古典的 MAP キナーゼ ERK: 構造、機能など
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このページの最終更新日: 2024/02/14広告
概要: ERK とは
ERK (extracellular signal-regulated kinase, 細胞外シグナル制御キナーゼ) は、多くの ホルモン の作用を仲介するキナーゼで、細胞分裂に重要な役割を果たしている (4)。
分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ (Mitogen-activated Protein Kinase、MAPK、EC 2.7.11.24) の一種であり、最初に同定された MAPK であることから、
ERK には、分子量 44 kDa の ERK1 と 42 kDa の ERK2 があり、これらは 85% 程度のアミノ酸同一率を示す。両者を合わせてERK1/2 と呼ばれることが多い。
図にあるように、ERK1/2 のほか、p38MAPK、c-Jun N-terminal kinase (JNK) および ERK5 が MAPK である。
ERK の上流
以下のような経路が知られている。
- BDNF - trkB - Ras - Raf - MEK - ERK (文献 1I)
- GH - GHR - JAK2 - Grb2 - SOS - Ras - MEK1/2 - ERK1/2 (文献 2)
- EGF - EGF receptor - Grb2 - SOS - Ras - Raf - ERK1/2 (文献 3)
- IGF - IGF receptor - IRS - Grb2 - SOS - Ras - Raf - ERK1/2
「生理的条件下では、ERK は MEK の唯一の基質である」という記述がある (5)。
ERK のリン酸化
一般には、リン酸化が ERK 活性化の指標に使われる。リン酸化された ERK を検出する交代があるので、図 (7) のような Western blot を行い、リン酸化 ERK (p-ERK) のシグナルを、全 ERK のタンパク質量で割った値が ERK 活性化の指標となる。
よく使われる ERK 抗体は、p42 と p44 の両方に反応する。したがって、図のように 2 本のバンドが見えるのが普通である。
ERK の標的
ERK は PPARγ の AF-1 domain にあるコンセンサスサイトを Ser82 でリン酸化し、PPARγ の転写活性を阻害する(6I)。これは PPARγ の構造変化とリガンド結合性の変化による。リン酸化は、ユビキチン依存的な PPARγ の分解も促進する。脂肪細胞では、ERK 阻害剤は PPARγ の減少を軽減する。 |
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HSP27, HSP25 |
マウス HSP25 とヒト HSP27 はオーソログである。p38 MAPK と Erk が HSP25 をリン酸化する。SB203580/PD098059 で HSP25 のリン酸化を阻害すると、熱ストレスで細胞骨格が崩れるようになり、熱ストレス依存的なアポトーシスが増える (Ref)。 |
ERK の機能
もちろん生物種や細胞によって異なる。まだ、いろいろな論文からの知見をランダムに書いていっている段階である。
海馬 hippocampus における Erk のリン酸化状態が、学習や記憶に関係しているとされる (1)。
> コルチコステロンを水に溶かして投与すると、sucrose intake が低下する (1R)。
- これは、うつ病の症状を再現しているとされる。実験は C57BL/6J mice で行われている。
- 抗うつ剤 amitriptyline で、sucrose intake が回復する。
- Dentate gyrus における Erk1/2 のリン酸化レベルが、これに相関して変化する。
References
Gourley et al. 2008a. Corticosterone regulates pERK1/2 map kinase in a chronic depression model. Ann Ny Acad Sci 1148, 509-514.Chaves et al. 2013a (Review). The metabolic effects of growth hormone in adipose tissue. Endocrine 44, 293-302.- Berg et al. Biochemistry, Seventh Edition: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
- By Bubus12 - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=23399363
Chambard et al. 2007a. ERK implication in cell cycle regulation. Biochim Biophys Acta. 1773, 1299-1310.Kaplan et al. 2010a. Phosphorylation of extracellular signal-regulated kinase (ERK)-1/2 is associated with the downregulation of peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)-γ during polymicrobial sepsis. Mol Med 16, 491-497.Kim and Jang, 2014a. Phosphorylation of extracellular signal-regulated kinase (ERK)-1/2 is associated with the downregulation of peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)-γ during polymicrobial sepsis. Int. J. Mol. Sci. 15, 12149-12165, 2014.
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