レプチン受容体

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: レプチン受容体とは
    • ヒトのレプチン受容体
    • ラットのレプチン受容体
    • マウスのレプチン受容体
  2. レプチン受容体の変異に関する association study

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概要: レプチン受容体とは

食欲、代謝 metabolism などを制御するホルモンであるレプチン leptin は、細胞膜上にあるレプチン受容体 leptin receptor への結合を通じてその作用を発揮する。

レプチン受容体は 1 回膜貫通型の受容体で、class I cytokine receptor である glycoprotein 130 (gp130) に似る (3I) ため、gp130 family の受容体として分類されている。

レプチン受容体b は Janus kinase シグナルを活性化する(5)。

  • この受容体は視床下部 hypothalamus で主に発現している。
  • 視床下部で活性化すると alpha-melanocyte-stimulating hormone が分泌される。
  • このホルモンは type 4 melanocortin receptor を活性化し、食欲を減衰させエネルギー消費を増やす。

ヒトのレプチン受容体

ヒトのレプチン受容体遺伝子 LEPR は、染色体 1p31 に座乗し (1I)、20 のエクソンから成る。選択的スプライシングにより、少なくとも 6 種類の mRNA を作る (6)。

5 つのアイソフォーム a, b, c, d, e が存在することが報告されている (5)。

1, 2 番目のエクソンを共有する leptin receptor overlapping transcript (LEPROT) および leptin receptor overlapping transcript-like protein 1 (LEPROTL1) があり、染色体上でタンデムに並んでいる。これらは マウス など哺乳類のほか両生類、鳥類、魚類にも存在し、原則として染色体上に並んで位置している。Leptin receptor gene-related protein (LERGRP) と呼ばれたこともあるが、同じ遺伝子である。成長ホルモン やレプチン受容体の細胞膜局在を制御し、これらのホルモンへの感受性をコントロールすると考えられている (9D)。

視床下部 hypothalamus で mRNA 量が多く、pituitary, lung, gonad, liver でも発現がみられる (7)。


ラットのレプチン受容体

> 894 残基の short form と 1162 残基の long form がある (3R)。

  • C 末端側が異なる。選択的スプライシング。
  • 細胞内には、JAK-STAT 系にシグナルを伝える Box 1 および Box 2 があるが、short は Box 1 のみ。
  • さらに、膜貫通ドメインをもたない 805 残基の Ob-Re もある。

肥満モデル Zucker rat では、806 番目の A が C に変異しており、Gln269Pro の置換をもたらしている(3R)。

Long isoform (RT-PCR)(3R):

  • 脂肪組織、肺、脳 (視床下部、大脳皮質、小脳)、小腸、腎臓、精巣、脾臓。
  • 胃と肝臓では少ない。心臓ではバンドが見えない。
  • OB-Re (without transmembrane domain) (RT-PCR)(3R)も Long isoform とほぼ同じパターン。

Short isoform (RT-PCR)(3R):

  • 脂肪組織、肺、脳 (視床下部、大脳皮質、小脳)、小腸、腎臓、精巣、脾臓。
  • 胃、肝臓、心臓でも long isoform よりも発現が多そう。

マウスのレプチン受容体

Knockdown するとレプチンシグナルが増強され、肥満 を抑制する (8)。


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レプチン受容体の変異に関する association study

これまでに、Q223R, K109R, K656N の三つの非同義置換と肥満 obesity との関係が調べられている(2I)。個々の解析では相関があるとする報告もあるが、2002, 2005および2011年に発表された meta-analysis では相関が証明されなかった(2R, 2D)。

これらのことから、LEPR の変異は単独でヒトの肥満の原因となるには不十分で、肥満は他の要因との複合的作用であろうと考えられている(1D)。

2011年に発表された meta-analysis では相関なし(2R)。

  • 2002年および2005年の systemic review でも、有意な相関はなかった。
  • ただし、BMI cut-off > 25 としている報告ではQ223R と BMI の相関があった。意義は不明。
  • なお民族との相関はあり、とくにアジア人で Q223R, K109R の置換が多い。台湾の原住民は例外。

40歳以上の女性において、K109RおよびQ223Rを同時にもつ場合にBMIが高いとした報告がある(4)。

  • 40歳以上の男性、40歳未満の女性では差がなく、40歳未満の男性は対象に含まれていない。
  • この2つの多型は、日本人で報告されている多型のうち比較的変異が多いものである。

40歳以上の女性において、K109RおよびQ223Rを同時にもつ場合にBMIが高いとした報告がある(4)。

  • 40歳以上の男性、40歳未満の女性では差がなく、40歳未満の男性は対象に含まれていない。
  • この2つの多型は、日本人で報告されている多型のうち比較的変異が多いものである。

Q223R の変異があると Leptin との結合性が低下し、レプチン抵抗性を引き起こす(1I)。

  • Q223Rとコレステロールおよびトリアシルグリセロール代謝異常との関連が多く報告されている。
  • 家族性 hyperlipidemia(高コレステロール、TAG、apoB)との相関がある(1I)。
  • 肥満との相関はないが、肥満したヒトの試験群の中で高血中TAGと相関していた(1R)。
  • 痩せたヒトの試験群でも、RRの遺伝子型は高コレステロールと相関していた(1R)。

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References

  1. Becer et al. 2013a. Association of leptin receptor gene Q223R polymorphism on lipid profiles in comparison study between obese and non-obese subjects. Gene 529, 16-20.
  2. Bender et al. 2011a. Association between variants of leptin receptor gene (LEPR) and overweight: a systematic review and an analysis of the CoLaus study. PLoS One 6, e26157.
  3. Takaya et al. 1996a. Molecular cloning of rat leptin receptor isoform complementary DNAs - identification of a missense mutation in Zucker fatty (fa/fa) rats. BBRC 225, 75-83, 1996.
  4. 近藤ら 2012b. レプチン受容体遺伝子多型Lys109Arg 及び Gln223Arg と肥満の関連. 名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報, 5, 33-38.
  5. Adamczak & Wiecek. 2013a (Review). The adipose tissue as an endocrine organ. Semin Nephrol 33, 2-13.
  6. Zabeau et al. 2003a (Review). The ins and outs of leptin receptor activation. FEBS Lett 546, 45-50.
  7. Bergen et al. 2002a. Identification of leptin receptors in lung and isolated fetal type II cells. Am J Respir Cell Mol Biol 27, 71-77.
  8. Couturier et al. 2007a. Silencing of OB-RGRP in mouse hypothalamic arcuate nucleus increases leptin receptor signaling and prevents diet-induced obesity. PNAS 104, 19476-19481.
  9. Wu et al. 2013a. Increased Expression of Fibroblast Growth Factor 21 (FGF21) during Chronic Undernutrition Causes Growth Hormone Insensitivity in Chondrocytes by Inducing Leptin Receptor Overlapping Transcript (LEPROT) and Leptin Receptor Overlapping Transcript-like 1 (LEPROTL1) Expression. J Biol Chem 288, 27375-27383.

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