食品添加物としてよく使われる安息香酸:
構造、機能、代謝など

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このページの最終更新日: 2024/02/14


安息香酸 benzoic acid の誘導体も含めて記載しています。内容が増えてきたらページを分割します。

  1. 概要: 安息香酸とは
    • 安息香酸の誘導体 パラベン
    • ベンズアルデヒド
  2. 安息香酸の定量法

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概要: 安息香酸とは

安息香酸 benzoic acid は、ベンゼン環にカルボキシ基 -COOH がついた構造をもつ化合物である (図, ref 4)。

PubChem では、"A fungistatic compound that is widely used as a food preservative. It is conjugated to GLYCINE in the liver and excreted as hippuric acid (2)." と書かれている。静真菌性、すなわち真菌の増殖を抑制する作用があり、食品添加物としてよく使われている。肝臓で グリシン と結合し、馬尿酸 hippuric acid として排出される。

安息香酸の構造

安息香酸の誘導体 パラベン

安息香酸のパラ位にヒドロキシ基がつき、さらにエステル化した化合物を一般に パラベン paraben という (図; wiki public domain)。Paraoxybenzoic acid の略である。


防腐剤として、食品、医薬品および化粧品に使われる。

雪肌精の成分ページ をみると、メチルパラベンが含まれている。成分表示の部分がコピペできないようになっているのが世知辛い。


ベンズアルデヒド

安息香酸の還元型であるが、酸化されやすいので、むしろベンズアルデヒドが酸化されて安息香酸になると覚える方が適切である。構造は図の通り (7) で、安息香酸の COOH がアルデヒド基 -CHO になっている。



> アリ pygidial gland の主要成分の一つが benzaldehyde であるという論文 (6)。

  • Pydifial gland はアリに特徴的な器官で、2 つの化学物質を混ぜ合わせて放出する exocrine gland である。
  • 混ぜ合わせる化学物質の種類によって、機能は多岐にわたる。Sexual attraction, trail pheromone, defensive などが挙げられている。
  • この論文では、Messor pergandei および M. andrei というアリで n-tridecane および benzaldehyde が主要成分であることを示している。

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安息香酸の定量

抽出

安息香酸は保存料として利用される食品添加物で、公定法では水蒸気蒸留で抽出し、HPLC で定量することになっている。平成 22 年に分析法が改正された (3)。

> 新旧公定法の比較検討を行った論文 (3R)。
  • 試料 5 g から、NaCl 60 g, 水 100 mL, 15% 酒石酸溶液 10 mL などを用いて水蒸気蒸留。
  • その後 HPLC で定量している。HPLC 条件は次の項目に書いておく。

HPLC

> 山上ら 2010a での分析条件などは以下のとおり(3)。
  • 水100 mLで水蒸気蒸留。0.1, 1, 2, 5, 10 ug/mL で検量線。20 uLを注入。
  • 移動相は水系で、メタノール: 水: 0.2 M リン酸バッファ = 36:59:5.
  • TSKgel ODS カラム(東ソー)、流速 1 mL/min, カラム温度 40℃、検出 230 nm。
  • ソルビン酸は7.9 min, 安息香酸は5.9 minにピークが見られた。
  • 検量用標準液の最低濃度 0.1 µg/mL を測定した時の標準偏差の3倍を検出限界とした。
  • このとき、ソルビン酸は 0.006 µg/mL, 安息香酸は0.005 µg/mLであった。
  • 100 mLの水蒸気蒸留を6回繰り返し、それぞれで定量すると回収率を求めることができる。
  • 食品によって回収率が異なる。するめいかでは回収率が低いなど。

SUMIPAX ODS カラムのカタログでは、安息香酸とヒドロキシ安息香酸の溶出時間は以下の通り (1)。条件は、移動相アセニト:水:酢酸(5:90:5), 流速 1 mL/min, 37℃, 検出 285 nm, injection 1 µg。

安息香酸

  • 27.805 min by SUMIPAX ODS A-217 column (5 µm).
  • 31.346 min by SUMIPAX ODS C-217 (5 µm).
  • 33.275 min by SUMIPAX ODS D-210SLP (3 µm).

p-ヒドロキシ安息香酸

  • 6.201 min by SUMIPAX ODS A-217 column (5 µm).
  • 6.445 min by SUMIPAX ODS C-217 (5 µm).
  • 7.670 min by SUMIPAX ODS D-210SLP (3 µm).

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References

  1. https://www.scas.co.jp/service/apparatus/pdf/P38.pdf
  2. PubChem. Web.
  3. 山上ほか 2010a. 高速液体クロマトグラフィーによる食品中のソルビン酸、安息香酸分析法について. 山梨衛環研年報, 54, 48-51.
  4. By NEUROtiker - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
  5. By Wikimuzg - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
  6. Pygidial gland chemistry and potential alarm-recruitment function in column foraging, but not solitary, Nearctic Messor harvesting ants (Hymenoptera: Formicidae: Myrmicinae). J Insect Physiol 59, 863-869.

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