糖新生: ピルビン酸からグルコースを合成する経路

aa_carbo_lipid/carbohydrate/gluconeogenesis
2018/06/02 更新

  1. 概要: 糖新生とは
    • 糖新生が起こる場所 (組織)
  2. 2 つの迂回経路
    • ピルビン酸キナーゼの反応
    • PFK の反応
  3. 各段階の反応

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概要: 糖新生とは

糖新生 gluconeogenesis とは、ピルビン酸 から グルコース を合成する代謝経路のことをいう (1)。

図 (2) に見るように、解糖系 glycolysis とかなりの反応を共有する。しかし、解糖を完全に逆流するわけではなく、下で詳しく述べるように、2 つの迂回経路を通る。

糖新生の主な原料となるのは、

である (1)。ピルビン酸ももちろん原料になるし、反芻動物ではプロピオン酸が糖新生の重要な原料である。


糖新生が起こる場所 (組織)

糖新生が起こる主要な組織は 肝臓 liver であり、腎臓 kidney でも少し起こる。これらの組織での糖新生が、グルコースを必要とする脳や筋肉の代謝を支えている。


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2 つの迂回経路

酵素は原則として逆方向の反応も触媒する。したがって、解糖系を順に逆流していけば糖新生が起こる。しかし、実際に糖新生は解糖の逆反応でなく、2 つの迂回経路を通っている。この理由は、以下の反応がエネルギー的に起こりにくいためである (1)。

  1. ピルビン酸キナーゼによるピルビン酸のリン酸化
  2. ホスホフルクトキナーゼによる F1,6-BP のリン酸化

上の図に書かれた 2 つの反応である。さまざまな説明があるが、以下はすべて同じことを表現している。

  • 自由エネルギーが F6P >> F1,6-BP かつ PEP >> ピルビン酸 である (差が大きいということ)。
  • これらの反応はエネルギー上不可逆であり、ゆえに解糖系の律速段階にもなっている。
  • PFK, PK は解糖系の律速酵素である。
  • グルコースとピルビン酸の自由エネルギーの差 ΔG は約 −84 kJ mol-1 であるが、その大部分はこれらの反応で放出される (1)。

なお、ヘキソキナーゼによるグルコースのリン酸化もエネルギー的に不可逆であるため、hexokinase でなく glucose 6-phosphatase という酵素が糖新生で登場する (1)。しかし、次の項の最後で述べるように、糖新生は多くの場合 G6P の産生までで、遊離のグルコースが生み出されることは少ない。そのため、上の図には迂回経路として書かれていない。


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各段階の反応

1. Pyruvate → oxaloacetate → PEP

迂回経路その 1。
解糖でピルビン酸キナーゼによって触媒されるこの反応は、オキサロ酢酸を経由して を経由して行われる (1)。まず、ピルビン酸カルボキシラーゼが二酸化炭素 CO2 を付加する。


ちなみに、この反応は TCA 回路 にオキサロ酢酸を補給する 補充反応 alaplerosis と同じ であり、ピルビン酸カルボキシラーゼは ミトコンドリア に局在するタンパク質である。解糖系は細胞質にあるので、ピルビン酸は MCT1 などによってミトコンドリアに輸送されている。

次に、脱炭酸しつつリン酸基が付加される。この反応は、phosphoenolpyruvate carboxykinase に触媒されるが、この酵素は細胞質にある (1)。オキサロ酢酸は、malate に変換された状態で細胞質に輸送され、細胞質で再びオキサロ酢酸に戻される。



この反応では、いったん付加した炭酸基 -COO- をのちに除去するというステップを踏んでいる。無駄のように思えるが、これによってエネルギー的に反応を起こりやすくしているのである (1)。この方式は、TCA 回路、ペントースリン酸回路 および 脂肪酸の生合成 でも使われている。


2. PEP → 2-Phosphoglycerate

ここからしばらくは、解糖系の逆反応である。解糖系のページの図をそのまま貼っておくので、右から左に反応が進むと理解してほしい。これは解糖系の 9 番目の反応。



3. 2-Phosphoglycerate → 3-Phosphoglycerate

解糖系の 8 番目の反応、リン酸基の分子内転移。

4. 3-Phosphoglycerate → 1,3-Biphosphoglycerate

解糖系の 7 番目の反応。1 の反応に加え、ここでも ATP が使われる。糖新生はエネルギーを消費する反応である。

5. 1,3-BPG → Glyceraldehyde-3-phosphase

解糖系の 6 番目の反応。GAPDH に触媒されるこの反応は 2 段階 なので注意する。中間体として、ステップ 4 と同じ 3-phosphoglycerate が出てくるが、おそらくこれは GAPDH に結合した状態で一瞬だけ生じるものなので、ステップ 4 のものとは混じり合わないのだろう。

6. GAP → Fructose-1,6-biphosphate

解糖系の 4 番目の反応。ここでは書いていないが、DHAP は GAP の異性化によって作られる。解糖系のページの反応 5 を参照のこと。ここで、2 分子の C3 が会合し、C6 の糖を生み出す。

7. F1,6-BP → Fructose-6-phosphate

迂回経路その 2。加水分解反応。Pi は PO43- である。

これは解糖系の 3 番目の反応で、PFK に触媒される律速反応である。糖新生では、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼがこの反応を触媒する。


8. F6P → Glucose-6-phosphate

これも解糖系の逆反応。解糖系ではステップ 2 である。


9. G6P → Glucose

上でも述べたように、G6P は多くの場合グルコースにならない (1)。大きな理由の一つは、グルコースは (GLUT により?) 細胞外に流出してしまう ことである。G6P は多くの場合グリコーゲンになる。

糖新生は、原則として細胞がグルコースを必要とするときに起こる。それなのに、グルコースが細胞外に出てしまっては本末転倒である。そのため、G6P からグルコースを作る glucose-6-phosphatase は、肝臓および腎臓のみで発現している (1)。これらの器官は、他の臓器に血液を介してグルコースを供給するという役割があるためである。

しかも、glucose-6-phosphatase は小胞体タンパク質であり、ここに G6P を供給するにはトランスポーターが必要である (1)。これも、グルコース合成を防ぐ一つの手段と考えられる。


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References

  1. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.

  1. Regulation of Glycolysis & Gluconeogenesis Link. Labeled for "reuse" in Google image search.