ユビキチン-プロテアソーム系による細胞内制御機構

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. ユビキチン-プロテアソーム系 (UPS) とは
  2. UPS による細胞内制御機構
    • NFκB 経路の活性化
    • 細胞周期におけるUSBの関与
    • HIF-1αの分解

このページは keito0628 様に執筆頂いた依頼記事です。


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ユビキチン-プロテアソーム系 (UPS) とは

ユビキチン-プロテアソーム系 (UPD) はタンパク質に付加されたユビキチン鎖をプロテアソームが認識し、ATP依存的に迅速かつ不可逆的に標的タンパク質を分解するシステムのこと。

ユビキチン (Ub) は76個のアミノ酸残基からなり、酵母からヒトまで普遍的に保存されている約8.5kDタンパク質である。

標的タンパク質へのUb付加反応はE1 (活性化酵素)、E2 (結合酵素)、E3 (ユビキチンリガーゼ) によって行われる。



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UPS による細胞内制御機構

ユビキチン-プロテアソーム系は不要タンパク質の分解、抗原提示、細胞周期調節など重要な役割を果たしており、この系の異常はがんや感染症などの発症に関与すると考えられている。ここでは、代表的なユビキチン-プロテアソーム系の役割を紹介する。


Nuclear factor κB (NF-κB) 経路の活性化

転写因子NF-κBは炎症関連遺伝子の活性化に関わるタンパク質で、そのアミノ酸配列中に核移行シグナル (NLS:nuclear localization signal) を有している。通常、inhibitor ofκB (IκB) によってNLSが覆われているので、細胞質に保持されている。炎症性刺激、酸化ストレス等の刺激細胞内に入るとIκBのリン酸化が生じ、IκBはUPSを介した分解を受ける。IκBが外れてフリーになったNF-κBは核内移行した後にDNAとの相互作用により転写を開始する。


細胞周期におけるUSBの関与

細胞周期の回転にはサイクリンとサイクリン依存性キナーゼ (CDK:cyclin dependent kinase) の複合体が重要な役割を担っている。細胞周期の回転はG1→S→G2→M期の順番に進行し、この進行はチェックポイントによって制御されている。

そしてチェックポイントの制御はUPSの働きによって調節されている。例えば、G1→Sの進行にはサイクリンE/CDK2が関係している。G1期はサイクリンEの発現量が増加し細胞周期を進めるが、S期に入るとサイクリンEはリン酸化を受けUSPによって分解をされる。

また、CDKキナーゼ活性を阻害して細胞周期を負に制御するCDKインヒビター (p21、p27) もUPSによって分解されることで発現量の制御を受けるものが多くサイクリン-CDKと協調して細胞周期の進行やチェックポイント機構の制御に重要な役割を担っている。


HIF-1αの分解

転写因子である低酸素誘導因子HIF (hypoxia inducible factor-1α) は低酸素状態において誘導されるタンパク質である。正常酸素状態ではHIF-1αはプロリン残基が水酸化を受け、UPSによって分解へと導かれ、量を調節している。HIF-1αは誘導型一酸化窒素合成酵素iNOS (inducible NO synthase) や血管内皮増殖因子VEGF (vascular endothelial growth factor) 等の転写促進に関与している。


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