制限酵素によるベクター構築

UBC/experiments/dna/vector_restriction_enzyme_fill_in

このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: fill-in とは
  2. NEB Quick blunting kit を使う方法
    • Vector の blunting
    • Insert の blunting
  3. T4 DNA polymerase のプロトコール

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概要

Fill-in とは発現ベクター構築の際に使われるテクニックの一つで、付着末端 cohesive end の制限酵素 restriction enzyme で切った DNA 断片を「埋めて (fill-in して)」平滑末端にすること。通常は、そのまま平滑末端ライゲーション ligation に進む。

平滑化することを blunting と言い、こっちの方が良い表現かもしれない。Blunting は fill-in のほかに突出している部分 overhang を削って平滑化することも含めた表現である。

NEB Quick Blunting kit を使う方法

注意書きが詳しく参考になる (2)。ここでは作業の流れを述べるので、実際のプロトコールは使用している試薬のものを参照のこと。

このキットでは blunting enzyme mix を使って平滑化を行う。Enzyme mix には、3' → 5' exonuclease 活性と 5' → 3' polymerase 活性をもつ T4 DNA polymerase のほか、平滑化された DNA の 5' 末端をリン酸化するための T4 polynucleotide kinase が含まれている。


Vector の Blunting

  1. 環状ベクターを制限酵素で処理する。
  2. この溶液は、そのまま Blunting に利用できる。Blunt enzyme mix は、制限酵素のバッファーでも活性を示す。詳細は NEB サイトを参照。
  3. このあと、セルフライゲーションを防ぐためにホスファターゼ処理をする。しかし、その前にカラム、フェノール処理/エタノール沈殿、アガロースゲル電気泳動などでベクターを精製しなければならない。
  4. ホスファターゼ処理後に ligation を行う。Blunt end ligation は、室温で overnight を推奨している。

Insert の blunting

PCR 産物は脱リン酸化されているので、blunting 処理が必要である。たとえ、KAPAのような平滑末端で増幅する酵素を使った場合にも。DNA のリン酸化、脱リン酸化については核酸 nucleic acid のページを参照。

  • PCR 産物は、blunting の前に市販のキット、フェノール処理/エタノール沈殿またはゲル電気泳動によって精製する必要がある。
  • 制限酵素で処理された DNA は、精製せずに直接 blunting に用いることができる。

T4 DNA polymerase のプロトコール

酵素を別々に使う方法も。シンプルな NEB のプロトコール (1)。

  1. DNA を 100 µM dNTP を含む 1 x reaction buffer 中に準備。
  2. 1 µg DNA あたり 1 ユニットの T4 DNA polymerase を加える。
  3. 12 °C、15 分インキュベート。
  4. EDTA を終濃度 10 mM で加え、かつ 72 °Cで 20 分間処理することで反応を止める。

注意点
  • 高温での反応、過剰な酵素、dNTP の不足、長い反応時間はいずれも 3'→5' exonuclease 活性の原因になるので避ける。
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References

  1. Protocol for blunting ends by 3’ overhang removal and 3’ recessed (5’ overhang) end fill-in using T4 DNA Polymerase (M203). Link.
  2. Protocol for the Quick Blunting Kit. Link.