コドン: RNA 配列とアミノ酸を対応づけるルール

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2018/10/09 更新

  1. 概要: コドンとは
    • なぜコドンは縮重しているのか?
    • 同義置換と非同義置換
  2. 開始コドン
  3. 終止コドン
  4. コドンを解読した実験
    • ホモポリマーの実験
    • リボソーム結合 tRNA の実験

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概要: コドンとは

mRNA は、以下の規則に従って アミノ酸 に翻訳される (2)。

  1. 3 つの塩基が 1 つのアミノ酸をコードする。塩基は AUGC の 4 種類であり、可能な組み合わせは 4 x 4 x 4 = 64 通りである。しかし、タンパク質を構成するアミノ酸は 20 種類なので、複数の組み合わせが同じアミノ酸をコードすることになる。これを、コドンが 縮重 degenerate しているという。とくに 3 番目の塩基が縮重していることが多い。
  2. コードは原則として重ならない。たとえば ATTCAAGTA という配列があり、最初のコードが ATT であった場合、次の読み枠は CAA、その次は GTA である。3 塩基ずれるということ。ただし、バクテリアや ミトコンドリア DNA では頻繁に重複がある。
  3. 句読点のような塩基はない。開始コドン、終止コドンが句読点にあたるとも言えるが。

下の表は真核生物のコドン表 (1) である。原核生物やミトコンドリアでは違った暗号が使われるなど、現在ではさまざまなコドン表が作られている。それらは NCBI のサイト でまとめられている。


なぜコドンは縮重しているのか?

コドンの 3 番目の塩基は tRNA の 1 番目の塩基とペアを形成する。この部位では、他の部位に比べてミスマッチが許容されやすい (3)。そのため、ここでコドンが縮重しているのは、ミスマッチが起きてもアミノ酸が置換されないための防御機構であると考えられる。

また、コドンが縮重していることにより、突然変異の影響を少なくすることができることも一般的なメリットであると考えられる。


同義置換と非同義置換

同じアミノ酸をコードするコドンを 同義である synonymus という。塩基の置換のうち、コードされるアミノ酸が変わらないような置換を 同義置換 synonymous substitution, そうでない置換を 非同義置換 non-synonymous substitution という。両者の比は、遺伝子の進化を考察する上で重要なデータとなる (参考: 同義置換/非同義置換率のページ)。


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開始コドン

開始コドンは常にメチオニン methionine をコードする。このコドンが mRNA 中で発見されるメカニズムは、翻訳の読み枠を決める上で非常に重要である。以下のように、真核生物と原核生物で大きな違いがある。

真核生物

真核生物 eukaryote の場合は、1 つの mRNA が 1 つの遺伝子をコードしている (モノシストロン性) ので、翻訳の開始は比較的単純である。すなわち、mRNA の 5' 末端に近い AUG が開始コドンとして認識される


原核生物

原核生物 prokaryote では、mRNA が複数の遺伝子を含む (ポリシストロン性)。したがって、翻訳の開始点となる AUG が 1 つの mRNA 中に複数存在する。

原核生物の mRNA では Shine-Dalgarno 配列 が開始メチオニンの上流に存在し、これが翻訳開始の合図になる。

タンパク質の N 末端に存在するメチオニンは、ホルミル基 (formyl group; 官能基の一覧) で修飾された formylmethionine (fMet) である (2)。


終止コドン

終止コドンの存在は知っていても、何が終止コドンに結合するのか 知らない人が多いのではないだろうか。終止コドンには tRNA でなく release factor というタンパク質が結合する。


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コドンを解読した実験

基本的な知識として、コドンの暗号がどのように解読されたかを示しておこう。

かつて、遺伝物質は DNA であるかタンパク質であるかという論争があった。メセルソンの実験や、1953 年に DNA 構造が発表された二重らせん構造が半保存的複製を良く説明することなどから、DNA が遺伝物質であることが広く認められるようになった。しかし、DNA の情報がどのようにタンパク質に伝えられるかが明らかになるまでには、さらに 10 年の歳月が必要であった (3)。

ホモポリマーの実験

Nirenberg と Matthaei らによって 1961 年に発表された実験で、UUU が フェニルアラニン を、CCC が プロリン をコードすることを明らかにした。実験は以下のような手順で行われた (3)。

  1. 鋳型を必要とせずに RNA 鎖を合成する polynucleotide phosphorylase を使い、 UUUUUU... というホモポリマー鎖を合成。
  2. このホモポリマーを 20 本の試験管に分ける。それぞれの試験管には、タンパク質を構成する 20 種類のアミノ酸が入っているが、うち 1 個だけが放射性同位体でラベルされている。
  3. タンパク質を合成した後、遊離アミノ酸を取り除く。
  4. UUU にコードされるアミノ酸だけがタンパク質に取り込まれる。つまり、20 本の試験管のうち 1 本だけが放射性となる。
  5. UUU の場合、Phe の試験管のみが放射性を示した。

ランダム・コポリマーの実験

続いて Nirenberg らは ランダム・コポリマーの実験 でその他のコドンの解読を試みた (3)。この実験には手法的な問題点があり、実際にコドンの解読に大きく貢献したのは次のリボソーム結合 tRNA 実験である。

ここでは、歴史的観点からランダム・コポリマーの実験についても概要を示しておく。この実験からはコドンの配列はわからず、含まれる塩基の割合のみが導かれる。

  1. A と C を例に説明する。A と C を混合して 3 塩基のランダム・コポリマーを合成すると、以下の 8 種類が合成され得る: AAA, AAC, ACC, ACA, CAA, CAC, CCA, CCC.
  2. 混合する A と C の割合を変えることで、合成されるコポリマーの割合をコントロールできる。たとえば A : C = 1 : 4 で混合すると、13%のポリマーが C x 2, A x 1 の割合となる。つまり ACC, CAC, CCA のいずれかである。
  3. これを用いてホモポリマーと同様に放射性ラベルの取り込み実験を行う。得られる結果から、ACC, CAC, CCA のいずれかにコードされるアミノ酸を決定できる。

この実験の問題点は、2 番の取り込みがランダムとは限らないこと、またコドンが縮重しているために結果の解釈が非常に難しいことである。


リボソーム結合 tRNA の実験

この実験は、3 塩基の short mRNA でも tRNA とリボソームに結合することを利用している (3)。

  1. GUU などの 3 塩基の RNA を合成し、全ての tRNA (アミノ酸と結合しているもの) およびリボソームと混合する。
  2. 溶液をろ過すると、その RNA に結合した tRNA のみが残る。
  3. この tRNA が、どのアミノ酸と結合するかをチェックする。

この実験も、やはり Nirenberg らによって行われている (3)。50 種類以上のコドンが本実験によって決定された。


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References

  1. Public domain, Link to Wikimedia.
  2. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  3. Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。