Folch 法による脂質抽出: 原理、プロトコールなど

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このページの最終更新日: 2025/01/05

  1. 概要: Folch 法とは
  2. Folch 法のプロトコール
  3. 実験のコツ

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概要: Folch 法とは

Folch 法は、二層分配を利用した組織からの脂質 lipid の抽出法である (1)。

有機溶媒に粉砕した組織を入れると、脂質は有機溶媒層に移動する。この有機溶媒層を取り出して、溶媒を完全に蒸発させると脂質が残る。この重さから脂質含量を測定する。

別の有機溶剤を使う方法もある (図、文献 5) が、この Folch 法およびそれを改良した Bligh & Dyer 法という方法もよく使われている。両者を比較した論文もある (3)。

Folch法

Folch 法のプロトコール

Folch 法では、クロロホルムとメタノールを用いる。組織の 70 - 80% は なので、最終的にはこの 3 つの液体の混合液となる。

厳密に言うと、二層分離後に上層ではクロロホルム : メタノール : 水 = 3 : 48 : 47 となり、下層では 86 : 14 : 1 となる (4)。したがって、クロロホルム層にも多少の水溶性物質が混入している形となっている。通常はそのまま脂質の定量に進んでよいが、厳密な定量をしたい場合は、クロロホルム : メタノール : 水 = 3 : 48 : 47 の溶液を作製し、下層を洗浄する必要がある。放射性物質などを使っている場合には必要な処理である。

組織からの抽出

このページ の内容を、簡略化しつつ日本語にしたものである。Folch のオリジナル論文に基づいており、基本的には以下の項目に従えば定量が可能である。

  1. クロロホルム : メタノール = 2 : 1 の混合液 (C/M solution) を作る。
  2. 組織を 20 倍量の C/M solution 中でホモジナイズする。1 g の組織なら 20 mL を使用する。
  3. 遠心分離または濾過により、溶液を回収する。
  4. 回収した溶液に 0.2 倍量の水または 0.9% NaCl 水溶液を加え、ボルテックスで混合する。
  5. 2000 rpm 程度で遠心分離し、下層のクロロホルム層を回収する。クロロホルム層を乾燥させ、重量法で脂質量を測定する。

クロロホルム・メタノールを混合してから加えるよりも、メタノールだけを最初に入れる方が組織が脱水され、ホモジナイズしやすくなる。

組織を 凍結乾燥 してから行うプロトコールもある。ホモジナイズは簡単になるが、脂質の酸化が進むと思われるので、あまり推奨できない。

組織の 20 倍量をクロ・メタ混合液を用いるのがオリジナルであるが、100 倍量を推奨している資料もある (4)。


血清からの抽出

ペンシルバニア州立大学 (Penn State) が、血清を使った簡単な Folch 法のプロトコールを公開していた (2)。

  1. クロロホルム : メタノール = 2 : 1 の混合液 (C/M solution) を作る。
  2. 血清 25 µL に 100 µL の C/M solution を用いる。
  3. Precellys homogenizer などを使ってサンプルをホモジナイズする。
  4. 5 分間のインキュベート後に 30 秒ほどボルテックスし、遠心機の最大速度で 20 分遠心する。下層 のクロロホルム層を別のチューブに移す。
  5. 窒素ガスで乾燥させ、脂質含量を測定する。このプロトコールでは、このままメタボロミクスに進んでいる。

1 および 2 番は、メタノールに血清を加え、そこに直ちにクロロホルムを加える形がよい (4)。クロロホルムを加えるのが遅れると、変性タンパク質が凝固して定量的な抽出が困難になる。

実験のコツ

組織を取り除く段階

  • 遠心でなく、濾過で取り除く場合もある。この場合、組織や濾紙をクロロホルム・メタノール混合液で共洗いし、脂質を完全に回収する。

有機溶媒を飛ばす段階

  • 飛ばしたい有機溶媒の量によって、ロータリーエバポレーター、スピードバック、窒素ガス吹き付けなどの方法がある。

界面活性剤が含まれていると、二層に分離しない場合がある。その場合にはクロロホルムを添加する。


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References

  1. Folch et al. 1957a. A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues. J Biol Chem 226, 497-509.
  2. PennState protocol. Folch Plasma Lipid Extraction Protocol. (リンク切れ)
  3. Iverson et al. 2001a. Comparison of the Bligh and Dyer and Folch methods for total lipid determination in a broad range of marine tissue.Lipids 36, 1283-1287.
  4. 平成 21 年度農林水産省補助事業 食品機能性評価マニュアル I (改訂 2 版)
  5. Wong et al. 2019a. Comparison of single phase and biphasic extraction protocols for lipidomic studies using human plasma. Front Neurol 10, 879.

アップデート前、このページには以下のようなコメントを頂いていました。ありがとうございました。

2018/07/10 03:47 ご指摘ありがとうございました。おそらく血清と組織からの抽出がごっちゃになっていましたので訂正しました。

2017/12/07 13:48 水またはNaClを加えなくてはエーテル層、タンパク質、水層に分かれません


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このページの目次

1. 概要
2. プロトコール   ・組織から
  ・血清から
3. 実験のコツ