AMPK: 細胞のエネルギーセンサーとして働くキナーゼ
protein_gene/a/ampk
11/3-2017 updated
- 概要: AMPK とは
- AMPK の構造
- AMPK の活性制御
- AMPK と脂質代謝
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概要: AMPK とは
細胞のエネルギーセンサーとして重要なセリン/スレオニンキナーゼ。シグナル伝達による制御のほか、AMP/ATP比が上がる (エネルギーとしての ATP が消費される ) ことで活性化する。
生理機能は多岐にわたるが、基本的には糖 carbohydrateや脂質 lipid を酸化し、ATP を生み出す方向に作用する。また、視床下部を刺激して食欲を増進する作用もある (3I)。
酵母から哺乳類まで存在する保存性の高い分子である (1)。
AMPK の構造
α (活性サブユニット)、β、γ (両方とも調節サブユニット) から成る三量体タンパク質である (3I))。
α サブユニットは、N末端にキナーゼドメインがあり、C末端でβ、γサブユニットと複合体を形成 する (1)。
α1, α2, β1, β2, γ1, γ2, γ3 のアイソフォームが存在する (1)。
AMPK の活性制御
AMP によるアロステリック制御
> γサブユニットには4個のCBS (cystathionine-beta-synthase) ドメインがあり、ATPまたはAMPと結合 (1)。
> AMPと結合している場合に活性化する。空腹、運動などでAMP/ATP比が上がった場合に活性化する (1)。
シグナル伝達による制御
AMPKをリン酸化するキナーゼ: LKB1、CaMKK α/β、TAK1 (TGF-β-activated kinase) が知られている (1)。
> LKB1は、Ser431がERKにリン酸化されることで核から細胞質へ移行し、MO25 (mouse protein 25) およびSTRAD (STE-20-related kinase adapter alpha)と結合してAMPKをリン酸化する (1)。
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AMPK と脂質代謝
AMPK は AMP が ATP に比べて多いとき、つまりエネルギー不足のときに活性化する分子である。したがって、AMPK は原則として
肝臓
AMPKの活性が高い状態では、脂肪酸合成経路への原料の流入が阻害される (1)。これにはいくつかのメカニズムがある。図(文献2, Abu-Elhaiga 2005a)のように、脂肪酸はアセチルCoAからACC、FASなどの作用によって合成されるが、AMPKは
- アセチルCoAからの脂肪酸合成の律速酵素 ACC をリン酸化して活性を低下させる。
- ACCによって合成されるマロニルCoAを脂肪酸合成に乗せないように、マロニルCoAカルボキシラーゼの発現を増大させる。
- 脂肪酸合成酵素 FAS の発現を低下させる。
> ACC によってアセチルCoAから作られるマロニルCoAは、β 酸化 を抑制する (1)。
- 脂肪酸は CoA と結合して acyl CoA になったあと、ミトコンドリアに運ばれて酸化される。
- ミトコンドリアマトリクスへの運搬は CPT1 が行うが、マロニル CoA はその活性を抑制する作用がある。
- したがって、AMPK が ACC をリン酸化することでマロニル CoA 量が減ると、結果的に脂質酸化も up する。
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References
浅野知一朗 2009a (Review). AMPK を介するエネルギー代謝調節. 実験医学 増刊 27 73-77. 肥満・糖尿病の病態を解明するエネルギー代謝の最前線.Abu-Elheiga 2005a. Mutant mice lacking acetyl-CoA carboxylase 1 are embryonically lethal. PNAS, 102, 12011-12016.Apfeld et al. 2004a. The AMP-activated protein kinase AAK-2 links energy levels and insulin-like signals to lifespan in C. elegans. Genes Dev 18, 3004-3009.