脳抽出物の定量 H-NMR
experiments/nmr/qhnmr_brain_extract
6-13-2017 updated
- 概要
- 1H-NMR spectrum
- 抽出方法
- 内部標準
- トラブルシューティング
- ダブルピーク、pH の影響
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概要
このページでは、脳に含まれる代謝産物を 1H-NMR または 1H magnetic resonance spectroscopy (MRS) で定量する方法について解説する。
定量 1H-NMR のページ にもあるように、1H-NMR を用いた代謝産物の定量は、以下のような利点と欠点をもっている (2)。
利点
- 1H は、最も NMR 感受性の高い原子核である。これは、gyromagnetic ratio においても、natural abundance (99.9% 以上) においても言えることである。
- ほとんどの代謝産物は H を含んでいる。
欠点
- 水 water の巨大なピークが現れてしまうため、water suppression が必要となる。
- 同様に、脂質 lipid やタンパク質 protein などのピークと代謝産物のピークが重なることが多い。これは、ケミカルシフト の範囲が約 5 ppm と狭いためでもある。
- 以上のことと関係して、的確なシム shim による磁場の均一性が非常に重要である。
このように多くの難点をもちながらも、1H NMR では
1H-NMR spectrum
以下は、典型的なラット rat 脳の 1H-NMR spectrum である。ケミカルシフト値は、total creatine の値を 3.03 ppm として補正してある。
内部標準
NAA, クレアチンおよび 水 が in vivo MRS の内部標準として提唱されている (2)。ただし、NAA の濃度は病気で低下するし、また水の量は voxel に CSF が含まれると大きく変わるので注意が必要である。
31P NMR では、total phosphate pool が一定であるとして標準化する方法もある (2)。
トラブルシューティング
ダブルピーク、pH の影響
ピークが割れる現象 (ダブルピーク) の原因は、大体の場合 shim が不十分なためであるが、緩衝液が古かったりして pH が合っていない場合にも見られることがある。経験上、両性イオンであるグルタミン酸 や GABA のピークが割れやすい傾向にあるように思う。
赤が pH 調整前、青が pH 調整後。周波数の微調整はしていないが、2.3 ppm 付近のグルタミン酸の 3 つのピークが割れているほか、パターンの違いが顕著である。
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References
Govindaraju et al. 2000a. Proton NMR chemical shifts and coupling constants for brain metabolites. NMR Biomed 13, 129-153.de Graaf 2007a. In viso NMR Spectroscopy.