ヒスチジンの構造、機能、代謝:
イミダゾイル基・酵素の活性中心

aa_carbo_lipid/aa/his
2018/07/26 更新

  1. 概要: ヒスチジンとは
    • ヒスチジンの共鳴構造
    • ヒスチジンは芳香族アミノ酸か?
  2. ヒスチジンの特徴
  3. ヒスチジンの生合成および欠乏症
  4. ヒスチジンの分解

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概要: His とは

ヒスチジン His は図のような イミダゾール基 imidazole group をもつアミノ酸である。


  • pK1 (COOH) = 1.8
  • pK2 (NH3+) = 9.3
  • pK3 (側鎖) = 6.0
  • 必須アミノ酸
  • 赤の数字は炭素番号で、His のそれは非常に特殊である (5)。アミノ酸の炭素番号 のページを参照のこと。

岩波 理化学辞典 (Amazon) より、物理化学的性状など。

  • L 体は柱状結晶、融点277度 (分解)。
  • 強塩基性で、酸と反応して塩をつくる。
  • ジアゾベンゼンスルホン酸 or 臭素水で赤色を呈する。
  • 腐敗により ヒスタミン histamine を生ずる。

ヒスチジンは ヘモグロビン、スツリンなどに多く含まれていて、それらの加水分解で得られ、また合成もされる。1896 年に Albrecht Kossel および Sven Hedin によって独立に発見された。


ヒスチジンの共鳴構造

ヒスチジンのイミダゾール基には、2 個の 窒素原子 が含まれている。直鎖状部分に結合している炭素の隣にあるものと、間に 1 個炭素を挟んでいるものである。

上の図では、直鎖状部分に近い N に水素が結合しているが、これは下の図 (Ref 4) のような 共鳴状態 にある。したがって、どちらの N に H をつけて書いても問題ない。

さらに、このページの下で解説しているように、両方とも H と結合して NH および NH+ になることができ、これがヒスチジンの性質上とても重要である。



ヒスチジンは芳香族アミノ酸か?

Oxford Dictionary of Biology には芳香族アミノ酸 aromatic amino acid という項目はないが、シキミ酸経路の項目で "aromatic aminos - tyrosine, phenylalanine, and tryptophan -" という表現があり、ヒスチジンは含まれていない (3)。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 30版 (Amazon link) にはアミノ酸の一覧の表があり、His は「芳香族環を側鎖にもつアミノ酸」に含まれている。


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ヒスチジンの特徴

ヒスチジンの性質は、側鎖にあるイミダゾール基の性質に由来することが多い。上の図には書いていないが、H と結合していない方の N には非共有電子対があり、ここにプロトンや金属イオンが配位結合することができる。このことから、ヒスチジンは以下のような特徴をもつ。


金属イオンと配位結合する

ヒスチジンと金属イオンの相互作用は、1948 年に初めて観察された (2)。

酸にも塩基にもなる: His が酵素の活性中心にある理由

ヒスチジンに含まれるイミダゾール基は H+ を受け取って 2 個の NH をもつ形になることができる。重要なことに、この反応の pKa は約 6.0 であるため (1)、タンパク質中の His は 生理的 pH 条件下で水素原子を着脱できる という特徴をもっている。

「H+ を放出するのが酸、受け取るのが塩基」という 酸・塩基の定義 によると、His は生理的 pH (pH 7 前後) で酸にも塩基にもなれるアミノ酸であるということになる。

また、H+ を受け取るとヒスチジンは正電荷を帯びることから「ヒスチジンは約 pH 6 以下で正電荷を帯びる」と表現することもできる。

この特徴は、酵素 enzyme による触媒反応を考えたときに極めて重要である。

酵素が触媒する多くの反応で、H+ の放出や吸収が起こる。したがって、H+ を簡単に供給したり受け取ったりできる物質が反応部位の近くにあることが望ましい。His はこの目的に適ったアミノ酸であり、多くの酵素が活性部位に His をもっている。


ヒスチジンの生合成および欠乏症

ヒスチジンの生合成は、プリンおよびピリミジンと同様に phosphoribosyl pyrophosphate (PRPP) を起点とする。さらに 10 以上の反応を介する複雑な経路である。

ヒスチジンはヒスタミンの原料であるため、欠乏すると免疫反応に障害が起きる恐れがある。湿疹がみられることが多い。


His の分解

His は直接 Glu に変換されるタイプである (1)。


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References

  1. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.
  2. 生化夜話 第33回:観察から実用化まで40年 - Hisタグ. Link.
  3. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  4. By Calvero. - Selfmade with ChemDraw., パブリック・ドメイン, Link
  5. IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature, 1984a. Nomenclature and Symbolism for Amino Acids and Peptides. Eur. J. Biochem. 138. 9-37. Link: Last access 2018/07/25.