進化: 歴史、定義、自然選択など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: 進化とは
  2. 進化という概念の発展
  3. 自然選択のメカニズムと種類
  4. 生きた化石

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概要: 進化とは

進化 evolution の定義はもちろん教科書によって異なるが、以下の定義が良いように思う。

Biology: Life on Earth (Amazon) の定義

Evolution is genetic change in a population over time. Cumulative changes over vast stretches of time explain the amazing diversity of organisms that now share this planet.

太字の部分が定義。進化を 集団に生じる遺伝的な変化 として定義している。2 つめの文章はやや蛇足だが、進化が生物多様性を生み出した原動力であることに言及している。



なぜ上記の定義が良いのか、その他の定義を参照しつつ考えてみる。

Biology: Life on Earth (Amazon) の定義

A simple definition of evolution is the change in DNA that occurs in a population over time.

同じ教科書の別の部分にある文章だが、これはダメ。RNA が進化の対象に含まれないことになってしまう。


Oxford Dictionary of Biology (Amazon) の定義

The gradual process by which the present diversity of plant and animal life arose from the earliest and most primitive organisms, which is believed to have been continuing for at least the past 3000 million years. Until the middle of the 18th century it was generally believed that each species was divinely created and fixed in its form throughout its existence.

植物 plant と動物 animal しか言及していない。バクテリア は進化しないのか? よい辞書だが、この項目は書き直す必要がある。


英語の有名な YouTube があったので、ここに置いておく。


共進化

共進化 coevolution とは、少なくとも 2 種の生物が互いに影響しつつ進化することをいう。

共進化は、最初に昆虫と花において報告された。植物は、花粉を媒介する昆虫を惹きつけるためにさまざまな色をもつようになり、昆虫はその色を認識するための眼を発達させた。

Morgan’s sphinx moth と Darwin’s orchid でも共進化が報告されている (1)。この moth は長い舌を持っていて、長い orchid の花粉をとることができる。この共進化によって、他の昆虫が花粉を媒介することを防いでいると思われる。

進化という概念の発展

生命の多様性に対する考察ははるか昔から存在し、古くはプラトン (B.C.427-347) やアリストテレス (B.C.384-322) がヒトを頂点とした生命観を提唱した。彼らの説では、種は不変のものであり、したがって進化 evolution という概念もなかった。この説は創造説として発展し、広く信じられていた (1)。

1700 年代、ヨーロッパの人々は世界に進出し、生命が非常に多様であることを発見した。しかも、ごくわずかな形態的な違いしかない種が多数存在しており、神がこれらをいちいち創造したというのは考えにくく、生物が変化しているという概念が生まれた。

さらに、この時代に化石の発掘が盛んになり、古い時代には 1700 年代当時と異なる生物が存在したという概念も認められるようになった。

以上のように、生物が変化していることが認められると、人々は「変化のメカニズム」を提唱するようになった。教科書に載っているような、有名な進化に関する理論を表にする。

天変地異説
Catastrophism
Georges Cuvier

Cuvier は動物の分類、比較解剖学を発展させたフランスの科学者である (1769–1832)。

生物自身は進化によって変化せず、天変地異による絶滅と入れ替わりによって生物相が変わると考えた。

獲得形質の遺伝
Jean-Baptiste Lamark

英語では inheritance of acquired characteristics という。

自然選択
Darwin, Wallace

Darwin や Wallace は自然選択 natural selection による進化を唱えた。


自然選択のメカニズムと種類

自然選択は、以下の 3 つに分類される (1,2)。


Directional selection

一定の方向への進化。

Stabilizing selection

平均的な形質をもつ個体が選択される。

Disruptive selection

極端な形質をもつ個体が選択される。

自然選択の種類

生きた化石

現代に生きているが、古い生物の形質を維持している生物を「生きた化石」という。英語では living fossil である。以下のような生物が例として挙げられる。

参考ページ

シアノバクテリア
Cyanobacteria

クシクラゲ
Ctenophores

シーラカンス
Coelacanths

カブトガニ
Horseshoe crabs

Alligator snapping turtle

北米にのみ生息する大型の亀。50 - 100 年生きると言われる (National Geographic, 24 Sept. 2018)。

Sea pens

サンゴの一種。

Hoatzin bird

南米に生息する鳥で、1776 年に Mullar によって最初に報告された。

ワニ

有名な動物ではあるが、恐竜に近い形質を保っているので生きた化石とされる。

Elephant shark

Australian ghost shark とも呼ばれる。学名は Callorhinchus milli で、オーストラリア、ニュージーランド近傍に生息する。


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References

  1. Amazon link: Audesirk et al. 2013a. Biology: Life on Earth with Physiology, eBook, Global Edition (English Edition): 新しいバージョンへのリンクです
  2. Amazon link: Starr et al. 2016a. Biology Today & Tomorrow.
  3. By Ealbert17 - Own work, CC BY-SA 4.0, Link

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