TOR と mTOR:
機能、下流シグナル、栄養および寿命との関係など
UBC/protein_gene/t/tor
このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: TOR とは
- TOR の下流シグナル
- TOR と寿命
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概要: TOR とは
TOR は target of rapamycin の略であり、rapamycin によって活性が阻害されることから同定されたセリン/スレオニンキナーゼを TOR という。哺乳類の TOR を、とくに mTOR (mammalian target of rapamycin) という。また、TOR を含む複合体は TOR complex の略で mTORC1, mTORC2 のように呼ばれる。
mTOR は PI3K-related kinase family に属するセリン/スレオニンキナーゼである。
Rapamycin は最初にその抗菌活性を指標に発見されたが、のちに T 細胞の分裂を抑制する作用があることが明らかになった (5,6)。Rapamycin には以下のような活性があることが知られている。
- アンチエイジング、寿命の延長
- G1/S cell cycle arrest
- オートファジー
- 翻訳の抑制
したがって、これらは TOR を通じて制御されている生命現象であるとも言える。
mTORC1 および mTORC2 は機能が異なっており、mTORC1 はタンパク質および脂質の合成、リボソームの合成、リソソームの合成などを促進する。mTORC1 は rapamycin によって強く阻害される。
mTORC2 の rapamycin sensitivity は、細胞の種類によって異なる。胸腺、腎臓、胃などの mTORC2 は rapamycin で全く阻害されない (7)。
TOR の下流シグナル
以下のような分子が TOR によって制御されることが知られている。
S6K |
Protein kinase A, G および C を含む AGC キナーゼファミリーに属し、S6 ribosomal protein をリン酸化する。このリン酸化によって、リボソームの合成が促進される。TOR がタンパク質合成を促進する主要な経路の一つ。 |
4EBP1 |
|
TSC1/2 |
Tuberous sclerosis complex 1/2 の略。 |
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TOR と寿命
酵母
> TOR シグナルが低下すると、カロリー制限と同様に発酵から呼吸への代謝シフトが起こる(2)。
> TOR1 の変異による長寿は、sch9 の不活性化による(4R)。
- TOR1 mutant と、TOR1/Sch9 double mutant は寿命が変わらない。
- Sch9 が TOR 経路の直接の標的であることとよく一致する。
> TOR1, Sch9, Ras2 による寿命制御は、どれもキナーゼ Rim15 を介する(4D)。
- Rim15 は、ストレス応答性遺伝子を転写する転写因子 Msn2/4, Gis1 を正に制御する。
>TOR1, Sch9, Ras2 の変異体は、どれも TCA回路などミトコンドリア遺伝子の発現が低い (4R)。
- 解糖、発酵に関連する遺伝子の発現は増大。糖新生は変わらず。マイクロアレイ。
- グリセロール合成系の遺伝子の発現も増大。
- ただし、TOR1 mutant ではミトコンドリアの呼吸が増大しているという報告もある。
線虫
> Knockdown of LET-363/CeTOR in adult life more than doubled the life span of worm (4I).
> Similarly, a reduced activity of Daf-15 promotes life span extension (4I).Daf-15 is the worm ortholog of the mammalian mTOR-interacting protein raptor.
> CeTOR のノックダウンとカロリー制限の寿命延長効果は重ならない(4I)。
ショウジョウバエ
> Overexpression of DN-dTOR or TOR-inhibitory dTsc1/2 proteins leads to longevity (4I).
> Rapamycin を食べさせても寿命が延長する (3)。
マウス
> Rapamycin 投与で、マウスの寿命が 9-14% 延長する (1)。
- ただし、インスリン抵抗性や血糖値の上昇を引き起こし、2 型糖尿病のリスクも上がる。
- Rapamycin は薬としても使われるが、認可されている量は寿命延長に必要な量の 1/10 以下である。
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References
Lamming et al. 2012a . Rapamycin-induced insulin resistance is mediated by mTORC2 loss and uncoupled from longevity. Science 335, 1638-1643.Kaeberlein 2010a . Lesson on longevity from budding yeasts. Nature 464, 513-519.Bjedov et al. (2010). Mechanisms of life span extension by rapamycin in the fruit fly Drosophila melanogaster. Cell Metab. 11, 35–46.Wei et al. 2009a . Tor1/Sch9-regulated carbon source substitution is as effective as calorie restriction in life span extension. PLoS Genet 5, e1000467.Dumont et al. 1990a . Distinct mechanisms of suppression of murine T cell activation the related macrolides FK-506 and rapamycin. J Immunol 144, 251-258.Martel et al. 1977a . Inhibition of the immune response by rapamycin, a new antifungal antibiotic/ Can J Physiol Pharmacol 55, 48-51.Schreiber et al. 2015a . Rapamycin-mediated mTORC2 inhibition is determined by the relative expression of FK506-binding proteins. Aggeing Cell 14, 265-273.
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