内部標準遺伝子: 主にリアルタイム PCR の内部標準について

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2018/05/03 更新


  1. 概要: 内部標準とは
    • 絶対定量と相対定量
    • 内部標準遺伝子の条件
  2. よく使われる内部標準遺伝子
  3. 内部標準遺伝子を選ぶためのソフトウェア

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概要: 内部標準とは

絶対定量と相対定量

RNA 定量実験では、一般に細胞や組織から RNA を抽出し、リアルタイム PCR などの実験により mRNA の量を測定する。mRNA の絶対量を算出する 絶対定量 absolute quantification と、特定の遺伝子に対する相対量で表す 相対定量 relative quantification がある。

内部標準遺伝子 internal control gene とは、相対定量において興味のある遺伝子 (標的遺伝子 target gene) 量の標準化に使われる遺伝子のことである。

絶対定量と相対定量には、以下のような違いがある。

  • 最初の組織量や RNA の抽出量が異なると、絶対定量では mRNA 量が大きくばらついてしまう。また、脂肪組織などそもそも mRNA の総量が違う組織での議論が難しい。
  • 相対定量ではこの心配はないが、内部標準遺伝子の mRNA 量が本当に均一であるのかという問題が生じる。

どちらが優れた方法というわけではなく、そのデータを使って何を言いたいのかをよく考え、定量法を決定すべきである。


内部標準遺伝子の条件

理想的な内部標準遺伝子は、以下のような条件を満たす。もちろん、実際にこんな遺伝子はないが、なるべく近い条件の遺伝子を使うことが望ましい (2)。

  1. 各組織で RNA 量が等しい。とくに、組織間で標的遺伝子の mRNA 量を比較したい場合に重要。
  2. 刺激の前後で RNA 量が変化しない。刺激を与える実験で。
  3. 標的遺伝子と RNA 量が近い。これを考えると、 RNA 量が著しく多い rRNA は内部標準には向かないことになる。

1 に関しては、Ct 値がだいたい同じぐらいであることだけでも示しておくと、余計なクレームを避けることができるかもしれない。

このページでは、それぞれの内部標準遺伝子の特徴などについても書いているが、ベストの方法は、実験ごとに変動の少ない遺伝子を探し、かつ複数の内部標準を使うこと である。マイクロアレイや次世代シークエンシングのデータも参考になる。

よく使われる内部標準遺伝子

遺伝子名 説明
18S rRNA

RNA 量が著しく多いので、定量のための内部標準には向かない。

β-actin

たぶん最も多く使われている内部標準だろう。

GAPDH

解糖系 の遺伝子であり、当然変動する。なぜこれが内部標準に使われるのかよくわからないが、おそらく「量が一定」ではなく「どの細胞でも発現している」という理由から使われ始め、なんとなく内部標準のような雰囲気になってしまったのではないかと考えている。

RPL18

Ribosomal protein L18。

EIF

Eukaryotic translation 17 initiation factor 5A。

EF1α

Elongation factor 1 α。

Tubulin

α-tubuliln。


内部標準遺伝子を選ぶためのソフトウェア

geNorm は Ref 1 に基づいて作られた有名なソフトウェア。


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References

  1. Vandesompele et al. 2002a. Accurate normalization of real-time quantitative RT-PCR data by geometric averaging of multiple internal control genes. Genome Biol, 3, 0034.
  2. Zhang & Hun 2007a. Development and validation of endogenous reference genes for expression profiling of medaka (Oryzias latipes) exposed to endocrine disrupting chemicals by quantitative real-time RT-PCR. Toxicol Sci 95, 356-368.