レスベラトロール: CR に似た作用を示すポリフェノール
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概要: レスベラトロールとは
レスベラトロール resveratrol は図 (Public domain) のような構造をもつポリフェノールである。2 つのベンゼン環がエチレン基で繋がった C6-C2-C6 構造をもつスチルベン stilbene に水酸基がついたものであり、IUPAC 名は 3, 5, 4'-trihydroxy-trans-stilbene である。
投与によって寿命が延長することが線虫、ショウジョウバエ、マウス などで知られているほか、ヒトでも様々な健康増進作用があり、注目を集めている。Sirtuin の活性化がメカニズムとして有力であり、その効果は カロリー制限 に似ているとされる。

レスベラトロールは、1939 年に有毒植物のバイケイソウ Veratrum grandiflorum から最初に報告された (2)。有毒成分ではなかったために、その後しばらく注目されていなかったが、。1976 年にブドウの葉に含まれる防御物質ファイトアレキシンとして再発見され、フレンチパラドックスに伴う赤ワインブームに伴って広く知られるようになった。
食品中のレスベラトロール含量
レスベラトロールを多く含むことが知られる食品中の含量は、おおよそ以下の通り。
赤ワイン |
0.2 - 5.8 mg/L |
「フランス人は飽和脂肪酸の消費量が高いのに、coronary heart disease にかかりにくい」という French paradox があり、フランス人が消費する赤ワインのレスベラトロールで説明されるらしい (1)。白ワインのレスベラトロール濃度は、赤ワインの 1/10 程度と低い (3)。 |
赤ブドウ |
0.15 - 0.78 mg/100 g | ブドウ由来のレスベラトロールにはトランス型が多く含まれ、二量体である ε-ビニフェリン viniferin も多い。 |
ピーナッツ |
0.18 - 0.71 mg/100 g | 茹でたピーナッツでは 5.138 µg/g (= 0.5138 mg/100 g) で、生のものよりも高いという報告も (2)。 |
イタドリ科植物 |
ブドウ由来のレスベラトロールよりも安価なため、偽装表示が問題になっている。 |
レスベラトロール自体の水溶性は約 30 mg/L 程度 (3) と非常に低く、生体内では配糖体であるパイシードとして貯蔵されているものも多いと考えられる。
レスベラトロールの生合成
レスベラトロールは、2 つのベンゼン環がエチレン基で繋がった C6-C2-C6 構造をもつスチルベン stilbene に水酸基がついたものである。参考に、スチルベンの構造も示しておく (public domain)。cis 型と trans 型があるが、cis 型は芳香環が立体的に干渉するので不安定である。

レスベラトロールは、他の多くのフラボノイド同様に、L-チロシン から合成される。まずチロシンが TAL の作用によって 4-coumaric acid になり、これが 4CL によって coumaroyl-CoA となる。これがマロニル CoA と縮合してレスベラトロールができる。レスベラトロール合成反応を触媒する stilbene synthase (STS) は、type III polyketide synthase である。
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References
- Ibrahim et al., 2020a. Resveratrol production in yeast hosts: current status and perspectives. Biomolecules 11, 830.
- 大澤 2016a, レスベラトロールの化学と機能.
- レスベラトロール類の水溶化製剤及びその製造方法. 特許 JP6381882B2.
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