モノカルボン酸トランスポーター MCT

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2018/05/18 更新

  1. 脳の MCTs : 分子による分類
  2. 脳の MCTs : 細胞による分類
  3. てんかん epilepsy との関係
  4. 腸の MCTs

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脳における MCT の分布: 分子による分類

モノカルボン酸トランスポーター (MCTs) は 12 回膜貫通型の 1 価カルボン酸 (-COOH をもつ酸) を輸送するタンパク質である。以下は MCT1 の構造である (3)。


脳には少なくとも以下の 3 種類の MCT が存在する (1)。なお、MCT3 は choroid plexus epithelial cells, retinal epithelial cells で発現しており、乳酸との解離定数は約 6 mM である。


MCT1

MCT1 はユビキタスに分布するが、主に血液脳関門 BBB の上皮細胞で発現が認められる (Rat, mouse, ヒト)。乳酸との解離定数 Km は約 4 mM で、MCT2, MCT4 の中間程度である。

> 分布については諸説ある (2)。

: Lee et al. は、上皮細胞で MCT1 を検出できないとしている。
: ミトコンドリアに存在するかどうかについても controversial である。
: Oligodendrocytes や ミエリン鞘 での発現も報告された。



MCT2

MCT2 の発現は、神経細胞 neuron の cell body, dendrites, dendritic spineds, and axons で認められる (2)。神経細胞の代謝は基本的に oxidative であるため、乳酸を細胞内に輸送していると考えられる。乳酸との Km は 1 mM 以下であり、脳の乳酸濃度 を考えると、生理的条件下でしばしば飽和していると考えられる (2)。

その分布には種間差が大きい (1,2)。ラットでは、免疫染色によって perivascular endfeet, postsynaptic densities に発現している。

MCT4

MCT4 は low-affinity high-capacity transporter で、主にアストロサイト astrocyte で発現する (1,2)。Plasma membrane, perivascular endfoot の両方で発現が確認されている。MCT4 は乳酸との Km が約 30 mM と高いため、通常は飽和せず、乳酸濃度が高くなるほど輸送量も増えるという特徴をもっている (2)。


脳における MCTs の分布: 細胞による分類

細胞の種類ごとにまとめます。内容的には、上のアイソフォームによる分類と重複する部分もあります。

神経細胞 Neuron

> 神経細胞の主要な MCT は MCT2 である (2)。以下の場所で発現が強いことがわかっている。

: Postsynaptic membranes of glutamatergic synapses on spines of Purkinje cells in cerebellum.
: Pyramidal cells in the hippocampus.

> AMPA type glutamate receptor GluR2/3 と共局在する (2)。

: 乳酸受容体である HCAR1 とも共局在する。



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てんかん epilepsy との関係

てんかん Epilepsy のタイプの一つである medial temporal lobe epilepsy (MTLE) の患者や、てんかんの動物モデルでは、BBB 上皮細胞における MCT1 の発現が低下している (1)。動物モデルでは 70-80% も低下。神経細胞の数が低下した結果であると考えられているが、血管上皮の変化を神経細胞数低下の原因と見る報告もある。

Microvessel での MCT1, MCT2 の発現も低下する (1)。

腸の MCTs

ポリフェノール polyphenol に血管障害のリスクを減らす作用があることは、現在広く知られるようになっている。野菜、穀類、果実などから数百種類のポリフェノールが同定されており (4)、フラボノイド fravonoid とフェノール酸 phenylic acid が最も多い成分である。

調で発現している MCT1 は、たとえば次のようなポリフェノールに吸収に関わることが明らかにされている (4)。

フェノール酸の一例であるサリチル酸 salicylic acid (6)。アスピリン(アセチルサリチル酸)の関連化合物である。IUPAC 名は 2-hydroxybenzoic acid で、日本語では 2-ヒドロキシ安息香酸または オルト-ヒドロキシ安息香酸。



フラボノイドの一種であるアントシアニン anthocyanin の構造 (5)。R1 - R7 には H, OH など様々な官能基が入る。


フェノール酸およびその類縁体については、以下のようなことが明らかにされている (4)。

  1. MCT1 はモノカルボキシル基 -COOH を認識する。
  2. ベンゼン環周辺は疎水性が高い方が親和性が高く、水酸基の増加に伴って親和性が低下。
  3. とくに、メタ位の水酸基の悪影響が大きい。
  4. ベンゼン環と -COOH の間に炭素鎖が入っても、親和性には影響を及ぼさない。

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References

  1. Lauritzen et al. 2015a (Review) Monocarboxylate transporters in temporal lobe epilepsy: roles of lactate and ketogenic diet. Brain Struct Funct 220, 1-12.
  2. Bergersen 2015a (Review). Lactate transport and signaling in the brain: potential therapeutic targets and roles in body-brain interaction. J Cereb Blood Flow Metab 35, 176-185.
  3. Uhernik et al. 2014a. Regulation of monocarboxylic acid transporter-1 by cAMP dependent vesicular trafficking in brain microvascular endothelial cells. PLoS ONE 9, e85957.
  4. 小西 2006 (Review). フェノール酸の吸収機構とその生理的意義. 化学と生物 44, 532-538.
  5. By Calvero. - Selfmade with ChemDraw., パブリック・ドメイン, Link
  6. By Image:Aspirin-skeletal.svg originally by Benjah-bmm27 and Booyabazooka, edited by Fvasconcellos - Image:Aspirin-skeletal.svg, パブリック・ドメイン, Link