ハンチントン病: 不随意運動と認知症を主症状とする遺伝病
UBC/other_topics/immunology/huntington
このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: ハンチントン病とは
- 原因遺伝子 huntingtin
- PolyQ の何が問題なのか
- ハンチントン病の治療
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概要: ハンチントン病とは
ハンチントン病 Huntington disease は、筋肉の不随意運動、精神遅滞などを主な症状とする遺伝病である (1I)。常染色体優性遺伝病に分類される。筋肉の不随意運動が踊っているようにも見えることから、かつてはハンチントン舞踏病 Huntington chorea とも呼ばれていた。
Youtube.com に、不随意運動の 動画 がある。
原因遺伝子 huntingtin
原因遺伝子は huntingtin (HTT; -ton でなく -tin) で、この遺伝子中の CAG という 繰り返し配列 の回数が多いと発症することが知られている (1I)。35 回以上の繰り返しが発症の目安である (1I)。発症する年齢はリピート配列の長さ相関しており、長いほど発症が早い。
CAG 配列は グルタミン をコードする (Gln, Q)。つまり HTT タンパク質 にポリグルタミンが付加されることになる。これにより脳で HTT タンパクが凝集することが問題のようだ。
このメカニズムから、ハンチントン病は polyQ disease とも呼ばれる。ただし、ハンチントン病の他にも polyQ disease はあるので、この呼び方は正確ではない。
PolyQ の何が問題なのか
> PolyQ disease に関する総説 (4)。モデル構築論文への comment のようだ。
- 少なくとも 9 種類の neurodegenerative disease が、CAG repeat expansion に起因している。
- PolyQ expansion in androgen receptor は、spinal bulbar muscular atrophy という病気の原因となる。
- 大きいタンパク質への polyQ 導入は、凝集と病態に十分であるという結果が animal model で出ていたが、最近ではタンパク質の種類、状態が重要と考えられている。
- たとえば、Ser421 or Ser13 and 16 のリン酸化は、ハンチントン病の polyQ の影響を abrogate する。この他にも、リン酸化が polyQ の影響と関係する例がたくさん載っている。
- リン酸化などの翻訳語修飾は、タンパク質の conformation を変えて機能を制御するが、conformation は平衡状態にある。PolyQ はこの平衡をずらすことによって、ときに gain-of-function 変異となる、というのが結論。
- したがって、リン酸化とは相互に影響し、タンパク質の機能が失われるような変異を polyQ とともに付与すると、表現系が出ないこともある。
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ハンチントン病の治療
マウス のモデルでは RNAi による変異 HTT のノックダウンが効果的であるとする報告がある (3)。しかし、ノックダウン後にも微量の変異 HTT は検出されるため、ゲノム編集による治療が注目されるようになっている。
> CRISPR/Cas9 でハンチントン病に関係する変異を編集したという論文 (1R)。
- プロモーター、転写開始点、CAG repeat を含む 44 kb を除去。
- 変異 HTT タンパク質が見られなくなった。
除去するだけでなく、フレームシフトを引き起こして変異 HTT を無害化する試みもある (2)。
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References
Shin et al. 2016a. Permanent inactivation of Huntington’s disease mutation by personalized allele-specific CRISPR/Cas9. Hum Mol Genet, published online.Im et al. 2016a (Review). Applications of CRISPR/Cas9 for gene editing in hereditary movement disorders. J Mov Disord 9, 136-143.Harper et al. 2005a. RNA interference improves motor and neuropathological abnormalities in a Huntington’s disease mouse model. PNAS 102, 5820–5825.Kratter and Finkbeiner, 2010a (Review). PolyQ disease: too many Qs, too much function? Neuron 67, 897-899.