生命の定義: 成長、繁殖および維持

UBC/organism/basics/organism_definition

このページの最終更新日: 2024/12/15

  1. 生命 life と生物 organism
  2. さまざまな辞書、教科書における生命の定義

広告

概要: 生命 life と生物 organism

英語で「生命」に該当する単語は life であるが、以下でまとめたような生物学の教科書では、life という言葉はあまり使われておらず、「生物 organism」を基本的に用いている。

日本語でも、単に「生物」と言った方が学問的に聞こえ、「生命」というと「生物」に少し哲学的な、生命を讃えるようなニュアンスを加えた概念である。おそらく、英語の life も同じような使われ方をしている。このページでは、生物 organism について、その定義を考える。


さまざまな辞書、教科書の定義

A Dictionary of Biology

A Dictionary of Biology. (Oxford, Amazon link) では、organism という単語は以下のように定義されている。 (1)。

An individual living system, such as an animal, plant, or microorganism, that is capable of reproduction, growth, and maintenance.


生物 organism は「生きているもの」と定義し、さらにどんな特徴があれば「生きている」と判断されるかを示している。多くの辞書・教科書はこのパターンで生物を定義しようとしている。

上の定義では、生きていることの条件として

  1. 繁殖 reproduction
  2. 成長 growth
  3. 維持 maintenance

の 3 つを挙げている。

Biology: Life on Earth

Biology: Life on Earth (Amazon) では、Organism は An individual living thing と定義されており、「生きていること」をもとに生物を定義しているのは上と同じパターン。

この教科書では、生物の特徴として以下の 6 点が挙げられている。私がこの定義をあまり好きではないのは、1 から 3 は maintenance に含まれると思うし、6 の「進化」は生命の要件ではないような気がするためだ。

  1. Acquire and use materials and energy
  2. Actively maintain organized complexity
  3. Sense and respond to stimuli
  4. Grow
  5. Reproduce
  6. Have the capacity to evolve

広告

Biology Today & Tomorrow

Biology Today & Tomorrow という教科書では、organism を Individuals that consist of one or more cells と定義しており、「生きていること」の定義を 細胞 cell に丸投げしている。

では細胞 cell の定義は何かというと Smallest unit of life; at minimum, consists of plasma membrane, cytoplasm, and DNA である (図は動物細胞の模式図、Public domain)。

動物細胞の模式図

つまり、生命は細胞から成るものであり、細胞は生命の最小のユニットと定義されている。これは論理が循環しており、あまり良い方法には思えない。

生物の特徴としては、以下の点が挙げられている。

  1. Organisms require energy and nutrients
  2. Organisms sense and respond to change
  3. Organisms grow and reproduce

OpenStax Biology 2e

OpenStax は、大学生の金銭的負担を軽減することを目的に発行されている無料の教科書シリーズである。

定義は OpenStax Biology 2e (Amazon link, 2e は second edition) からとっているが、初版の電子版は無料 なので、ぜひダウンロードして眺めてみてほしい。

OpenStax は、大学生の金銭的負担を軽減することを目的に発行されている無料の教科書シリーズである。

OpenStax Biology はその生物版で、大学初級レベルを対象としている。内容は広く浅くではあるが、分子、細胞、生理学、進化や生態学までカバーしている。しっかりした英語の教科書が無料で手に入るというのは大きなメリットだろう。とりあえずはダウンロードして眺めてみてほしい。

この教科書では、生命の要件は 8 個もある。

All living organisms share several key characteristics or functions: order, sensitivity or response to the environment, reproduction, adaptation, growth and development, regulation/homeostasis, energy processing, and evolution. When viewed together, these eight characteristics serve to define life.



広告

References

  1. Hine (2015). A Dictionary of Biology.

信頼できる定義 (情報源) を手元に持っておくことは重要である。自分の勉強にも役に立つが、外部に向けた書類を (レポート、論文、申請書など) 書く場合の効率が一段とアップする。そして、辞書は なるべく権威のあるもの の方が何かと便利である。

日本語では 岩波 生物学辞典 第5版 をお勧めしているが、英語では Oxford の辞書がよい。大学の初級あたりをターゲットにしていて、あまり難しい単語は載っていないが、英語での定義をしっかりと押さえるにはとても便利。価格帯も非常に手頃。



コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。