Folch 法による脂質抽出: 原理、プロトコールなど
experiments/lipid/extraction_folch
2018/07/09 更新
- 概要: Folch 法とは
- Folch 法のプロトコール
- 組織からの抽出
- 血清からの抽出
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脂質抽出: Folch 法とは
Folch 法は、二層分配を利用した組織からの脂質 lipid の抽出法である (1)。
有機溶媒に粉砕した組織を入れると、脂質は有機溶媒層に移動する。この有機溶媒層を取り出して、溶媒を完全に蒸発させると脂質が残る。この重さから脂質含量を測定する。
Bligh & Dyer 法という方法もよく使われ、両者を比較した論文もある (3)。
Folch 法のプロトコール
組織からの抽出
このページ の内容を、簡略化しつつ日本語にしたものである。Folch のオリジナル論文に基づいており、基本的には以下の項目に従えば定量が可能である。
- クロロホルム : メタノール = 2 : 1 の混合液 (C/M solution) を作る。
- 組織を 20 倍量の C/M solution 中でホモジナイズする。1 g の組織なら 20 mL を使用する。
- 遠心分離または濾過により、溶液を回収する。
- 回収した溶液に 0.2 倍量の水または 0.9% NaCl 水溶液を加え、ボルテックスで混合する。
- 2000 rpm 程度で遠心分離し、下層のクロロホルム層を回収する。クロロホルム層を乾燥させ、重量法で脂質量を測定する。
血清からの抽出
ペンシルバニア州立大学 (Penn State) が、血清を使った簡単な Folch 法のプロトコールを公開していた (2)。
- クロロホルム : メタノール = 2 : 1 の混合液 (C/M solution) を作る。
- 血清 25 µL に 100 µL の C/M solution を用いる。
- Precellys homogenizer などを使ってサンプルをホモジナイズする。
- 5 分間のインキュベート後に 30 秒ほどボルテックスし、遠心機の最大速度で 20 分遠心する。
下層 のクロロホルム層を別のチューブに移す。 - 窒素ガスで乾燥させ、脂質含量を測定する。このプロトコールでは、このままメタボロミクスに進んでいる。
Tips
脂質抽出にはさまざまなオプションがある。
- クロロホルム・メタノールを混合してから加えるよりも、メタノールを最初に入れる方が組織が脱水され、ホモジナイズしやすくなる。
- 組織を 凍結乾燥 してから行うプロトコールもある。ホモジナイズは簡単になるが、脂質の酸化が進むと思われるので、あまり推奨できない。
- 遠心でなく、濾過で取り除く場合もある。この場合、組織や濾紙をクロロホルム・メタノール混合液で共洗いし、脂質を完全に回収する。
- 飛ばしたい有機溶媒の量によって、ロータリーエバポレーター、スピードバック、窒素ガス吹き付けなどの方法がある。
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アップデート前、このページには以下のようなコメントを頂いていました。ありがとうございました。
2018/07/10 03:47 ご指摘ありがとうございました。おそらく血清と組織からの抽出がごっちゃになっていましたので訂正しました。 2017/12/07 13:48 水またはNaClを加えなくてはエーテル層、タンパク質、水層に分かれません |
References
Folch et al. 1957a. A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues. J Biol Chem 226, 497-509.- PennState protocol. Folch Plasma Lipid Extraction Protocol. (リンク切れ)
Iverson et al. 2001a. Comparison of the Bligh and Dyer and Folch methods for total lipid determination in a broad range of marine tissue.Lipids 36, 1283-1287.