葉酸 Folate (ビタミン B9、ビタミン M):
構造、機能、代謝と one carbon metabolism

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: 葉酸とは
  2. 葉酸の代謝と one-carbon metabolism

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概要: 葉酸とは

葉酸 folate, foleic acid とは、図のような構造 (Public domain) をもつ水溶性の低分子である。ビタミン B9、ビタミン M とも呼ばれる。緑黄色野菜に多く含まれる (2)。

生体内で代謝されたあと、補酵素 coenzyme としてはたらく。

葉酸の構造

葉酸は DNA 合成 に関わっており、葉酸が不足すると活発な細胞分裂が阻害される。大きな影響を受けるのが 造血作用 であり、貧血や免疫機能の減衰は葉酸不足の典型的な症状である。ビタミン M はそもそも造血因子として同定された物質であった (2)。

妊娠中に葉酸が必要とされる理由も、DNA 合成と関連している。特に妊娠初期は、脳や脊髄に分化する神経管が作られる。この段階で DNA 合成が不十分になると、細胞分裂が十分に起こらず、神経管がふさがれてしまう可能性がある。これは下半身麻痺などの障害や、流産や死産の原因となる可能性もある。

構造

構造は複雑に見えるが、

が結合したものである (2)。グルタミン酸残基に、さらに 2 個または 6 個のグルタミン酸が繋がった複合体もあり、これらも同様に造血作用をもつ。

グルタミン酸。蒸気の葉酸の構造図では分子左上にあり、アミノ基で安息香酸と結合している。

グルタミン酸の構造

安息香酸。葉酸ではパラ位にアミノ基が結合しており、それを介してブテリンと結合している。

安息香酸の構造
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葉酸の代謝と one-carbon metabolism

葉酸および メチオニン を含む代謝経路を one-carbon metabolism という (2)。DNA、ヒストン などがメチル化される際に、メチル基を供与する S-アデノシルメチオニン (SAM) は、この経路の代謝産物である。

それほど一般的に使われる単語ではなく、例えば ハーパー生化学 (Amazon link) には one-carbon metabolism という見出しはない。

代謝経路の概要は以下の通り。著作権的に問題ない図を載せたが (2)、このページの図 が一番わかりやすいように思う。

One-carbon metabolism の重要ポイントは以下の通り。

  • 葉酸とメチオニンが図のようなサイクルを作り、標的物質にメチル基を転移する

  • 標的分子の機能により、生理作用が定まる。
    • DNA およびヒストンのメチル化、epigenetics。

  • 葉酸、メチオニン自身もこのサイクルから抜けて生理作用を発揮する場合もある。葉酸による DNA 合成制御などはこれにあたる。

葉酸代謝の各ステップ

葉酸に着目し、上の代謝経路を解説する。

  1. 食事から摂取された葉酸は、まず dihydrofolate reductate (DHFR) という酵素によってジヒドロ葉酸 (DHF) になる。上の図に葉酸は含まれておらず、この DHF が出発点になっている。
  2. DHFR は DHF をさらに還元 (NADPH を使って電子を供与) し、テトラヒドロ葉酸 (tetrahydrofolate, THF) を作る。DHFR の阻害剤は抗がん剤になる。
  3. セリンなどがさらにメチル基を供与し、THF は 5,10-methylene THF (5,10-mTHF) となる。
  4. 5,10-mTHF は、dUMP を dTMP に変換する。DNA 合成経路である。つまり、5,10-mTHF が DNA 合成に必須。図には書かれていないが、この反応は FADH2 依存的な酵素 thymidilate synthase という酵素に触媒され、DHF 5,10-mTHF は DHF にリサイクルされる。

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References

  1. ページ編集に伴い削除
  2. Corbin and Ruiz-Echevarria, 2016a. One-carbon metabolism in prostate cancer: The role of androgen signaling. Int J Mol Sci 17, 1208.

Corbin and Ruiz-Echevarria (2016a) is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.


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