大学の講義: 講義で使える小技 tips

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 講義資料
    • スライド
    • 講義と試験内容の関係
  2. テスト
  3. レポート
  4. アクティブラーニング
  5. Informal learning
  6. バイオ系ラボに関するメモ

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講義資料

スライド

基本的には、パワーポイントのみよりも handout と組み合わせ、学生に作業をさせながら講義を進める方が学習効率が高いと思う。

スライドを印刷して渡すのは微妙。写真のように、ちょっと見せるだけのスライドもあり、紙の無駄のような気もする。スライドはウェブにアップロードする方が良いと思う。

アップロードを意識すると、スライドは学会スライドとちょっと違った作りになる。私は学会発表でのスライドはシンプルにわかりやすくするのが好みで、文字がぎっしり詰まったスライドは好きではない。しかし、配布する講義用のスライドでは、言葉の定義などは辞書の文章を丸ごと載せておくのが良いように、資料としての側面も意識する必要がある。


講義と試験内容との関係

講義で「重要」と強調したポイントを忘れずに試験に出せるように、講義後にメモっておくことが重要。試験を作るのは数週間後なので、そうしないと何を強調したか忘れてしまうことがある。

テスト

テストは、採点基準が問題になったときなどに備え、採点後にスキャンまたはコピーをして手元に保存しておくようにしている。ホチキスでとめてしまうよりも、クリップの方が便利である。

受講人数が多いときは、マークシートにしてしまって問題用紙を回収しないというのが一番楽だろう。多くの大学で、マークシートの自動採点機があるはずである。

コンピューターモニターでの選択問題も、可能なら考慮すべき。採点が非常に楽になる。


Open book test

難しめの小テストを用意して open book test にする。学生は、少なくともその間だけは真剣に教科書を読む。似た問題を closed book の本テストに出すことで、重要性を理解させることができる。


小テスト (Quiz) を効果的に使う

クイズの配点を低くして、類題を本試験で出す。学生の出来が悪いときに有効。少なくとも「この課目は、ちゃんと勉強すれば点がとれる」というモチベーションを生み出すことができる。


一部のテストのみを成績に利用

学期を通して 4 回テストをして、成績が良い方から 3 つで成績をつけるなど。テストを受けられなかった学生が「追試をしてくれ」と言ってくるのを退けるのに有効。

なお、これは教員にとって頭の痛い問題の一つ。単にテストをさぼったなら強気で断ることができるが、病院の診断書とかを持ってこられると追試を考えざるを得ない。このような対応も教員の義務のうちなのかもしれないが、事実上の無償労働であり、なるべくなら追試をせずに事態を収拾したい。


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レポート

レポートの詳細な添削は、教員側のコストが大きすぎるので基本やらない。レポートの目的を「レポートの書き方の習得」としないのが現実的か (4)。

2 回のレポート課題を通して、2 段階で言いたいことを伝える。つまり 1 回めのレポートで問題点を指摘し、それらが解決されているかどうかを 2 回目のレポートの採点基準とする。

アクティブラーニング系

Group presentations

学生を数人のグループに分け、テーマを作って発表してもらう。テーマについてはよく勉強するはずなので、学習効果は高いはず。

> ダーウィン進化論を教えるときに Lamarck と比較するべきか検討した論文 (1R)。
  • 12-14 歳の生徒 416 人を対象に、2 通りの教え方を比較している。
  • 一般には、対立する理論と比べながら教える方が良いとされているが、反例もある。
  • この論文では、教師の適切なガイダンスがあった場合に、比較する方法が有効という結論。

インフォーマルラーニング系

博物館に行くなどの行動は informal learning と呼ばれ、科学への関心を保つのに有効な方法と考えられている (2I)。博物館の science program への参加は、知識や science motivation を得るのに有効であることを示した論文がある (2R)。


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バイオ系ラボでの実験に関するメモ

バイオ系のラボで使えそうな実験のメモです。とりあえずこのページに置いておきますが、内容が増えてきたら独立したページを作ります。

以下のような基本的なコンセプトに基づき、身近な題材を使った実験などを取り入れています。

レベルは大学の初級または高校・中学への出張授業ぐらいです。

  • 20 人程度までのクラスを想定。グループではなく、一人一人が手を動かして実験できるようにする。見ているだけの学生をなるべく作らない。
  • コストは抑える。専用のキットを買うよりも、身近な題材で賄うように。たぶん、そっちの方が初級クラスでは理解度が上がるはず。
  • さらに、研究に貢献できるような結果が得られるように実験をデザインできればベスト。

具体的には、次のような実験です。いくつかの項目は、リンク先に説明があります。

  1. 20 人のクラスでクローニングをする場合、1 人 1 kb とすれば脊椎動物の ミトコンドリア DNA の全長を決められる。
  2. 制限酵素 に関する実験。Plasmid をカットすることで DNA のサイズマーカーが作れる。実際に pUC19 を MspI (HpaII) で切ったものは Thermofisher から 販売されている (3)。1 万円ぐらいするので、実験で大量に作れればかなり得だろう。
  3. 遺伝子組み換え食品の PCR 検出。Bio-Rad で教育用のキットがある。

  4. プロテアーゼ活性の実験。パイナップルの粗抽出液には ブロメライン という安定なプロテアーゼが大量に含まれている。パイナップルアレルギーの人もいるので、キウイフルーツのプロテアーゼの方がいいかもしれない。
  5. メイラード反応 の実験。リンク先にあるようなミルクの加熱でもいいが、これは経験上かなり時間がかかった。糖とアミノ酸をエッペンの中で高濃度で混ぜて、ウォーターバスで加熱する方が良い。フルクトースを使えば 30 分ぐらいで色がつき、匂いの違いも検出できる。
  6. 牛乳を TLC して、硫酸ベースの発色薬で検出する。ラクトースが大量に検出できる。

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References

  1. Donnelly et al. Enhancing student explanations of evolution: comparing elaborating and competing theory prompts. J Res Sci Teach, publined online.
  2. Martin et al. The role of museum-based science education program in promoting content knowledge and science motivation. J Res Sci Teach, publined online.
  3. pUC19 DNA/MspI (HpaII) Marker, ready-to-use. Link: Last access 8/22/2017.
  4. なぜ大学教員の端くれたる私はレポートを返さないのか. 発生練習. Link: Last access 5/4/2018.

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