デフォルトモードネットワーク

other_topics/brain/netwerk_default_mode
9-25-2017 updated

  1. 概要: DMN とは
  2. DMN に関係する領域
  3. DMN の機能

広告

概要: DMN とは

脳内で、安静時 resting state において複数の領域が同調した作用を示すことが fMRI などを中心とした解析によって明らかにされ、これはネットワークと呼ばれる (also see connectivity)。

デフォルトモードネットワーク default mode network とは、そのような脳内のネットワークの一つである (2)。その他、以下のような resting state network が知られている (2)。

  • Working memory network: frontal-parietal network (FPN), executive network などとも呼ばれるが、非常に共通性が高い (2)。
  • Dorsal attensiona network
  • Saliency network

発見の経緯

様々な賦活試験で脳の血流を測定する際に、賦活試験の種類に関わらず、同じような部位の血流が減少することが明らかになり、ワシントン大学の Raichle が deactivation として報告した (3)。のち、この部位が アルツハイマー病 による障害を受けやすいことが明らかになった。

DMN に関係する領域

Medial prefrontal cortex (mPFC) や cingulate gyrus を中心とし、以下の領域が関わる (2)

: 後部帯状回/楔前部 (PCC/Precuneus)、下部頭頂葉 (IPL)、外側側頭葉 (Lateral Temporal Cortex). : 海馬体 (Hippocampal Formation, HF)

ネットワーク全般に対して言えることだが、重要なのはこれらの領域が それぞれ固有の機能をもつとともに、DMN の一因としての機能をもっている ことである (2)。

領域 単独の機能 DMN の一員としての機能
PFC エピソード記憶の検索、将来の出来事の期待、計画や展望記憶、課題準備、課題セットの生成と維持、自己や他者に関する情報処理、社会的情報の処理など (2) 記憶に基づいて自己に関係した心的シミュレーションを行うサブシステム (2)
Lateral temporal cortex 過去の記憶や先行する経験に基づいてシミュレーションの材料を提供するサブシステム (2)
PCC エピソード記憶の検索、視空間的イメージ (2) mPFC, LTC の情報を統合する (2)

DMN の機能

DMN は、1990 年代後半に課題遂行中よりも resting state で活動の高い領域として発見された (2)。

> 高次の認知機能を必要とする課題を遂行するときには、活動が低下する必要がある (2)。

: Working memory 課題を実施しているときは、working memory network と負の相関がみられる。
: このことから、task-positive, task-negative network という概念もある。
: 低下の程度は課題に依存する。どのような課題においても低下するわけではない。
: 脳内に一定のリソースがあり、その大部分が課題遂行に使われたとき、DMN の活性が低下する。

> DMN と working memory network (WMN) は、場合によっては協調して働く (2)。

: 問題解決のシミュレーションなど、両者が同調して活性化する例がいくつか挙げられている。


広告

コメント欄

References


References

  1. ベアーほか 2007a. 神経科学 脳の探求. 西村書店

イラスト、コラムが充実した神経科学の本。生化学の教科書に例えるなら、雰囲気としてはヴォートよりもハーパーの生化学に近い。

ニューロン、グリア、活動電位といった神経科学の基本から、精神疾患やシナプス際構築など、かなり specific な話題にまで展開している。動物の行動実験についても例がたくさん載っているが、あくまで神経科学に関係する範囲で扱われており、実験方法の詳細が載っているわけではない。

また、付録としてヒトの脳の詳しい図が載っているのも役に立つ。よく見る地図だけでなく、血管の分布や様々な断面が載っていて、構造を理解しやすい。


  1. 越野ら 2013a (Review). デフォルトモードネットワークの機能的異質性. 生理心理学と精神生理学 31, 27-40.
  2. 福山 2010a (Review). 脳機能の解析方法. 認知神経科学 12, 149-155。

参考図書