白内障のリスクをあげる単糖 ガラクトース:
構造、代謝など

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このページの最終更新日: 2024/05/07

  1. 概要: ガラクトースとは
  2. ガラクトースの代謝
    • Galactosemia: ガラクトースの代謝障害
  3. ガラクトースが白内障を引き起こすメカニズム

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概要: ガラクトースとは

ガラクトース galactose は図のような構造 (1) の単糖 monosaccharide である。グルコースの異性体で、C4 位の -OH の位置のみがグルコースと異なっている。

ガラクトースにはグルコースと同程度の甘味があり、それらは スクロース の約 30% である。2 種の直鎖状構造、五員環および六員環の 4 つの構造異性体がある。




ガラクトースの構造



グルコースの構造


ガラクトースは、下に示すようにラクトースの構成成分として乳製品に多く含まれるが、以下のような食品にも含まれている。

  • マメ類 legumes
  • 穀物
  • 野菜

参考: ラクトース

β-グルコース と β1,4-グリコシド結合することで、二糖である乳糖 lactose を構成する (2)。参考に、ガラクトースおよびグルコースから成るラクトースの構造も示しておく。



ガラクトースの代謝

Leloir pathway

ガラクトースは、肝臓で glucose-6-phosphate に変換され、解糖系で分解される。この経路を Leloir 経路 といい、4 つの酵素が関わる (図; 7)



Galactosemia: ガラクトースの代謝障害

ガラクトース代謝の障害は galactosemia と呼ばれ、galactose 1-phosphate uridyl transferase (GALT) 活性が低いことによる障害がもっとも多くみられる (2)。Leloir 経路の 3 番目の酵素である。ただし、乳糖を分解できない lactose intolerance ほどには一般的でない。

Galactosemia は遺伝性であり、

  • ミルクを飲むと嘔吐や下痢をする
  • 肝臓の肥大や黄疸 jaundice
  • 白内障 cataract
  • 精神遅滞

などが主な症状である。

血液 blood のガラクトース濃度は 0.58 - 11.7 µM (平均 2.72 µM) で、健常者の値 0.38 - 1.48 µM に比べ著しく高い (3)。ガラクトースを含まない食事をとっても、体内でガラクトースの合成が 0.53 - 1.05 mg/kg/h 程度起こるので、結局ガラクトースが体に蓄積することになる (3)。

GALT の活性が十分でないため、このガラクトースは aldose reductase という 酵素 で分解され、ガラクチトール galactitol と galactose-1-phosphate が生じる (3)。Plasma galactitol は、健常者では検出されないが、galactosemia の患者では 9.28 - 15.9 µM と高い。ガラクチトールは白内障の原因になる。


> ガラクトースが マウス の卵子の質を低下させることを示した論文 (3)。
  • 細胞を galactosemia 患者の血中レベルに近い濃度のガラクトース代謝産物に浸している。Galactose 2 µM, galactitol 11 µM, galactose-1-phosphase 0.1 mM.
  • ガラクトースおよびその代謝産物が活性酸素 ROS を発生させ、アポトーシス誘導、紡錘体形成の阻害などを引き起こす。L-galactose でこれらはみられないので、浸透圧が原因ではない。
  • ガラクトースが ROS を発生させるメカニズムは調べていないが、解糖系 酵素の阻害が議論されている。

ガラクトースが白内障を引き起こすメカニズム

直鎖状ガラクトースのアルデヒド基 -(C=O)H は、酵素 aldose reductase によって -CH2OH に還元される (2)。この物質が ガラクチトール galactitol である。水晶体 lens に存在する galactitol は、浸透圧のために水を誘引し、これが白内障の原因となる。

Galactitol は galactosemia の患者でより早く蓄積する。また、milk を多く摂取すると白内障のリスクが上がる ことが Berg のBiochemistry で指摘されている。

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References

  1. By Wickey-nl - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
  2. 訳: 清水 2015a. イラストレイテッド ハーパー生化学.

ストライヤー生化学に比べるとかなり生物学的な教科書で、個人的にはこちらの方がわかりやすい。タンパク質の構造やエネルギー論などに深入りすることなく、タンパク質、糖、脂質などの代謝の概要を知りたいという人向け。化学ではなく医学、といってもいいかもしれない。

初版から 75 年という歴史をもち、常に改訂が加えられている。新しい版になるほど臨床に関連した記述が増え、また章末の問題が充実してきている。



  1. 果糖の代謝. Link: Last access 2018/04/15.
  2. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  3. Ahern et al. 2017. Biochemistry Free For All.
  4. Sridhar et al. 1999a. Elucidation of enzymes in fermentation pathways used by Clostridium thermosuccinogenes growing on inulin. Appl Environ Microbiol 66, 246-251.
  5. By Ed (Edgar181) - Own work, Public Domain, Link