アリから発見された毒素 ギ酸: 構造、機能、代謝など
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2018/07/29 更新
- 概要: ギ酸とは
- NMR 標準物質としてのギ酸
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概要: ギ酸とは
ギ酸 formic acid は図のような構造 (3) のカルボン酸である。アリから発見されたためにこの名がつけられている。
HCOOH という構造の最も単純な 脂肪酸 である。
岩波 理化学辞典 (Amazon) に記載されている基本的性状は以下の通り。
- 無色の液体で、融点 8.4°C、沸点 100.8°C、比重 1.22 (20°C)。分子量 46.03。
- アリやハチなどの毒腺中に存在するほか、種々の植物、とくにイラクサ、マツ、モミの葉などに存在する。刺激臭があり、皮膚に触れると水疱を生ずる。
- 水、アルコールと任意の割合で混ざる。
- pKa = 3.55 のかなり強い酸である。
NMR 標準物質としてのギ酸
ギ酸は、1H NMR において他の代謝産物と重ならない 8.44 ppm 付近に singlet のピークを与えるため、外部標準として使われる。
> 内在のギ酸の影響を少なくするため、高濃度で外部標準として用いるのが望ましい。
- ヒト血液中には低濃度のギ酸が存在する。濃度は 0.302 ± 0.151 mM (n = 8, Ref 2)。
- 文献 1 では 0 - 5 mM。十分に高くはないように思われる。
- 文献 2 では 15.4 mM。0 - 11 mM の範囲で、添加量とピーク面積が直線性を示す。
> ヒト serum で Ala, Glc, Gly, 乳酸, Val などを測定した論文(n = 10; Ref 2)。
- グルコースの値は、NMR で測定すると 0.75 mM 程度低く出ると書かれている。
> ギ酸塩を外部標準として、血中のグルコース量を測定した報告がある(1R)。
- NMR で求めた値は、生化学的手法で測定した値よりも約 20% 低かった。
- NMR で血漿 plasma、生化学的手法で血清 serum を使ったためと考えている。
- なお、血糖値の自動測定装置には ± 10% 程度の誤差が見込まれるらしい。
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References
- Ando et al. 2010a. Quantification of molecules in 1H-NMR metabolomics with formate as a concentration standard. J Toxicol Sci 35, 253-256.
- Kriat et al. 1992a. Quantification of metabolites in human blood serum by proton magnetic resonance spectroscopy. A comparative study of the use of formate and TSP as concentration standards. NMR Biomed 5, 179-184.
- By User:Bryan Derksen - 投稿者自身による作品, created using BKchem, パブリック・ドメイン, Link