メンデルの遺伝の法則とは:
優性、分離、独立などを簡単に

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: メンデルの業績
    • 実験に使われた形質
  2. Monohybrid cross 実験
  3. Dihybrid cross 実験
  4. メンデルはなぜ連鎖に気づかなかったのか

  5. メンデルの法則の拡張

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概要: メンデルの業績

メンデルの法則は 1865 年に発表された。子供が親の特徴を引き継ぐことはこの時代にも広く知られていたが、これを実験によって明確な法則として記述したのがメンデルの業績である。

メンデルの業績は、一般に 2 つの実験と 3 つの法則 で説明される。実験は monohybrid cross および dihybrid cross であり、法則は優性、分離および独立である。

メンデルは、論文の中で「優性、分離、独立の法則」を明記したわけではない。これらの法則は、後世の人がメンデルの実験結果をわかりやすくまとめたものである (4)。そこで、このページでは実験によって項目を分けることにした。まず実験に使われた形質を概観し、monohybrid cross へ進もう。


実験に使われた形質

実験の設定、下準備が非常によく考えられていた。Mendel はエンドウマメ Pisum sativum の以下の 7 つの形質を調べたが、予備実験で variation の出ない形質を 選んだと考えられる (1)。

  1. 豆の色 seed color: 黄色または緑色
  2. 豆の形 seed shape: 丸型 round またはシワ型 wrinkled
  3. 豆の皮の色 seed coat color: 灰色または白
  4. さやの色 pod color: 黄色または緑色
  5. さやの形 pod shape: Infrated or constricted
  6. 花の位置 flower position: 茎の横に咲くか、茎の先端で咲くか
  7. 茎の長さ stem length: 背が高いか低いか

また、掛け合わせを開始する前に 2 世代自家受精で飼育し、親と子が同じ形質を示すことを確認している (1)。これは、各遺伝子座がホモになっているということである。これが以下の交配実験の前提になっている。


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Monohybrid cross 実験

掛け合わせの実験は monohybrid crosses から始められた。これは、一つの形質だけが異なる P 世代を選んで掛け合わせる実験である。

F1 世代では自家受精を行い、F2 世代の形質を調べた。P 世代が丸型 vs. シワ型の場合、F1 世代は全て丸型、F2 世代では丸型 : シワ型 = 3 : 1 となった。この monohybrid cross 実験は、7 つの全ての形質に対して行われた。

図 (ref 3) は丸型、シワ型ではなく white と red で書かれているが、同じことを示している図なので参考にしてほしい。



この実験から、3 つの重要な結論が導かれた。

  1. 全て丸型の F1 世代も、目には見えないがシワ型の遺伝情報をもっている。Mendel は、「エンドウマメは 2 種類の遺伝情報を有している」と結論した。現在でいう allele である。
    • さらに、allele には dominant および recessive の概念がある。現在では、一般に dominant allele を大文字、recessive allele を小文字で Aa, AA, aa のように表す。ヘテロでも表現型が現れる遺伝子を 優性 dominant、ホモでないと表現型が現れない遺伝子を 劣性 resessive という。
  2. 配偶子が形成される際に allele は分離する。つまり、生物は 2 つの allele をもっているが、そのうち 1 つだけが配偶子に入る。
  3. 2 つの allele は等しい確率で gamate に入る。これが 3 : 1 になる理由である。

2 を メンデルの分離の法則 Mendel's first law, principle of segregation という。ポイントは遺伝子が粒子状であること。それまでは、どちらかというと遺伝形質は液状で、混ざり合ってしまうと考えられていた。これでは、表現系がいったん隠れて F2 世代で現れてくる現象を説明できない。

さらに、1 の小項目で説明されたような「優性 dominant と劣性 recessive の存在」を メンデルの優性の法則 principle of dominance という。


ただし、メンデルは彼の実験結果をこのような形で記述したわけではない (5)。これらの法則は後世の解釈によるものである。


>「分離の法則」という言葉には混乱がある。その歴史についての秀逸な解説 (5)。

  • 形質が 3 : 1 に「分離する」のが分離の法則であるという説 (A とする) と、配偶子が形成される際に allele が「分離する」のが分離の法則であるという説 (B とする)。
  • 教科書によって記述が異なっているが、B が正しく、A は誤解である。
  • 「生物学辞典」 第1版 (1960) 岩波書店、「基礎遺伝学」 黒田行昭著 (1995) 裳華房、「生物学辞典」 (2010) 東京化学同人 など、有名な教科書でも A とする間違いが見受けられる。
  • 昔の遺伝学の専門書では全て B で記述されており、どこかで誤解が生じ、それが辞書や教科書に載ってしまったために広まったものと考察。
  • 元のサイトにはたくさん情報があるので、興味のある人は文献 5 をご覧下さい。

Dihybrid cross 実験

次に、2 つの形質が異なる株 同士を交配させる dihybrid cross 実験が行われた (2)。



図では、体色と尾の長さが異なる猫を掛け合わせた実験の結果を示している。短い尻尾 S と茶色い体毛 B が優性であるため、F1 世代は全て同じ表現型を示す。

F2 世代では、表現型が 9 : 3 : 3 : 1 の割合で現われ、これは 2 つの形質が独立して次世代に伝わる と考えると説明できる。

これを、メンデルの独立の法則 Mendel's second law, principle of independent assortment という。


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メンデルはなぜ連鎖に気づかなかったのか

この項目は これだけは知っておきたい 図解 ジェネティクスの第 3 章を参考にした。

メンデルの独立の法則には、連鎖 という例外がある。つまり、メンデルが選んだ 7 つの形質の原因遺伝子が 染色体 上で近傍に存在するなら、それらは独立して遺伝しない。実際に、7 つの形質の原因遺伝子には連鎖しているものもあったようである (4)。

メンデルが連鎖に気づかなかった理由は、メンデルは 7 つの形質の全部の組み合わせを試したわけではなく、4 通りの組み合わせについて dihybrid cross 実験を行なったのみであった ことである。

上記の表現がわかりにくい場合に備え、箇条書き形式で詳しく書いておく。

  • メンデルが着目した 7 つの形質を A, B, C, D, E, F, G とする。Dihybrid cross では、このうち 2 つの形質に着目する。そのパターンは、総当たりなので全部で 21 通りである (A と B, A と C, A と D....)。
  • たとえば形質 A と B の原因遺伝子が染色体上で近くにある場合、それらの形質は独立して遺伝せず、表現型は 9 : 3 : 3 : 1 にならない。
  • メンデルは 4 通りのパターンしか試さなかったが、それらの遺伝子はたまたま連鎖していなかった。

References

  1. Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
  2. By Original uploader was Tocharianne at en.wikipedia - Transferred from en.wikipedia, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3572144
  3. By Benutzer:Magnus Manske - http://de.wikipedia.org/wiki/Datei:Mendelian_inheritance_3_1.png, Public Domain, Link
  4. Amazon link: これだけは知っておきたい 図解 ジェネティクス: 参考書のページ にレビューがあります。
  5. 誰が分離の法則を間違えたか? Link: Last access 2019/12/27.

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