GAPDH: GAPをリン酸化しNADHを作る解糖系第6の酵素

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: GAPDH とは
  2. GAPDH の発現制御
  3. GAPDH のアイソフォーム
  4. 内部標準遺伝子としての GAPDH

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概要: GAPDH とは

グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ (Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase, GAPDH, G3PDH) とは、解糖系の 6 番目の反応を触媒する酵素である。

解糖系 6 番目の反応

この反応は 2 段階で、解糖系で唯一 NADH を生じる反応 である。NADH酸化的リン酸化 に使われるエネルギー的に重要な分子である。

高いリン酸基転移ポテンシャルをもつ 1,3-ビスホスホググリセリン酸が生じる。これは次の反応 7 で ADP に Pi を付加し、ATP を産生することができる。

  • これはつまり、GAPDH によるリン酸化が分子にかなりのエネルギーを与えているということ。
  • 実際、2 番目の反応はかなりの uphill reaction である。
  • これは、GAPDH が高エネルギーのチオエステル結合を含む中間体になることによって成される。

NAD+ が常に供給されないとこの反応は進まない。嫌忌的条件下での乳酸発酵およびアルコール発酵は、NAD+ を再生するための反応である。

GAPDH の発現制御

少なくとも以下の分子・タンパク質が GAPDH の転写を制御することが知られている。

インスリン

GAPDH 遺伝子上流には Insulin response elements (IRE) があり、insulin はこれを通じて GAPDH の転写を活性化する (2)。

GAPDH は がん 細胞で高発現しており、Akt と結合してアポトーシスを抑制してしまう作用があるようである (2)。

HIF-1

低酸素誘導因子 HIF-1 によって hypoxia response element (HRE) を通じて転写誘導される (2)。

p53

p53 によって mRNA およびタンパク質量が増える (2)。

一酸化窒素
NO

マウス の血管上皮細胞では、GAPDH mRNA が THF-α や IFN-γ で増えるが、これが NO 合成酵素の阻害剤でブロックされる (2)。つまり NO が GAPDH を転写誘導していると思われる。


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GAPDH のアイソフォーム

GAPDH には少なくとも 5 つの分子種がある。上記の反応は、EC.1.2.1.12 G3PDH (phosphorylating) によるものである。

内部標準遺伝子としての GAPDH

推奨しないという IDT のページ。

References

  1. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.

Berg, Tymoczko, Stryer の編集による生化学の教科書。 巻末の index 以外で約 1000 ページ。

正統派の教科書という感じで、基礎的な知識がややトップダウン的に網羅されている。その反面、個々の現象や分子に対して生理的な意義があまり述べられておらず、構造に偏っていて化学的要素が強い。この点、イラストレイテッド ハーパー・生化学 30版 の方が生物学寄りな印象がある。

英語圏ならば学部教育向けにはややレベルが高い印象。しかし、基本を外さずに専門分野以外のことを 研究レベルで 英語で読みたいという日本人には非常に適しているだろう。輪読とかにも向いているかもしれない。翻訳版はストライヤー生化学として売られている。


  1. Zhang et al. 2015a (Review). Critical protein GAPDH and its regulatory mechanisms in cancer cells. Cancer Biol Med 12, 10-22.

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