チアミン二リン酸 ThDP: 脱炭酸反応を触媒するビタミン B 誘導体
- 概要: チアミン二リン酸とは
- ThDP とピルビン酸の脱炭酸反応
広告
概要: コエンザイム Q とは
チアミン二リン酸 (thiamine diphosphate, ThDP) は活性型のビタミン B1 で、図のようにビタミン B1 (チアミン thiamine とも呼ばれる) にリン酸基が 2 個結合した構造を持つ (2)。
チアミンピロリン酸 TPP とも呼ばれる (1)。補酵素 coenzyme として働き、脱炭酸反応を触媒することが多い。
ThDP とピルビン酸の脱炭酸反応
ThDP は、ピルビン酸 pyruvate の脱炭酸反応において補酵素として働く (2)。Berg の Biochemistry (Amazon) では、activated aldehyde unit の転移が ThDP を補酵素とする反応の共通項であると書かれており、PDH, α-ketoglutarate dehydrogenase, ペントースリン酸回路の transketolase が例として挙げられている。
酵素 | 説明 | 文献 |
---|---|---|
ピルビン酸デカルボキシラーゼ (PDC) | ピルビン酸からアセトアルデヒドを作る。アルコール発酵では、アセトアルデヒドがさらにアルコールデヒドロゲナーゼ ADH によってエタノール ethanol になる。 |
1 |
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ (PDH) | ピルビン酸を Acetyl-CoA にして TCA 回路 へ入れる酵素。名前はデヒドロゲナーゼだが、この反応の第一段階は脱炭酸である。 この反応は解糖 glycolysis と TCA 回路を繋ぐ重要な反応である。ビタミン B1 の欠乏で起こる脚気の患者に、ピルビン酸が蓄積するのは ThDP の欠乏による。 |
1 |
α-ketoglutarate dehydrogenase | TCA 回路の律速反応である α-ketoglutarate → succinyl-CoA への反応を触媒する酵素。PDH によるピルビン酸の酸化と似たメカニズムで進行し、実際にこの酵素は PDH と相同である。 |
5 |
アセト乳酸シンターゼ (ALS) | バクテリアおよび植物に存在する分岐鎖アミノ酸 branched-chain amino acid の合成経路は、第一段階が ALS に触媒されるピルビン酸 2 分子の重合であり、脱炭酸反応を伴う。 |
広告
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。
References
- 岩波 理化学辞典 第 4 版.
このサイトでは、私が持っている 1987 年の第 4 版を引用していることが多い。1998 年に第 5 版が発行されている。 ネット情報の問題点の一つは、信頼できる定義になかなか出会えないことである。Wikipedia には定義らしいことが書いてあり、普段の調べ物には十分なことも多いが、正式な資料を作るときにはその引用は避けたいものである。 そんなときに役に立つのが理化学辞典や生化学辞典。中古でも古い版でもよいので、とにかく 1 冊持っておくと仕事がはかどる。 |
- By Edgar181 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2046957
- 補酵素. 福岡大学サーバーにあるサイト. Link.
- Link.
- Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。