ボトルネック効果: 定義、実例、影響など

UBC/other_topics/genetics/population_bottleneck

このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. ボトルネック効果とは
  2. トバ・カタストロフ理論: 人類のボトルネック効果
  3. ボトルネック効果を経験している生物種

広告

ボトルネック効果とは

瓶の首のように 個体群の大部分が死滅すること で生じる遺伝子型頻度の偏りを ボトルネック効果 bottleneck effect という (図; ref. 4)。

ボトルネック効果

関連ページとして、遺伝的浮動 genetic drift、 集団遺伝学関係の用語集Hardy-Weinberg の法則 も参照のこと。

トバ・カタストロフ理論: 人類のボトルネック効果

人類の歴史においても、いくつかボトルネック効果を示すような大規模な人口減少があったと考えられている。有名なものは、1998 年に Ambrose によって提唱された トバ・カタストロフ理論 Toba catastrophe theory である。

これは、インドネシアのスマトラ島にあるトバ火山 (図は Public domain) が 74,000 年ほど前に噴火して寒冷化を引き起こし、それによって多くの Homo 属が絶滅したとする説である。

トバ・カタストロフ理論

現生人類である Homo sapiens も、人口 1 万人以下まで減少したと推定されている。このため、現生人類の遺伝的多様性は、その人口から推定されるよりも低く留まっている。

> 石器の文化が連続しているため、インド・ダバ周辺の集団は生き延びた可能性 (6)。

トバ・カタストロフを生き延びた人々の石器文化

衣服に寄生するコロモジラミと、毛髪に寄生するアタマジラミの種分化がおよそ 7 万年前であったことから、トバ火山の噴火が衣類の起源になったとする学説もある。

ボトルネック効果を経験している生物種

ヒト 以外にも、ボトルネック効果のために遺伝的多様性が低い種がいくつか知られている。

  • アメリカナマズ のゲノム解析から、この魚が氷河期に何度かボトルネックを経験していると考察した論文がある。詳細はリンク先を参照。
  • チーターは、現生種としては最古の大型猫である (5)。洪積世後期、数千年の間に北アメリカおよびヨーロッパに生息する哺乳類の 75% が死亡する大絶滅があったが、それを生き延びた種である。

広告

コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。

References

  1. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  2. Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
  3. Amazon の紹介: 江島 (2009). これだけは知っておきたい図解ジェネティクス.

遺伝学 genetics は、メンデル遺伝から膨大な量の DNA 配列の解析までを含む「古くて新しい学問」である。

この本は、遺伝学の重要ポイントを 60 の質問にまとめ、それに答える形で解説している。高度なコンセプトも非常にわかりやすく解説されている 大変おすすめ の参考書。いくつか質問の例を挙げておく。

  • かつてタンパク質が遺伝物質だと考えられていた理由は
  • 劣性遺伝病の遺伝子はやがて消え去るのか
  • 系統樹の作成法はなぜそんなに多いのか
  • 細胞に多数存在するミトコンドリアは均一なのか
  • Ensembl と Entrez はどこが違うのか

  1. By TedE, CC BY-SA 3.0, Link
  2. チータについて. Link: Last access 2023/01/29.
  3. Clarkson et al. 2020a. Human occupation of northern India spans the Toba super-eruption ~74,000 years ago. Nat Commun 11, 961.