ハダカデバネズミ: 寿命の長い真社会性のネズミ
広告
概要: ハダカデバネズミとは
ハダカデバネズミ Heterocephalus glaber は、以下の 2 点の生物学的特徴から有名になった齧歯類である(2)。
|
|
写真は食事中のハダカデバネズミ (Public domain)。学名は「へんてこ頭の毛のないやつ」という意味らしい。(2)
分類: PubMed taxonomy (10/2015)
cellular organisms; Eukaryota; Opisthokonta; Metazoa; Eumetazoa; Bilateria; Deuterostomia; Chordata; Craniata; Vertebrata; Gnathostomata; Teleostomi; Euteleostomi; Sarcopterygii; Dipnotetrapodomorpha; Tetrapoda; Amniota; Mammalia; Theria; Eutheria; Boreoeutheria; Euarchontoglires; Glires; Rodentia; Hystricognathi; Bathyergidae; Heterocephalus
ハダカデバネズミの寿命
哺乳類の寿命は一般に体の大きさと相関し、ゾウの寿命は長く、ネズミの寿命は短い。しかし、ハダカデバネズミは体のサイズから予想されるよりも
> ハダカデバネズミのタンパク質は、酸化ストレスに強く安定性が高い (3)。
- 生化学的な老化の兆候をあまり示さないが、脂質、タンパク質、DNA には mice よりも酸化ダメージが蓄積している。したがって、酸化ダメージを受けた分子がちゃんと機能しそうなところに、長寿の秘密があるかもしれない。
- 一般的に、 タンパク質への酸化ダメージの標的は Cys である。また、酸化して高次構造が崩れ凝集というのもある。
- Results の多くは、マウスとハダカデバネズミの比較である。
- 肝臓抽出物中の システイン の酸化、ジスルフィド結合量、Cys の酸化修飾がデバ < mice で、チオール基が保護されていると思われる。総システイン量が多く、重要な Cys が酸化されるのを競合阻害しているのかもしれない。
- タンパク質表面の疎水性ポケットを蛍光ラベルする手法がある。タンパク質を尿素処理で変性させると蛍光が増大するが、その程度がmice > デバ。つまりタンパク質の尿素安定性が高い。
- タンパク質を分解するプロテアソーム系の活性は、老化とともに増大するが、ハダカデバネズミではそれほど増大しない。
- In vitro で GAPDH の活性を測定。尿素変性するとマウスでは大きく活性が低下するが、ハダカデバネズミではあまり低下しない。
- ハダカデバネズミは単に酸化ストレスを受けにくいだけでなく、変性状態でもタンパク質が機能するという点が興味深かった。
ハダカデバネズミの真社会性
ハチやアリのように、役割分担のある集団生活を送る生物は
とくに、子供を作らない階級が存在する場合に
真社会性は、昆虫ではよく認められるが、哺乳類では非常に珍しい。これまでに、ハダカデバネズミとダマラランドデバネズミ Fukomys damarensis の 2 種でしか報告されていない。
ハダカデバネズミその他
> ハダカデバネズミ脳アトラスの論文 (1)。
- 大脳皮質の厚さから、マウスと比べた場合に somatosensory が visual よりも発達している可能性が指摘されている。生活スタイルを考えると適応的。
広告
References
Seki et al., 2013a. Multidimensional MRI-CT atlas of the naked mole-rat brain (Heterocephalus glaber). Front Neuroanat 7, 45.- Amazon link:
吉田、岡ノ谷 2008a. ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 岩波科学ライブラリー. Perez et al., 2009a. Protein stability and resistance to oxidative stress are determinants of longevity in the longest-living rodent, naked mole-rat. Proc Natl Acad Sci 106, 3059-3064.
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。