い傾向がみられる 。ブリ普通筋ではわずか 16 mg/100 g である。 |
5 |
マダコ | 593 |
Tau は一般に軟体動物に多い。 | 5 |
マガキ | 1178 |
5 |
|
クルマエビ | 199 |
5 |
|
牛ロース | 49 |
牛レバー 45。魚介類に比べると、畜肉ではかなり少ない。 | 5 |
鶏むね肉 | 14 |
鶏レバー 129、鶏卵 0。 | 5 |
リポビタン D | 1 g/瓶 |
リポビタン D ハイパーには 3000 mg 配合されているなど、含量は種類によって異なる。 |
- |
タウリンの生合成
タウリンはメチオニン Met およびシステイン Cys から合成され、合成に関わるのは主として脂肪組織 adipose tissue、肝臓 liver および腎臓 kidney である (7)。図は Public domain。
- システインジオキシゲナーゼ (cysteine dioxygenase; CDO) が最初の反応を触媒する酵素である。システインのチオール基を酸化し、システインスルフィン酸 cysteine sulfinic acid (CSA) を作る。
- CSA はシステインスルフィン酸デカルボキシラーゼ cysteine sulfinate decarboxylase (CSAD) によってヒポタウリンになる。
- ヒポタウリンは、非酵素的にタウリンになる。
タウリンの生理機能
タウリンの生理機能は多岐にわたる (2)。
浸透圧調節
浸透圧調節は、タウリンの主要な生理機能の一つである (2)。一般に、細胞は浸透圧変化に対してまず細胞の容積を変化させることで対応する (図; Public domain)。
その後、細胞は容積を徐々に元に戻し、細胞内の溶質濃度を変化させることで浸透圧変化に対応する。このような浸透圧調節に使われる分子を
オスモライトは、あまり強い機能をもっている分子だと都合が悪い。タウリン、ベタイン、myo-イノシトールなど、高濃度でも細胞に害を与えない物質が使われる。魚介類がタウリンを多く含むのは、オスモライトとしてこの分子を利用しているためである。
浸透圧については 魚類の浸透圧調節 のページなどを参照のこと。
RNA 修飾
Taurin が
その他
内容が増えてきたら独自のセクションを作る。
> 手術、トラウマ、敗血症 sepsis、ガンなどで血中タウリン濃度が低下する (4I)。
- 実際に、タウリンのサプリメントはインスリン抵抗性を改善したり、酸化ストレスを軽減したりする。
- タウリンの代謝に関わる主な臓器は、腸、肝臓、腎臓である。
- 各臓器での濃度からフラックスを計算し、腸からの Tau release があることを示した論文。
> 原則として、タウリンの摂取および合成量は
- 肥満および糖尿病の患者では、血中タウリン量が低い。
- Tau 摂取で血中の炎症マーカーが低下、adiponectin が増える。
広告
References
- Amazon link: 岩波理化学辞典―[電子資料].
薩 2007a. タウリンの多彩な生理作用と動態. 化学と生物 45, 273-281.Kirino et al. 2004a. Codon-specific translational defect caused by a wobble modification deficiency in mutant tRNA from a human mitochondrial disease. PNAS 101, 15070-15075.van Stijn et al. 2012a. Human taurine metabolism: fluxes and fractional extraction rates of the gut, liver, and kidneys. Metabolism 61, 1036-1040.- Amazon link:
食品機能性の科学編集委員会 . 食品機能性の科学. 2008. Suzuki et al. 2002a. Taurine as a constituent of mitochondrial tRNAs: new insights into the functions of taurine and human mitochondrial diseases. EMBO J 21, 6581-6589.Mukarami 2015a (Review). Role of taurine in the pahogenesis of obesity. Mol Nutr Food Res 59, 1353-1363.
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。