成長、代謝、寿命などを制御する IGF-1: 構造、機能など
UBC/protein_gene/i/igf1
このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: IGF-I とは
- 肝臓特異的 IGF-I ノックアウト
- 筋肉における IGF-I の作用
- IGF-I と老化
- IGF-II とゲノム・インプリンティング
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概要: IGF-I とは
IGF-I は主に肝臓で合成されるペプチドホルモンで、動物 の成長を促進する作用がある。タンパク質不足により 肝臓 での合成と血中量が低下し、成長の遅延を招く (5)。これはとくに幼児でみられる栄養障害・クワシオルコル kwashiorkor の症状である。
肝臓特異的 IGF-I KO
血中 IGF-I の大部分は肝臓で合成されるが、それは実は成長にはほとんど寄与しないことが文献 1 で示されている。IGF-I の常識に反する面白い論文だったので、紹介しておく。
肝臓特異的に IGF-I をノックアウトしたマウスは、血中 IGF-I 量が 75% 低下する。しかし、図 (Ref 1) に示すように体重は低下しない。
なお、このマウスでは IGF-I による negative feedback がなくなるため、成長ホルモン 量はやや上昇する。
しかし、この肝臓特異的 IGF-I ノックアウトマウスは、成体になると体重が野生型よりも少なくなり、さらにメスは寿命 lifespan が長くなる (図、いずれも文献 2 より)。
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筋肉における作用
筋肉では IGF-I 遺伝子が発現しており、パラクラインまたはオートクラインで作用している。細胞分裂の促進、筋線維の肥大、タンパク質合成など、原則として筋肉組織を維持、肥大する方向に働く。
筋肉中には、10 ng/g 程度の量が存在する (3)。
- 筋衛星細胞 satellite cell の分裂と、筋線維への融合を促進 (1I)。タンパク質合成も促進。
> デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルマウスで筋萎縮を抑制 (1R)。
- 進行性筋ジストロフィーでは最も多い病気で、ジストロフィンの欠損による。
- ミオシン軽鎖 1/3 プロモーターで筋肉 IGF-I を 2 倍程度に増やすと、症状が改善した。具体的には筋線維数および太さの増大、線維化の抑制、収縮力の増大など。
IGF-I と老化
ヒトでは、老化に伴い血中IGF-I量が低下する (4)。インスリン量は、末梢が徐々にインスリン抵抗性になるために上昇する。
> インスリン/IGF-I シグナル (IIS) が低いと、老化は全般に遅くなる (4)。
- IIS の低下が寿命を延ばすことは多くの生物で知られている。
- C. elegans では、IIS mutants が improved thermotaxis learning behavior を示す。
- Drosophila では、chico mutant で記憶力および運動能力の低下が遅くなる。
- GHR KO mouse でも、老化に伴う記憶力の低下が遅くなる。
IGF-II とゲノム・インプリンティング
いずれ IGF-II のページを作って移動する (6)。
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References
Sjogren et al. 1999a. Liver-derived insulin-like growth factor I (IGF-I) is the principal source of IGF-I in blood but is not required for postnatal body growth in mice. PNAS 96, 7088-7092.Svensson et al. 2011a. Liver-derived IGF-I regulates mean life span in mice. PLoS One 6, e22640.Barton et al. 2002a. Muscle-specific expression of insulin-like growth factor I counters muscle decline in mdx mice. J Cell Biol 157, 137-147.Broughton & Partridge 2009a (Review). Insulin/IGF-like signalling, the central nervous system and aging. Biochem J 418, 1-12.Thissen et al. 1994a. Nutritional regulation of the insulin-likegrowth factors. Endocr Rev 15, 80-101.- By Arvid Ågren and Andrew G. Clark - <a rel="nofollow" class="external autonumber" href="http://topicpageswiki.plos.org/wiki/Selfish_Genetic_Elements">[1]</a><a rel="nofollow" class="external autonumber" href="https://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1007700">[2]</a>, CC BY 2.5, Link
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