肥満、糖尿病に関係が深い核内受容体 PPAR:
構造、機能、リガンド、アイソフォームなど

protein_gene/p/ppar
2018/11/11 更新

  1. 概要: PPAR とは
    • PPARs のリガンド
    • PPARs の結合タンパク質
    • PPARs の標的遺伝子
  2. PPARα について
  3. PPARβ/δ について
  4. PPARγ について

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概要: PPAR とは

Peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR) は、核内受容体 の NR1C ファミリーに属する転写因子である。

レチノイド X 受容体 (RXR; retinoid X receptor) とヘテロダイマーを形成し、PPRE (PPAR-responsive regulatory element) に結合して転写調節を行う。脂質代謝、炎症反応、脂肪細胞分化などに関わる遺伝子の転写を調節する。

PPARα, PPARβ/δ, PPARγ の 3 つのアイソフォームがある。β と δ は、別々に発見されたが同じ分子。アイソフォームには、大まかに次のような特徴がある。


PPARα

最初に発見された PPAR。肝臓、腎臓、心臓、筋肉など β酸化 の盛んな組織で多く発現している。特に肝臓に多いという記述もある (4) が、ユビキタスと表現されることも多い。

β酸化および ケトン体 の生成を促進する。

PPARβ/δ

ヒトではユビキタスに発現、マウス では 胃および腸で高発現。

筋肉で β酸化および脂肪酸の取り込みを促進。脂肪細胞やマクロファージでも発現しており、NF-κB などの炎症因子の活性を抑制 (4)。

PPARγ

β酸化を促進する αおよびβと異なり、脂肪細胞の分化や組織への脂肪の蓄積を促進する。脂肪組織、大腸および脾臓で高発現 (5)。マクロファージでも高発現。

γ1 と γ2 のアイソフォームがある (4)。γ2 の 3' 末端には 90 塩基の exon が一つ付加されている。

γ1 は脂肪組織を含む多くの組織で発現するが、γ2 の発現は通常は脂肪組織に限定されている (4)。過栄養、肥満などの条件下で γ2 の発現が肝臓などでみられるにようになる。


PPARs のリガンド

PPARs は 脂肪酸 やエイコサノイドと結合して活性化する。このほか、多くの小分子がリガンドとして作用し、高血糖などの治療に使われている。

一般に、PPARα は飽和および不飽和脂肪酸に対して同程度の親和性を示すが、β/δ および γ は PUFA に高い親和性を示す傾向がある (5)。

PPARα

  • Fibrates
  • WY-14643 は α 特異的なアゴニストで、transverse aortic constriction (TAC) による心機能の低下を軽減する (5)。

PPARβ/δ

  • GW501516, GW0742
  • GW610742X: β/δ-specific agonist (5)
  • Telmisartan, bezafibrate

PPARγ

以下の 2 つは、ともにインスリン抵抗性を改善し、抗炎症作用を示すリガンドである (4)。

  • Rosiglitazone
  • Pioglitazone


PPARs の結合タンパク質

PPARs には、多くのタンパク質が結合する。PPARs を活性化する coactivator や、抑制する repressor などのように分類されている。

RXR

Retinoid X receptors。

PGC-1α

PPARγ coactivator 1α



PPARs の標的遺伝子

PPARs の標的遺伝子は多岐にわたり、まだごく一部しか以下の表として整理しきれていない。

CPT1

Carnitine palmitoyltransferase 1 (5)。α の標的。

FATP1

Fatty acid transport protein 1 (5)。α の標的。

Nanog

iPS 細胞の樹立に重要な Nanog も PPAR の制御下にあることが報告されている (6)。



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PPARα について

PPARα は、主としてエネルギーが不足したときに活性化され、β酸化を通じて ATP の産生を促進する。KO mice は遊離脂肪酸量が高くなるが、血液中のグルコースおよびケトン体濃度が低下する。これらの結果は、KO mice で β酸化が抑制されていることを示唆する。さらに 糖新生 も抑制される。

主な標的遺伝子は CPT1A, CPT2, HMGCS2 など。また PDK4 の発現を誘導し、ピルビン酸からアセチル CoA への転換を抑制する。

免疫反応も制御する。たとえば、リポポリサッカロイドによる血中 TNFα の上昇は PPARα KO で抑制され、PPARα アゴニストで促進される。


PPARβ/δ について

PPARβ/δ は、飽和および不飽和長鎖脂肪酸によって活性化される。また、prostacyclin というリガンドも知られている。

β酸化を活性化する機能がある。アゴニストで処理した L6 で、脂肪酸の取り込みと β酸化が活性化する。

運動で PPARβ/δ の発現量が上がる。ガン細胞の生存率との間にも相関がある。


PPARγ について

PPARγ は主に脂肪組織で発現しており、脂肪細胞の分化を促進する機能がある。

PPARγ の homo KO mice は、胎盤の機能不全のため 10.5 - 11.5 日で死亡する (embryonic lethal)。ヘテロではインスリンへの感受性が高く、高脂肪食で飼育してもインスリン抵抗性になりにくい。

ヒトでは Pro12Ala という partial loss-of-function mutation が知られており、BMI の低下、インスリン感受性、低糖尿病リスクなどと相関がある。脂肪細胞でレプチンの発現を抑制するという報告もある。


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References

  1. Selesniemi et al. 2011a. Prevention of maternal aging-associated oocyte aneuploidy and meiotic spindle defects in mice by dietary and genetic strategies. PNAS 108, 12319-12324.
  2. Selesniemi et al. 2011a. Maternal pregestational BMI is associated with methylation of the PPARGC1A promoter in newborns. Obesity 17, 1032-1039.
  3. Xie et al. 2015a. Placental DNA mehylation of peroxisome-proliferator-activated receptor-γ co-activator-1α promoter is associated with maternal gestational glucose level. Clin Sci 129, 385-394.
  4. Corrales et al., 2018a. PPARs and metabolic disorders associated with challenged adipose tissue plasticity. Int J Mol Sci, 19, 2124.
  5. Khuchua et al. 2018a. Elucidating the beneficial role of PPAR agonists in cardiac diseases. Int J Mol Sci. 19, 3464.
  6. Lee et al. 2018a. Peroxisome proliferator-activated receptor α agonist and its target Nanog cooperate to induce pluripotency. J Clin Med. 7, 488.